東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻

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研究内容

病原体を利用した創薬

パラサイトミメティクス

社会の成熟に伴う衛生環境の整備により寄生虫症例が減少するにつれて、がんやアレルギー、自己免疫疾患といった慢性疾患症例が増加しています。がんに対して不応答になった免疫細胞を再活性化させるがん免疫療法が大きな注目を集めている一方、自己免疫疾患においては過剰な免疫応答を抑制的に制御する制御性T細胞の働きが注目されています。つまり、免疫機能のバランス制御は多くの現代病における重要な治療標的です。

ウイルスや細菌による急性感染症と比較して、慢性的な感染を特徴とする多くの寄生虫にとっては、宿主適応が生存の必須条件となります。一方、哺乳類宿主の生体防御機構も寄生虫感染という選択圧によって形成されてきました。そう考えると、ヒトを含めた哺乳類と寄生虫は共進化を遂げたパートナーであり、もはや寄生虫が宿主から一方的に恩恵を受けるのではなく、宿主も寄生虫から何らかの恩恵を受けていると考えられます。実際、寄生虫感染の減少がアレルギーや自己免疫疾患の増加につながったという「衛生仮説」は多くの論文によって裏付けられています。寄生虫が免疫を制御する分子機構を明らかにすれば、がんやアレルギーなど免疫が関わる疾患を制御可能な薬剤の開発に大きく貢献することが期待できるでしょう。

当研究室では、私たちとともに生き、高い宿主適応能力を持つ寄生虫こそ、私たちの生体機能を制御しうる物質の貴重な探索源ととらえており、その特徴を生かした製品を開発する研究分野「パラサイトミメティクス」の開拓を目指しています。私たちの「敵」と見なされる寄生虫を新たな創薬天然物資源とみなし、現代病の克服に資する有用物質を同定することを目指しています。

科研費・学術変革領域研究(B)「パラサイトミメティクス:寄生虫が持つ高度機能因子の同定とその利用」領域HPはこちら