2001年 獣医学教育の全体像に関する議論
 2000/12以降2001/7までの状況変化(メーリングリストより)

 


今後の見通し 2001/6/18

唐木です。

私が、”これで、私たちの長年の努力の第一歩である来年度概算通過の目処が立ったと考えています。”と書いた根拠についてご質問がありましたので、お答えします。
まず、この間の出来事を並べます。

5/11 小泉首相は参院本会議で「国立大でも民営化できるところは民営化する視点が大事」と答弁しました。

5月下旬 遠山文部科学大臣が文部省の意向を反映して「国立大学民営化反対」を首相に進言しましたが、即時却下され、文部科学省は新方針の準備に入りました(読売新聞報道)。

5/31 政府経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)で大学民営化の方針を検討、文部科学省は国立大の一層の効率化を促す方針を決定しました。そして国立大を独立行政法人化する際の基本制度を審議している調査検討会議・業務組織委員会(主査・阿部博之東北大学長)に検討案を示しました。

6/01 国立大学協会(会長・長尾真京都大学長)は理事会で、国立大の法人化案をまとめ、法人化による改革姿勢を鮮明にして、民営化を阻止しようとしました。

6/04  文部科学省は小泉首相が打ち出した国立大学の民営化方針を受けて、まず大学業務の一部を大学本体とは別の法人に実施させる形で民営化への道筋を付ける方針を示しました。

6/07-08 国立大学農学系学部長会議において、専門教育課長が「獣医学教育関係者の改革の努力」を高く評価しました。

6/9 文部科学省がまとめた「大学(国立大学)の構造改革の方針」が、明らかになり、再編・統合で国立大学の数を大幅に削減する方針を明らかにしました。

6/13 国立大学協会総会で法人化が容認されました。

6/14 遠山敦子文部科学相は国立大学学長会議でこれまで大学同士の協議にゆだねていた国立大の統合再編について、同省が主導、決定するとの方針転換を明かにしました。会議では工藤智規高等局長が「努力が見られないと取り残さざるを得ない。場合によっては見捨てていかざるを得ない局面があるかもしれない」と述べ、各大学に「早期の計画策定」を促した。質疑で田中弘允・鹿児島大学長が「大いに驚いた。国立大がなくなる県も出るのではないか。地方の切り捨てにつながる」と懸念を示した。これに対し工藤局長は「一県一大学は未来永劫の原則ではない。これからの発展を考えると金科玉条で保障されるわけではない」と、厳しい見方を示しました。

80%の支持率を後ろ盾に、小泉首相は「大学機構改革」を本気で押し進めています。文部省も退路を断って、「国立大学の再編整備」を始めています。各大学には早急な計画策定が求められています。最も急がれるのは「教員養成系」と「単科医科大学」の再編ですが、同時に、過去20年にわたり文部省と二人三脚で進めてきた「獣医学教育改善」が大きく取り上げられています。このことは、国立大学農学部長会議での課長の言葉に端的に表れています。このような気運の中で、九州大学は獣医学府設置を文部省と真剣に協議をしています。

関東、関西の大学は動き出しています。しかし、それ以外の地方の大学には、事の重大性にまだ気がつかず、まだなんとかなると思っているところもあるようです。老人医療費にリミットを設ける案に対して「医療過誤が起こる」と筋違いの反対をして失笑を買った話がありますが、大学に求められている「質の向上」と「効率化」には答えず、単に「地方に残しておくべき」という反対論も同じ類です。すぐに大きな流れに飲み込まれてゆくでしょう。

政府、文部省が動き、しかも80%の支持率を持つ首相の指導があって大学改革ができない理由は何もありません。「質の向上」と「効率化」の一番手である獣医学改革は、政府、文部省、農学部長会議の後ろ盾を得て、進まない理由がありません。反対であれば、国民に対してその理由を明確に示すことが求められるでしょう。これが、私の観測です。


喜田委員会からの資料 2001/6/17

唐木です。獣医学教育改善に関する臨時委員会喜田委員長から、資料をいただきましたので、お送りします。小泉内閣ができて、文部省が大きく動き出したこともあり、この問題の行方に明るい光が見えてきました。喜田委員長、林農学部長会議会長の努
力に感謝します。

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獣医学教育改善に関する臨時委員会中間報告

平成13年6月7日
国立大学農学系学部長会議会長
林 良博 東京大学農学部長 殿

獣医学教育改善に関する臨時委員会座長
                  北海道大学獣医学部長 喜田 宏

 去る平成12年10月の第103回国立大学農学系学部長会議において、次の5項目から成る獣医学教育改善に関する臨時委員会の基本姿勢が了承されました。

1.獣医学教育の改善の必要性を認め、農学全体として改善策を検討する。
2.日本における獣医学教育体制が諸外国のそれに比べて小規模に過ぎることが、最も大きな問題点であると考える。
3.学内で教育態勢を充実させることが不可能な場合には、他大学獣医学科との再編などの道を考える。
4.自助努力で獣医学教育の充実を計る場合でも先進諸国に準じた国際レベルの獣医師養成を目標とする。
5.新たな再編は、産業基盤を考慮して、地域的に偏らないことに配慮し、なるべく既存の施設などを利用できるように努める。

 平成13年3月、第4回臨時委員会において、獣医学教育改善に関する獣医側の見解を聴取することが決まり、別紙資料1の質問状を全国大学獣医学関係代表者協議会会長および国公立大学獣医学協議会会長に宛て発出しました。

 この質問状に対して、両協議会から、別紙資料2の回答書が提出されました。これを受け、平成13年4月14日に開催された第5回臨時委員会で全国大学獣医学関係代表者協議会会長 唐木 英明東京大学教授から回答書の説明を受けた後、質疑応答がありました。第5回臨時委員会では次に、6月の第104回国立大学農学系学部長会議において、本委員会の審議経過、獣医学教育改善に関する臨時委員会案ならびに獣医学教育改善に向けた各大学農学部の取り組みを報告することが確認されました。そのため、各委員は次の3点について委員長宛報告することとなりました。

(1)日本の獣医学教育をどのような枠組みにするのが適当か大枠の案
(2)グローバルな視点から見た日本の獣医学教育の適正な規模
(3)各大学のこれまでの取り組みと検討成果

 各委員からの報告ならびにこれまでの6回にわたる臨時委員会の審議(別紙資料3)に基づき、当委員会は獣医学教育の改善に向け、基本姿勢5項目の具体化のため、以下の2点を提案します。

1.獣医学教育を実施する大学においては、各大学の自主性を尊重しつつ、「基本姿勢5項目」の早急な実現に向けて努力する。

2.国立大学農学系学部長会議は、獣医学教育改善に向けた各大学の自主的な努力を評価する。

以上


添付資料は以下の通りです。

別紙資料1:全国大学獣医学関係代表者協議会会長および国公立大学獣医学協議会会長に宛てた質問状
別紙資料2:両協議会からの回答書
別紙資料3:第1回から第5回にわたる臨時委員会の議事録

