■研究方針
現在、当研究室ではインフルエンザウイルス、リフトバレー熱ウイルス、サーコウイルスなどの増殖機構および病原性発現機構について研究しています。またこれらウイルスを遺伝子導入用ベクター化する試みも行っています。
加えて家庭動物、野生動物におけるインフルエンザウイルスの感染状況についても調査・研究しています。さらにフィリピンなど主に東南アジアでのコーモリを含む各種動物を対象にして、
新興感染症の予備軍と考えられる新規ウイルスの調査も試みています。
これらの研究から得られる成果はウイルス学において重要な基礎的知見となるだけでなく、ウイルス感染症の制圧にも貢献することが出来ます。またこれらの研究はウイルスだけにとどまらず、生物全般に共通な生物学的知見を蓄えることにもつながっています。
■主な研究テーマ
○変異インフルエンザウイルスを用いたウイルス動態の解析
変異ウイルスを自由に人工合成する方法であるリバースジェネティクス法(12種類のプラスミドを細胞に導入するとウイルスが合成できる)を用いて、変異ウイルスを作製し、培養細胞や動物体内におけるウイルス増殖機構や病原性発現機構を詳細に解析しています。
○哺乳動物(家庭動物、野生動物)におけるインフルエンザ研究
米国、韓国ではイヌインフルエンザの致死例を含む流行が報告されており、動物感染症としての重要性が高まっています。また国内でも養鶏場へのインフルエンザ発生がたびたび問題となりますが、この原因の一つとしてインフルエンザウイルスに感染した野生動物の侵入が考えられています。またヒトへの感染源や新型ウイルスの出現にも関与していることが考えられ、公衆衛生的にも非常に重要な話題となっています。当研究室では家庭動物、野生動物におけるインフルエンザについて基礎研究、疫学研究を実施しています。
これまでに私たちは国内野生アライグマの高病原性H5N1ウイルス感染例、 ペット犬猫の新型H1N1ウイルスが感染例を報告しています。
○新しいインフルエンザワクチンの開発
リバースジェネティクス法を駆使して一回増殖型インフルエンザワクチンなどの開発研究を実施しています。
○組み換えシュードタイプウイルスを用いた高病原性ウイルスの解析
取り扱いにBSL4施設を必要とするウイルスのシュードタイプウイルスを用いて、細胞内侵入機構の解明を目指し研究しています。本研究課題では国立感染症研究所と共同で研究しています。
○ウイルスベクターの開発
新規ワクチン開発への応用を目指したインフルエンザウイルスベクターの開発、腫瘍溶解性ウイルス療法への応用を目指したアデノウイルスベクターの開発、
新規エピゾーマル遺伝子治療ベクターへの応用を目指したサーコウイルスベクターの開発などを行っています。
○原虫に感染するウイルスの解析
下痢症の原因病原体であるCryptosporidiumにはウイルスが感染していることが知られていますが、その生物学的な意義はまったくわかっていません。私たちはCryptosporidiumに感染しているウイルスの感染動態の解明を目指しています。
○インフルエンザウイルスゲノムパッケージングにおけるウイルスゲノムRNP間相互作用の解析
インフルエンザウイルスの粒子内には8本のゲノムが取り込まれることがわかっていますが、そのメカニズムには不明な点が多くあります。私たちは8本のゲノム間の相互作用機序に注目し研究をしています。