東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻

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研究内容

「免疫学」は「感染症から免れる生体機能」を明らかにする学問として出発して、およそ200年が経ちました。現在、「免疫」は生体防御を担う機能にとどまらず、老化、妊娠、発がんなど様々な生命現象に関与し、恒常性維持に深くかかわることが明らかとなっています。また、アレルギーや自己免疫疾患など、「免疫」自体が病気の原因となることもあります。最近では、免疫に係わる多様な分子の性状が明らかになり、分子免疫学が大きく発展して、「免疫」の概念も広がり続けています。生物は、分子間、細胞間の多様な相互関係の絶妙なバランスのなかで生命を全うしています。まさに複雑系をひも解く生物学の縮図のような学問と言えます。

当研究室では、原虫(原生動物)が起こす感染症(原虫症)について免疫学的アプローチから様々な研究を行っています。研究対象としている主な原虫病はリーシュマニア症とトキソプラズマ症です。遺伝子、分子、細胞の解析にとどまらず、感染動物、患者さらにこれら原虫症の伝播が起きている現場(フィールド)も視野に入れて研究を行うことを基本姿勢としており、国際的共同研究も多く行っています。

  1. 生体防御と免疫病態の解明
  2. 診断、治療、予防技術の開発
  3. 病原体を利用した創薬
  4. 媒介昆虫の制御
  5. 病態疫学・総合対策

研究室紹介ムービー

リーシュマニア症:リーシュマニア症は、リーシュマニア属原虫によって引き起こされる昆虫媒介性の人獣共通感染症です。本症は吸血性のサシチョウバエによって媒介され、90カ国以上で流行しており、毎年100万人程度の患者が新たに発生しています。リーシュマニア症は、主に皮膚リーシュマニア症(CL)、粘膜皮膚リーシュマニア症(ML)、内臓リーシュマニア症(VL:Kala Azarともよばれる)の3つに分類されます。皮膚型リーシュマニア症は広く分布しており患者数が多いものの、自然に治癒することが多くそれだけでは死に至りません。一方で、VLは適切な治療を受けなければ命に関わる病気です。VLの新規患者の95%以上はブラジル、中国、エチオピア、インド、イラク、ケニア、ネパール、ソマリア、南スーダン、スーダンの10カ国に集中しています。(世界保健機関の情報を参照)