[別紙資料3:第1回?第5回臨時委員会議事録]

獣医学教育改善に関するWG(第1回獣医学教育改善に関する臨時委員会)会議議事要録

本WG会議は、北大獣医学部長の呼びかけにより、平成12年5月30日、東京において開催された。

出席者:北海道大学獣医学部長、岩手大学農学部長、東京農工大学農学部長代理、東京大学農学部長、岐阜大学農学部長、鳥取大学農学部長、山口大学農学部長、宮崎大学農学部長、鹿児島大学農学部長

議事に先立ち、全国獣医学協議会会長の唐木英明東大教授より獣医学教育の現状と、改革の必要性、これまでの経緯の説明を受け、質疑応答があった。

唐木教授退席後、各大学の現状説明があり、山口大学農学部長の提案により、
(1)日本学術会議獣医学研連の提言に対する対応、
(2)獣医学科のこれまでの動きの総括、
(3)これからの対応策
について検討した。以下に検討内容と論議を要約する。
1.日本学術会議獣医学研究連絡会議の提言にある、獣医学教育の抜本的改革について、獣医学科を擁する農学部の農学部長は、農学部の重要課題としてこれを検討する必要があるとの認識を共有する。
2.獣医学科の再編整備の問題は、21世紀に向けての農学再編の胎動に獣医が先鞭をつけた動きであると位置づけられるが、新制大学8獣医学科による東北大学と九州大学への2獣医学部新設案は、現状分析から行き詰まり状態であると判断する。
3.今後、獣医学教育改善WGとして現実的で対応可能な案を検討・提案する必要 ある。本件は、即、農学再編に繋がる重要課題であるため、本WGとしては、この会を第3常置委員会の下部組織としてではなく、常置委員会と対等な委員会(臨時委員会)として位置付けることを提案する。(この提案は農学部長会議総会で了承された)
4.今後の検討に際して、藤田北大獣医学部長が世話役を継続することとなった。
なお、獣医学科へ以下を要望したいという意見が多かった:
獣医学再編は即、農学再編に繋がる重要課題であり、学部の理解無しには改革の実現はあり得ない。獣医学科と学部との連絡と協議を密にとるとともに、改革案などの学部内への浸透をはかり、論議をつくし、対外的には、学部できちんとオーソライズされたものを発信することを要請したい。

第2回 獣医学教育改善に関する臨時委員会議事録

日時:平成12年7月16日
場所:品川プリンスホテル、品川大飯店
出席者:関係農学部長、帯広畜産大学長代理

議題 1.本会議の議決事項の拘束力について
   2.今後のタイムスケジュール
   3.獣医学教育改善に関するフリーデイスカッション

議事内容
1.本会議の議決事項の拘束力について
   (1)本会議の審議事項は各学部の自治を拘束するものではない。
   (2)本会議の提言は11大学の農学部長の合意事項として相応の重みを持つ。
   (3)決定事項を遵守する拘束の必要性が本会議で発議された場合は、当該事項につき、 各部局で教授会の承認を必要とする。一学部たりとも、承認が得られない学部がある場合には、当該決議事項は、全体に拘束力を及ぼすものではない。
2.今後のタイムスケジュール
(1) 獣医学教育改善についての具体策の策定については、十分な論議を必要とし、拙速はさけるべきであるが、諸般の事情から、秋の農学部長会議を目処に具体策を提言できるように努力したい。
(2) 今後、秋の農学部長会議までの間、e-mailによる意見交換を行い、必要が生じれば会議を開催し、検討する。
3.獣医学教育改善に関するフリーデイスカッション
 各大学の現状報告に次いでフリートーキングを行った。

(1)第1回西日本地区獣医学科の九州大学への統合・再編に関する私的懇談会:
 新しい動きとして、「九州大学より獣医学部を設置する案が提出された場合には、 山口大学農学部は前向きに検討するという立場を取る」ことが6月14日の教官会議で決定され、これを受けて、6月29日の九州大学への統合再編に関する私的懇談会に山口大学農学部長が出席したことが報告された。
 尚、宮崎大学農学部長より、この件に関して宮崎大学農学部では、獣医学科が、十数年に渡って、獣医学教育改善のあらゆる可能性を検討し、九州大学に獣医学部創設しか道はないと言う結論に達したことに、宮崎大学農学部として、これを理解し、サポートを決めたことであって、農学部長が率先して獣医学科を九州大学へ出すことを牽引しているわけではないと言う発言があった。
 宮崎大学農学部は平成12年度に獣医学科を除く改組が終了しており、山口大学農学部も、13年度に改組が実現する運びになっている。さらに、理学部との新たな組織づくりの構想もある。両学部とも獣医が出た後の学部のあり方にきちんとした方策がある為に、獣医学科に協力できたという説明があった。
 今後、この2獣医学科の九州大学への統合・学部創設を進めるためには、地元への対応、連合大学院のあり方等、超えなければならない種々のハードルがあるが、九州大学としては、14年度の概算要求を目指したい意向であるようだということが紹介された。

(2)獣医学教育改善のための具体策に関するフリートーキング:
 獣医学教育改善の具体案のデイスカッションは、まだ、学部内で検討委員会が発足したばかりのところもあり、多くは検討されなかったが、連繋獣医学科案、地域に均等に4つ程度の獣医学科、学部に再編する案、東北大学案の可能性等が話題にのぼった。地域均等と言う際の地域は単純な地理学上の均等分配ではなく、産業基盤を加味したものでなくてはならない等が話された。

第3回獣医学教育改善に関する臨時委員会報告

日時:平成12年10月17日 17時30分?21時20分
場所:ホテルノースランド帯広 丹頂
出席者:関係国公立大学農学部長、帯広畜産大学長
座長:北海道大学獣医学部長 藤田正一

審議事項
1. 各大学における状況報告
2. 獣医学教育関係者連絡会議および、国立大学獣医学協議会会長よりの要望書の取り扱いについて
3. 臨時委員会の獣医学教育改善に関する基本姿勢について
4. 農学のあり方と密接に関わる獣医学再編問題を、臨時委員会だけで論議してよいか
審議内容
1. 各大学における状況報告
各大学の農学部及び獣医学科の獣医学教育改善に関する取り組みについて報告があった。
2. 獣医学教育関係者連絡会議および、国立大学獣医学協議会会長よりの要望書の取り扱いについて
上記要望書の取り扱いについて、10月17日の総会本会議において臨時委員会で審議するよう付託された。本件の要望内容については、臨時委員会で審議中であるので、事実上、要望に応えていることにはなっているが、引き続き本委員会の話題として検討し、検討内容は総会に報告することとした。

3. 臨時委員会の獣医学教育改善に関する基本姿勢について
  今後の本件に関する、以下の臨時委員会の基本姿勢を確認した。
 「臨時委員会の獣医学教育改善に関する基本姿勢」
1. 獣医学教育の改善の必要性を認め、農学全体として改善策を検討する。
2. 日本における獣医学教育体制が諸外国のそれに比べて小規模に過ぎることが、最も大きな問題点であると考える。
3. 学内で教育態勢を充実させることが不可能な場合には、他大学獣医学科との再編などの道を考える。
4. 自助努力で獣医学教育の充実を計る場合でも先進諸国に準じた国際レベルの獣医師養成を目標とする。
5. 新たな再編は、産業基盤を考慮して、地域的に偏らないことに配慮し、なるべく既存の施設などを利用できるように努める。

4. 農学のあり方と密接に関わる獣医学再編問題を、臨時委員会だけで論議してよいか
農学のあり方については、他の常置委員会で審議が開始されることが本日の総会で明らかになったので、本件については、当該委員会と連絡を取りつつ本臨時委員会にて検討を継続することとした。

第4回獣医学教育改善に関する臨時委員会議事録

日時:平成13年3月3日 14時00分?19時00分
場所:東京大学
出席者:関係国公立大学農学部長、帯広畜産大学長、九州大学農学部長(オブザー
バー)
座長:北海道大学獣医学部長 藤田正一
審議事項
1. 各大学における状況報告
2. 2月8日の獣医学再編に関する新聞記事について
3. 獣医学再編に関する獣医側の見解確認について
4. 現在検討中の獣医学教育改善案等について
5. 今後の獣医学教育改善に関する検討について
審議内容
1. 各大学における状況報告
各大学の農学部及び獣医学科の獣医学教育改善に関する取り組みおよび概算要求事項について報告があった。
2. 受験生に不安を与える可能性もあるこの時期、不確定な情報をあたかも既定の事実のごとく扱い、獣医学関係者がリークしたのであれば、極めて遺憾である。山口大学の農学部長はこの件で文部省に呼び出されており、獣医にたいしては、ホームページ等の情報管理を含め、注意を促したい。また、この問題については、臨時委員会あるいは、農学部長会議として文書で見解を提出したい。文案については、林東大農学部長が原案を書くこととした。
3. 獣医学再編に関する獣医側の見解について、いくつかの疑問点が複数の委員より指摘され、林委員、中村委員より書面により提出された問題点とあわせて、本委員会よりの質問状として、獣医学協議会に提出することとなった。質問状は藤田が取りまとめることとなった。
4. 現在検討中の獣医学教育改善案等について、帯広畜産大学、鹿児島大学の自助努力案、九州大学2校先行案について、それぞれの大学から、現状の説明を受けた。
自助努力案については、学生定員と教官定員の問題、国際水準のレベル等について論議があった。獣医学再編については、将来的な再編の検討を否定するものではないが、このことによって派生する連合大学院獣医学研究科をどうするかという問題についても十分な検討が必要であり、今後どの枠組みで検討するにせよ、連合大学院の取扱いについての検討が必要であるとの認識で一致した。このことは既に検討中の九州大学側にも伝える必要があるとの指摘があった。
5. 今後の獣医学教育改善に関する検討については、平成12年10月の臨時委員会で合意した獣医学教育改善に関する基本姿勢を再確認し、これに基づいてすすめることとした。

第5回獣医学教育改善に関する臨時委員会議事録

日時:平成13年4月14日 14時00分?17時00分
場所:東京大学
出席者:佐々木帯広畜産大副学長、上原農工大農学部長、太田岩手大農学部長、中村岐阜大農学部長、林東大農学部長、西中川鹿児島大農学部長、加藤山口大農学部長、桑原大阪附大農学部長、岩崎鳥取大農学部長、續宮崎大農学部長、坂井九州大学農学部長(オブザーバー)、喜田北大次期獣医学部長(オブザーバー)
座長:藤田北海道大学獣医学部長 

議題
1. 獣医学教育改善に関する獣医学関係者の見解についての質問状に対する回答について
2. 今後の獣医学教育改善に関する検討について

審議内容
1. 本委員会から獣医学関係者に対して発出された、獣医学教育改善に関する質問状に対する獣医学関係者の回答について、唐木全国大学獣医学関係代表者協議会会長より説明を受け、別紙に記載したような質疑応答と論議があった。
2. 6月の農学部長会議に、本臨時委員会のこれまでの審議結果を報告すること、その中間報告書には、獣医学教育改善に関する臨時委員会案ならびに獣医学教育改善に向けた各大学農学部の取り組みを盛り込むことが確認された。そのため、4月末日までに各委員は(1)日本の獣医学教育をどのような枠組みにするのが適当か大枠の案、(2)グローバルな視点から見た日本の獣医学教育の適正な規模および(3)各大学のこれまでの取り組みと検討成果を藤田まで、メールで送付することが了承された。臨時委員会としての提案をまとめるには、農学部長会議前日(6月6日)に予定している本委員会の前、5月中旬頃にもう一度集まる必要が生じると予想されるが、これについては追って座長が判断して連絡することが了承された。

以上


大学改革に関する情報もろもろ  2001/6/16

唐木です。小泉内閣発足後の「大学改革」の方向をお知らせします。「文部省主導」の「大学大再編」が始ろうとしています。再編計画は各大学が自主的に作ることになっていますが、これがない大学は「見捨てる」ことを高等局長が明言しています。再編して国際レベルの国立大学法人として残るのか、地方移管あるいは民営化するのか、廃止するのか、選択の余地は多くはありません。護送船団から競争へ、時代は音を立てて変ろうとしています。

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大学改革情報

2001/04/26 小泉内閣が発足 文部科学に遠山敦子氏

2001/05/31 政府経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)大学民営化の方針を検討、6月末の基本方針の骨格にする段取り

2001/05/31 文部科学省の国立大独立行政法人化調査検討会議は、役員の少なくとも一人を学外から起用することや、私大のように経営と教育研究の責任を分離せず、学長が一元的に管理することなどを柱とする試案をまとめた。

2001/05/31 小泉首相は5月11日の参院本会議で「国立大でも民営化できるところは民営化する視点が大事」と答弁した。これを受け文部科学省は、各国立大の特色に応じ、業務の民営化がふさわしい分野について外部資金を導入する一方、一層の効率化を促す方針を決定。国立大を独立行政法人化する際の基本制度を審議している調査検討会議・業務組織委員会(主査・阿部博之東北大学長)に31日、検討案を示した。

2001/06/01 国立大学協会(会長・長尾真京都大学長)は1日の理事会で、国立大の法人化案をまとめた。大学運営に学外の識者を加え、教職員に業績給を採用し、基準は各大学で定めることなどを提示した。一方、「民営化」は「議論の視野に入っていない」としている。12日の総会で了承される見通し。国大協が法人化による改革姿勢を鮮明にしたことで、国立大法人化の動きが一層加速しそうだ。

2001/06/04  文部科学省は3日までに、大学付属の病院、学校、研究所などの業務について各大学の自主的な判断で民間委託できる新たな制度の検討に着手した。小泉首相が打ち出した国立大学の民営化方針を受けた措置で、まず業務の一部を大学本体とは別の法人に実施させる形で民営化への道筋を付ける方針。

2001/06/05  塩川財務相は5日の閣議後の記者会見で、「文教施設の建物整備は公共事業として投資する対象になる」と述べ、国の予算で公共事業としてみなしていなかった国立大学の建設を新たに公共事業として位置づけ、土木工事中心の公共事業の枠組みを抜本的に見直す考えを表明した

2001/06/06 大阪府は5日、府立の3大学や7つの試験研究機関などの「地方独立行政法人化」に向けて、法整備を国に対して働きかけることを明らかにした。

2001/06/07 都立大(八王子市)、都立科学技術大(日野市)、都立保健科学大(荒川区)と都立短大(昭島市)の都立四大学の改革を行うために都が七月の組織改正で、四大学の管理運営を一元化する局相当の「大学管理本部」を新設する。都は今年二月、早ければ四年後に四大学を統合する基本方針を発表しており、将来の法人化も視野に入れて大学改革を進める。

2001/06/11  経済財政諮問会議が今月中にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の原案が8日、明らかになった。構造改革のための「7つの改革プログラム」の柱である民営化・規制改革プログラムでは、医療・介護・福祉や教育に競争原理を導入する考えを明記。国立大学にも民営化を含めて民間的な発想の経営手法を取り入れる方向を打ち出した。

2001/06/11 文部科学省がまとめた「大学(国立大学)の構造改革の方針」が9日、明らかになった。再編・統合で国立大学の数を大幅に削減する一方、優れた業績の大学には国公私立を問わず資金を重点的に配分、世界に通用する「トップ30」大学の育成を目指す。付属学校やビジネススクールなど国立大学の機能の一部について独立採算制の導入を盛り込み、将来の民営化に含みをもたせている。護送船団方式の大学行政から、“アメとムチ”による大学間の競争促進型行政への転換。国公私「トップ30」育成と、具体的な数字を示したことで、先端の学術研究を主眼にする大学と、教育中心の大学と、大学の分類が進むことになる。

2001/06/14 遠山敦子文部科学相は14日、国立大学学長会議でこれまで大学同士の協議にゆだねていた国立大の統合再編について、同省が主導、決定するとの方針転換を明らかにした。会議では工藤智規高等局長が「努力が見られないと取り残さざるを得ない。場合によっては見捨てていかざるを得ない局面があるかもしれない」と述べ、各大学に早期の計画策定を促した。質疑で田中弘允・鹿児島大学長が「大いに驚いた。国立大がなくなる県も出るのではないか。地方の切り捨てにつながる」と懸念を示した。これに対し工藤局長は「一県一大学は未来永劫の原則ではない。これからの発展を考えると金科玉条で保障されるわけではない」と、厳しい見方を示した。


文部科学省:国立大学に再編を強くせまる  2001/6/15

唐木です。大学改革の動きは急速に進んでいます。小泉内閣の「骨太」の改革方針 は、国立大学の民間移行を求めています。文部省は「法人化」と、国立大学の再編・ 統合と、教育・研究内容の充実でこれに対抗しようとしています。14日開催の国立大
学長会議の「驚くべき様子」を以下に再録しますすが、鹿児島大田中学長の反対を文 部省は一蹴し、1県1国立大学の方針変更を示すとともに、この線に沿った改革の努 力をしない国立大は「見捨てる」ことを明言しています。このような推移の中で、獣
医学教育改革に対する努力は大きくクローズアップされ、実現の方向に向かっていま す。東大も動き出します(詳細は近くお知らせします)。各大学は、この機会を逃さ ないように、一層の努力をお願いします。

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共同通信ニュース速報2001年6月14日
国立大の削減方針を強調 文科相、学長会議で

遠山敦子文部科学相は十四日、東京都内で開かれた国立大学長会議で「大学の運営 基盤を強化するためには大胆かつ柔軟な発想で再編、統合を進めることは不可欠だ」 と述べ、積極的に国立大の再編を進め、大幅な削減を目指す方針を強調した。   
遠山文部科学相は「再編・統合の大胆な計画をお聞かせいただき、最終的にはわが 省の責任で具体的計画を策定したい」として、同省の主導で大幅な再編を進める意向 を示した。 
        
会議では工藤智規高等局長が「努力が見られないと取り残さざるを得ない。場合に よっては見捨てていかざるを得ない局面があるかもしれない」と述べ、各大学に早期 の計画策定を促した。    

質疑で田中弘允・鹿児島大学長が「大いに驚いた。国立大がなくなる県も出るので はないか。地方の切り捨てにつながる」と懸念を示した。      

これに対し工藤局長は「一県一大学は未来永劫(えいごう)の原則ではない。これ からの発展を考えると金科玉条で保障されるわけではない」と、厳しい見方を示し た。

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読売OnLine 2001 年 6月 14日
文科省が国立大に「努力ないなら見捨てます」

国立大学学長会議で遠山文部科学相は14日、これまで大学同士の協議にゆだねてい た国立大の統合再編について、同省が主導、決定するとの方針転換を明らかにした。

文科省側からは、「大学側に努力がないなら見捨てていかざるを得ない」「県に一つ しかない国立大も必ずしも安泰でない。脅しをさせていただく」と述べるなど、強い 調子で改革への協力を訴えた。

同省の方針は11日に経済財政諮問会議に示されたもので、〈1〉国立大の大胆な再 編統合〈2〉民間経営手法の導入〈3〉国公私30大学に資金を重点配分――が柱。

教員養成系大学の縮小や地方移管、国立大付属学校などの「民営化」などを例示して いる。〈1〉と〈3〉については、国立大側では検討したことがない。
遠山文科相に続き説明にたった工藤智規高等教育局長は「黙っていれば大学にお金が 入ってくるわけではない。若干血を見るような努力をしないと共倒れになる」などと 述べ、大学削減を前向きにとらえるよう意識改革を迫った。

これに対し、鹿児島大の田中弘允学長が「県域を超える再編も例示されているが、 『1県1国立大』の最低線も崩すのか」と質問。工藤局長は、「県に一つしかないか ら安心と思ってもらっては困る」と答え、県によってはキャンパスは残しながら近隣 の大学と合併させる道もあるとの考えを示した。

同省の方針については、都市部の大学には「革命的」との評価もあるが、地方大学か らは「地域に貢献している大学の切り捨てにつながる」という反発も出ている。


唐木です。 2001/6/12

藤田先生から読売新聞記事のご紹介がありましたが、日経の記事もお知ら せします。内容はこれまで文部省首脳の考えとしてリークされていたものと同じです が、国公私立あわせてトップ30校に入れない国立大学には教員も予算も配分され ず、実質的に廃止になる方向です。これが小泉内閣の「大学改革案」として「日の 目」を見たことで、国立大学の再編整備は一気に進むでしょう。

そして、獣医学教育再編整備は私たちだけでなく、農学部長会議、文部省、そして政 府の方針になりました。学生と納税者のための教育改革を目指す人には強い追い風に なり、現状にしがみついて改革を止めようとする一部の人には、大きなショックにな
るでしょう。改革の大きな方向を決めるのは政府、文部省ですが、具体策を持ってい るのは私たちです。九大案に続く具体案を早急に設定するよう、一層の努力をお願い します。

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日経6/10
大学改革トップ30校選抜・育成 文科省方針 国立大は大幅削滅

文部科学省がまとめた「大学(国立大学)の構造改革の方針」が九日、明らかになっ た。再編・統合で国立大学の数を大幅に削減する一方、優れた業績の大学には国公私 立を問わず資金を重点的に配分、世界に通用する「トップ30」大学の育成を目指す。

付属学校やビジネススクールなど国立大学の機能の一部について独立採算制の導入を 盛り込み、将来の民営化に含みをもたせている。

護送船団方式の大学行政から、“アメとムチ”による大学間の競争促進型行政への 転換だが、地方大学の切り捨てにつながるといった反対論が残る国立大学協会内の独 立法人化論議にも波紋を広げそうだ。

遠山敦子文科相が十一日、経済財政諮問会議で方針を表明する。

方針の骨子は、@現在九十九ある国立大学の数の大幅な削減を目指し、再編・統合を 大胆に進める A国立大学に民間的発想の経営手法を導入し、独立行政法人に早期移 行する B第三者評価による競争原理を導人し、「トップ30」の大学を世界最高水 準に育成−の三点。

国立大学の削減については、少予化による教員の新規採採用減少を受けて、教育大学 ・教育学部について規模の縮小・再編を進めるほか、地方自治体への移管検討を明 記。医科大などの単科大学についても、他大学との統合に加え地方移管検討を盛り込 んだ。さらに県域を超えた大学・学部間の再編・統合なども進めることをうたってい る。

民間的発想の経営手法導入では、大学役員や経営組織に外部専門家を登用や、能力主 義・業績主義に立った新しい人事システムの導人−−などを進める。競争原理の導人 では、専門家・民間人が加わった第三者評価システムを導入し、その評価結果を国民 ・社会に全面公開する。評価結果に応じて資金を重点配分するとともに、国公私を通 じた競争的資金を拡充していく。
これまで文科省は東京大学や京都大学など有力大学を中心に研究費などの重点配分を 強めてきたが、建前上はすべての国立大学を同列に扱ってきた。しかし、日本の大学 の国際競争力の低さを懸念する声が産業界のほか大学内部でも高まり、一律行政に対 する批判が出ていた。文科省が方針の中で、国公私「トップ30」育成と、具体的な 数字を示したことで、先端の学術研究を主眼にする大学と、教育中心の大学と、大学 の分類が進むことになる。


読売新聞記事 2001/6/11

各位 北大の藤田です。
国公私立大学のトップ30を世界最高水準に育成するために、国立大学の構造改革を大胆にすすめると言う文部科学省の方針については、大きく新聞報道があり、皆様も御存じのことと思います。その中で、国立大学の再編統合も一つの柱として取り上げられていますが、各社の報道のうち、読売新聞の記事(以下に転記)に「教員養成や獣医学などの分野は規模縮小や統廃合による再編を進める」という記述がありました。文部科学省は県域をこえた大学・学部間の再編統合等をすすめ、国立大学の数の大幅な削減を目指す方針の様です。この政策の是非は別として、読売の獣医に関する記述が文部科学省にきちんと取材して書かれたものであるならば、獣医学再編に関してはおい風が吹いてきたといえましょう。獣医学再編について腰の重かった文部科学省も、小泉氏に発破をかけられたこのような方針転換で、再編の動きのある獣医に着目したのでしょう。農学部長会議での西坂専門教育課長の発言もこうした文部科学省の政策決定を踏まえてのことであると思います。再編の論議が大きく動く可能性もあると思います。獣医としては、農学部をはじめ、大学内での論議や、地元との協議も十分に行っておく必要があるように思います。

**************** 読売新聞の記事 ***************

国立大を大幅減、再編や統合を促進…文科省方針

文部科学省がまとめた「大学の構造改革の方針」の全容が九日、明らかになった。

国立大学の再編・統合を通じて大幅な削減を目指すとともに、管理運営に民間の経営手法を取り入れることを明記したのが特徴だ。第三者による公・私立を含む大学評価システムを設け、評価の高い大学に重点的に予算配分や助成を行う構想も掲げている。大学運営に競争原理を導入することで、教育水準のレベルアップを目指すのが狙いだ。

同方針は、小泉首相が国会答弁で国立大民営化を検討する考えを示したことを受け、同省が策定したもので、十一日の経済財政諮問会議で遠山文部科学相が正式表明する。戦後一貫して国立大学の拡充整備を進めてきた同省が、再編・統合による大学数の削減を目指す考えを鮮明にするのは初めてだ。

国立大学について、同省は現在、二〇〇四年度以降に独立行政法人化する方向で検討を進めている。同方針では、全国に九十九ある国立大学をそのまま独立行政法人とするのでなく、教員養成や獣医学などの分野は規模縮小や統廃合による再編を進めるほか、各都道府県に最低一つはある総合大学同士の統合や地方移管なども検討するとした。

民間の経営手法導入については、各大学の運営組織の役員に外部の専門家を登用し、経営責任を明確にして機動的かつ戦略的な大学運営を目指す。

(6月10日03:04)


6/7,8 農学部長会議  2001/6/11

唐木です。学部長会議において非常に重要な決定がなされたとのことです。

獣医学教育に関する学部長会議の「基本姿勢5項目」について、「関係農学部長はその実現に誠実に努力をすること、そして、農学部長会議はその努力を支援すること」の2点です。

正確な文言はともかく、精神はこのようなものだと聞いています。

九州大学の獣医学府設置についても、口頭報告があったそうです。

これは非常に重要な決定です。それは、5項目の1)「農学全体として改善策を検討する」という基本姿勢に従って、学部長会議において検討を行った結果、「九州大学の獣医学府設置」が「実質的に」農学部長会議の承認と支持を得たことを意味するからです。これで、私たちの長年の努力の第一歩である来年度概算通過の目処が立ったと考えています。

各大学におかれましては、学部長会議の決定を誠実に履行することを強力に申し入れ、第二歩、第三歩のタイムテーブルを作成して教育改善を進める努力をお願いします。

念のために、基本姿勢5項目を再録します。
1. 獣医学教育の改善の必要性を認め,農学全体として改善策を検討する.
2. 日本における獣医学教育体制が諸外国のそれに比べて小規模に過ぎることが,最も大きな問題点であると考える.
3. 学内で教育態勢を充実させることが不可能な場合には,他大学獣医学科との再編などの道を考える.
4. 自助努力で獣医学教育の充実を計る場合でも先進諸国に準じた国際レベルの獣医師養成を目標とする.
5. 新たな再編は,産業基盤を考慮して,地域的に偏らないことに配慮し,なるべ く既存の施設などを利用できるように努める.

唐木です。午前中のメールの追加です。

農学部長会議において、西阪専門教育課長が、「獣医の先生方の教育改革の努力を無駄にしないことが、文部省の務めと考える」との趣旨の発言をされたとのことです。

これは、文部省の態度を明確に表していると、私は考えています。

本日午後、私が理事長を務める日本トキシコロジー学会年会で、ガン研究で有名な黒木登志夫元東大医科研教授に講演をお願いしました。黒木教授は今月から岐阜大学学長に就任されています。講演の後、お礼を兼ねて雑談をしましたが、獣医学教育改善の動きはすでに事務局からティーチインを受けているが、医学部の常識から見ても、現在の獣医学科で十分な教育ができるはずがないことは充分に理解しているとのお話でした。


唐木です。最近の状況をお知らせします。 2001/5/30


九州大学が概算要求を行う準備を正式に進めています。そして、その旨を全国協議会長宛てにお知らせいただきました。下記に再録します。同様の文書が、山口、宮崎両大学学長および農学部長、そして国公立会長にも送られています。

この件は、ご存知のように、山口、宮崎両農学部長が九州大学に検討を要請したこと から始ったものです。九州大学の決定は山口、宮崎両大学の意向に沿ったものであ り、これによって獣医学教育改善は一気に大詰めに向かいます。

さらに、国立大学農学系学部長会議が6月7、8日に開催され、「臨時委員会」の報 告がなされる予定です。農学系学部長会議は、すでに、獣医学教育改善についての 「基本姿勢5項目」を決定し、「自主努力あるいは再編整備により、小さすぎる獣医
学科を適正規模に改善すること」を運動方針として採択しています。関係大学はその 具体化を求められています。九州大学の動きは、この方針にも合致するものです。

関係獣医学科におかれましては、「基本姿勢5項目」の具体化に努力をする農学部長 を全面的に支援し、一日も早く教育改善を実現していただきますようお願い申しあげ ます。

****************
九大室企第A−24号
平成13年5月14日

全国大学獣医学関係代表者協議会
会長 唐木英明殿
                        九州大学総長
                        杉岡洋一

獣医学教育研究組織の再編整備について

時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、平成12年10月10日付けで貴職から「獣医学教育改善に関する要望書」を 送付いただきましたが、本学といたしましては、早速、獣医学府等検討委員会を設置 し、獣医学教育改革の社会的背景、九州大学で獣医学教育を行う基本理念を中心に検 討を重ね、その検討結果を別添のとおり報告書としてとりまとめました。

今後は、獣医学府等の設置に向けての準備を更に具体的に進める段階に至ったとの認 識から、獣医学府等設置準備委員会の設置を評議会へ提案することとなります。

なお、本件については、山口大学農学部及び宮崎大学農学部からも要望書をいただい ており、両大学と緊密に連携を図りながら進める必要があることから、両大学におい ても歩調を合わせて準備いただきたい旨お願いしているところであります。


2001/4/23 第5回獣医学教育改善に関する臨時委員会議事録(案)

日時:平成13年4月14日 14時00分〜17時00分
場所:東京大学
出席者:佐々木帯広畜産大副学長、上原農工大農学部長、太田岩手大農学部長、中村岐阜大農学部長、林東大農学部長、西中川鹿児島大農学部長、加藤山口大農学部長、桑原大阪附大農学部長、岩崎鳥取大農学部長、續宮崎大農学部長、坂井九州大学農学部長(オブザーバー)、喜田北大次期獣医学部長(オブザーバー)
座長:藤田北海道大学獣医学部長 

議題
1. 獣医学教育改善に関する獣医学関係者の見解についての質問状に対する回答について
2. 今後の獣医学教育改善に関する検討について

審議内容

1. 本委員会から獣医学関係者に対して発出された、獣医学教育改善に関する質問状
に対する獣医学関係者の回答について、唐木全国大学獣医学関係代表者協議会会長よ
り説明を受け、質疑応答と論議があった。

2. 6月の農学部長会議に、本臨時委員会のこれまでの審議結果を報告すること、その中間報告書には、獣医学教育改善に関する臨時委員会案ならびに獣医学教育改善に向けた各大学農学部の取り組みを盛り込むことが確認された。そのため、4月末日までに各委員は
(1)日本の獣医学教育をどのような枠組みにするのが適当か大枠の案、
(2)グローバルな視点から見た日本の獣医学教育の適正な規模、および
(3)各大学のこれまでの取り組みと検討成果
を藤田まで、メールで送付することが了承された。臨時委員会としての提案をまとめるには、農学部長会議前日(6月6日)に予定している本委員会の前、5月中旬頃にもう一度集まる必要が生じると予想されるが、これについては追って座長が判断して連絡することが了承された。

以上


001/4/18 唐木です。
4/14開催の「獣医学教育改善に関する臨時委員会」について、藤田委員長および関係学部長に以下のお礼とお願いを発送しました。各大学においても、4月末の締切り前に早急な検討を行うよう学部長にお願いをしてください。よろしくお願いします。

**********************
国立大学農学系学部長会議
「獣医学教育改善に関する臨時委員会」
委員長および委員各位 殿

冠省、4月14日に開催されました「獣医学教育改善に関する臨時委員会」に出席させて頂き、獣医学教育改善についての説明の機会を頂き、また、今後の教育改善のた
めに大変有益なご質問やご意見を頂き、厚く御礼を申し上げます。

私達、獣医学教育関係者は、「獣医学教育改善の必要性」が農学部長会議において承認されたにもかかわらず、まだ正式な検討が始まっていない大学もあるやに仄聞していましたが、先日の「臨時委員会」での先生方の熱心かつ真剣な討論を拝聴して大変に有り難く感じました。「臨時委員会」の議論を踏まえて、関係全大学においてこの問題について早急に正式な検討が開始されることを強く念願しています。

今回の合意として、「農学部長会議承認の5項目」を前提として各大学で、(1)「獣医学教育の適正規模」、(2)各大学における「獣医学教育改善計画」あるいは取り組み状況、(3)日本全体の獣医学教育のあるべき姿等についてご検討いただき、今月中に藤田委員長のもとに回答をメールで送付するとのことでしたが、我々獣医学教育関係者としてもその内容に大いなる関心と期待を抱いています。不十分な教育で不利益をこうむる学生がないように努力をするのが私達の義務であろうと信じ、関係学部長の格段の御高配を伏してお願い申し上げる次第です。

末尾ながら、先生方のご健康とますますのご活躍を期待申し上げます。

全国大学獣医学関係代表者協議会
 会長 唐木英明


2001/4/15 唐木です。
只今、農学部長会議「藤田委員会」が終了しました。
すでにHP]に掲載している「藤田委員会からの質問状に対する回答」をもって委員会に参加し、ご説明をしてきました。
特にお願いをしたことは、第103回国立農学系学部長会議総会で了承された以下の5項目を早急に具体化し、実現することです。

*****************************************************
1. 獣医学教育の改善の必要性を認め,農学全体として改善策を検討する.
2. 日本における獣医学教育体制が諸外国のそれに比べて小規模に過ぎることが,最も大きな問題点であると考える.
3. 学内で教育態勢を充実させることが不可能な場合には,他大学獣医学科との再編などの道を考える.
4. 自助努力で獣医学教育の充実を計る場合でも先進諸国に準じた国際レベルの獣医師養成を目標とする.
5. 新たな再編は,産業基盤を考慮して,地域的に偏らないことに配慮し,なるべ
く既存の施設などを利用できるように努める.
*****************************************************
会議の内容は近く藤田委員長からご連絡があると思いますが、藤田委員長と、国立農学系学部長会議 林会長の「獣医学教育改善」の努力に対して、敬意と感謝の意を表します。

なお、すでにご報告がありましたように、5月1日を持って藤田委員長は北大副学長に就任し、喜田教授が北大獣医学部長に就任し、「藤田委員会」は「喜田委員会」に変わります。

2001/4/11 九州大学訪問記

4月11日午後1時30分より、九州大学杉岡洋一総長を、日本獣医師五十嵐幸雄会長が訪問されました。福岡県獣医師会蔵内勇夫会長(福岡県議会議員)、日本獣医師会朝日事務局長と私が同道しました。

用件は、「獣医学教育に関する懇談会答申」を持参して、獣医学教育の改善は獣医界のみならず獣医師以外のメンバーで構成した「懇談会」においても認められていること、その実現のために九州大学獣医学部の設置を推進していただきたいとの要望をお伝えするためです。

九大側からは、総長のほかに渡邉繁紀委員長、早田憲治事務局長、黒田英雄企画調整官も出席されました。

五十嵐会長からの要請に対して、杉岡総長から、九大としても努力をする旨のお答えがあり、さらに、この問題については周辺のご理解を得ることが非常に大事であること、そのために獣医学側もさらに努力をしていただきたい旨の要請もあり、今後の協力を約して訪問を終わりました。

話ははずんで予定の30分を大分オーバーし、孫文直筆の額を掲げた総長室のほかに「貴賓室」なども見せていただき、総長にはわざわざ玄関までお見送りを頂いて、私達もさらに努力をする決意を固めました。

五十嵐日本獣医師会長、蔵内福岡県獣医師会長、朝日事務局長には教育改善に対するご理解とご協力を深く感謝します。

唐木


2001/3/13

各位
 
以下は、3月3日開催の「第4回獣医学教育改善に関する臨時委員会」の議事録と、獣医学協議会に対する臨時委員会からの質問状です。3日は4時間半に渡って、真剣な論議がありました。どの農学部長も獣医学教育の改善が必要であると云うことについては、十分認識され、如何にそれを行うか、理想と、実現可能な方策とについて、様々な論議がありました。その中で、獣医学再編の本質に関わる問題点がいくつか指摘され、臨時委員会として獣医学教育改善案を構築する上でも、それらの問題に対する獣医側からの公式見解を必要とすると云う展開になりました。それをまとめたものが以下の質問状です。

質問内容に関しては、これまで当然、再編を目指す獣医側としては検討してあって然るべき事柄です。再編の理念の本質をつく問題点ですので、真剣に、きちんと回答をお願い致します。特に、獣医学協議会の執行部に当たる方には、4月の学会の際の全国、国公立協議会で検討できる様、原案をお願い致します。

***********************************************************
第4回獣医学教育改善に関する臨時委員会議事録

日時:平成13年3月3日 14時00分〜19時00分
場所:東京大学
出席者:関係国公立大学農学部長、帯広畜産大学長、九州大学農学部長(オブザーバー)
座長:北海道大学獣医学部長 藤田正一

審議事項
1. 各大学における状況報告
2. 2月8日の獣医学再編に関する新聞記事について
3. 獣医学再編に関する獣医側の見解確認について
4. 現在検討中の獣医学教育改善案等について
5. 今後の獣医学教育改善に関する検討について
審議内容
1. 各大学における状況報告
各大学の農学部及び獣医学科の獣医学教育改善に関する取り組みおよび概算要求事項について報告があった。

2.新聞記事については、受験生に不安を与える可能性もあるこの時期、不確定な情報をあたかも既定の事実のごとく扱い、獣医学関係者がリークしたのであれば、極めて遺憾である。山口大学の農学部長はこの件で文部省に呼び出されており、獣医にたいしては、ホームページ等の情報管理を含め、注意を促したい。また、この問題については、臨時委員会あるいは、農学部長会議として文書で見解を提出したい。文案については、林東大農学部長が原案を書くこととした。

3. 獣医学再編に関する獣医側の見解について、いくつかの疑問点が複数の委員より指摘され、林委員、中村委員より書面により提出された問題点とあわせて、本委員会よりの質問状として、獣医学協議会に提出することとなった。質問状は藤田が取りまとめることとなった。

4. 現在検討中の獣医学教育改善案等について、帯広畜産大学、鹿児島大学の自助努力案、九州大学2校先行案について、それぞれの大学から、現状の説明を受けた。自助努力案については、学生定員と教官定員の問題、国際水準のレベル等について論議があった。獣医学再編については、将来的な再編の検討を否定するものではないが、このことによって派生する連合大学院獣医学研究科をどうするかという問題についても十分な検討が必要であり、今後、どの枠組みで検討するにせよ、連合大学院の取扱いについての検討が必要であるとの認識で一致した。このことは既に検討中の九州大学側にも伝える必要があるとの指摘があった。

5. 今後の獣医学教育改善に関する検討については、平成12年10月の臨時委員会で合意した獣医学教育改善に関する基本姿勢を再確認し、これに基づいてすすめることとした。


******************** 質問状 **************************


国公立獣医学協議会会長
全国獣医学協議会会長 殿

国立農学系学部長会議「獣医学教育改善に関する臨時委員会」
                          委員長 藤 田 正 一


獣医学関係者の獣医学教育改善に関する見解についての質問状    

国立農学系学部長会議のもとに設置された、「獣医学教育改善に関する臨時委員会」は、獣医学科を擁する国公立大学農学部の学部長により組織され、獣医学教育の改善策について検討を重ねてきました。平成12年10月に帯広で開催された第103回国立農学系学部長会議総会では、以下の5項目からなる本委員会の獣医学教育改善の検討に関する基本姿勢が了承されました。

1. 獣医学教育の改善の必要性を認め、農学全体として改善策を検討する。
2. 日本における獣医学教育体制が諸外国のそれに比べて小規模に過ぎることが、最も大きな問題点であると考える。
3. 学内で教育態勢を充実させることが不可能な場合には、他大学獣医学科との再編などの道を考える。
4. 自助努力で獣医学教育の充実を計る場合でも先進諸国に準じた国際レベルの獣医師養成を目標とする。
5. 新たな再編は、産業基盤を考慮して、地域的に偏らないことに配慮し、なるべく既存の施設などを利用できるように努める。

平成13年3月3日の臨時委員会では、この基本方針を再確認しましたが、さらに検討を進めるために、以下の項目について臨時委員会としての見解をまとめる必要性が生じました。つきましては、これらの点に関する国公立獣医学協議会の公式見解をお教え願います。

1.21世紀に向けての日本における獣医学のあり方、獣医師養成のあり方、そこにおける国立機関の位置付け等を総合的、体系的に提示されたい。その中で、以下を説明されたい。

(1)日本における獣医学および獣医師が果たしてきた社会的使命とその歴史的変遷、そして21世紀における展望を述べて下さい。

(2)戦後50年、(1)のなかで、国立大学が果たしてきた使命とその評価(10機関しか設置されなかった理由、現10大学に設置された理由・必然性を含め)をどう捕らえているか。

(3)21世紀における国立獣医師養成機関が果たすべき使命、役割(国公私立間の役割分担を含め)についてどう考えるか。

(4)21世紀に必要な獣医師の数ー国公私立あわせて年間約1000人の獣医師を養成しているが、この状況は既に50年不変である。この数や、国公私立の比率は21世紀の獣医学教育にとって妥当か。

(5)国際レベルの獣医学教育とは何か。21世紀における日本の獣医学に必要な教育機関の規模と教育の質は欧米と同じである必要があるのか。食文化や動物に関する文化、産業基盤の違いを踏まえた上で、そういえるのか。

(6)再編を行うのであれば、再編後の国立獣医師養成機関の間での役割分担を如何にするのか。教育の均一化と個性化を如何に整合させるのか。

(7)我が国における国立獣医師養成機関の適切な配置について:我が国の何処とどこに設置するのが適切か、その理由は。

(8)他の動物系教育機関との関係について:21世紀における獣医師養成教育機関と畜産学、あるいは医学系教育機関との関係はどうあるべきか。農学部とたもとを分かつのであれば、農学部との関係はどうあるべきか。

2.現在獣医学協議会で検討中の案について、それらが、21世紀の日本の獣医学のあるべき姿にどう繋がるのか。以下のことを含めて見解をお聞かせ下さい。

(1)国公立獣医学協議会の3大学案があるが本当にそれが理想的な形態か。獣医全体から見て、規模の縮小、多様性の消失、後継者の就職先の縮小は避けられないのではないか。特に以下に留意してお答え下さ い
(i)3大学案が実現した場合の学生数、教官数等の規模はトータルで現在の規模に比してどうなるのか。
(ii)獣医学科の数の縮小が将来的な規模の拡大を阻害しないか。
(iii)現在の10教育機関が持っている多様な社会的使命(機能)や、多様な研究の方向性が失われるのではないか。
(iv)3大学案が実現した場合、卒業生はどういう分野に何人程度、就職することになるのか。重点化大学で研究者、後継者を多数養成して、彼等の就職先の展望はあるか。

(2)既存の連合大学院獣医学研究科をどうするのか。特に、連合大学院構成大学の一部の獣医学科が再編したとき、連合大学院をどうするのか。


2001/2/28

唐木です。
 以下はCAP 2001年2月号に掲載された藤原先生の一文です。ご存知のように藤原先生は10数年前の獣医学再編運動の際に全国獣医学関係大学代表者協議会(現:全国大学獣医学関係代表者協議会)会長として活躍されました。現在の九大再編の基礎を作られたのも藤原先生です。当時の様子を知る貴重な資料であり、藤原先生にお願いして掲載させていただきました。ぜひお読みください。


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走馬灯(28)−初夢は十六夜の月− 

藤原 公策

新世紀の初日の出は生憎の雲影で見参叶わなかったが、松の内早々、長年の課題である獣医学教育再編が九州大学獣医学部創設を軸にいよいよ始動した、との嬉しいホットニュースを教室同窓会で聞いた。十六夜の月明かりのもと久々に母校キャンパスを辿る家路で、向学心旺盛な後進学徒達の幸せを占う楽しい初夢を見た思いに耽り、十六夜ならぬ十六年前のある日が蘇った。

1985(昭60)年9月11日(水)朝、著者は福岡空港から九大農学部に赴き、大村農学部長はじめ深沢教授(畜産学科主任)他の方々と懇談していた。当時、国公立大学獣医学協議会会長として、既に各論段階に入っていた6年制教育に伴う再編整備の動向に沿って、協護会の議を踏まえ傘下各校あるいは関連大学学部を折を見ては歴訪、懇談していたので、筆者の要請を九大側が受けて会合が持たれたと記憶するが、定かではない。この会合では、西ブロック(山口大、宮崎大、鹿児島大)各校の意思がまとまれば、九大としては前向きに検討する用意があることを確認できた。昼食をとりながら深沢教授とさらに懇談し、午後には医学部動物施設の半田助教授らと会って、タ刻には鹿児島大、翌日には宮崎大の獣医学科教官との懇談会に臨んだ。

その後も各校での懇談会に出席し、中ブロック(岐阜大、鳥取大)では岐阜大と名大、東ブロック(岩手大、農工大、東大)では農工大と東大との再編の可能性についても、学部長あるいは学長と筆者との間で若干の非公式の接触があった。また、当時は毎回協議会に陪席してくれていた文部省側から、獣医学教育改善のために各大学の教官定員を増加できる見込みはまったくない、いいかえればスクラップ・アンド・ビルド以外に道はないことが再三言明された。にもかかわらず、時とともに再編整描の機運はむしろ希簿になっていき、当事者である各校獣医学科教官の意思統一はできずに過ぎた。遂には1986(昭61)年春の協議会で、獣医学教育の再編整備は時宜を失する恐れがあるのみならず農学教育改善の妨げにさえなっている、と文部省から苦言が呈されるに至った。このような事態に終始した要因として、“修士積み上げ6年制”卒業生の就職が絶好況であったこと、従来の小規模教育に対する愛着が案外強かったこと、などもあげられよう。しかし、平均して各校を2、3回歴訪しながら、それぞれの伝統的地域特異性に遠慮が過ぎた筆者の責任は大きい。すなわち、近年偏差値向上の著しい獣医学科学生の向学心を受け止めるには、伝統的な“寺小屋”的教育から脱却して、統合により充実した教員組織と実習・研究設備により教育効果を飛躍的に高めることが6年制実施に伴う緊急課題であることを訴えることが弱く、再編整備後の将来像も明確にできなかった。言い訳がましくなるが、16年前には未だ獣医学教育の充実に対する専門領域内外の要望も今日の比ではなかったことにも情状酌量の余地があろう。

かくして盛り上がりのないまま1987(昭62)年3月に筆者の任期は終わったが、国立大学の獣医学学生定員330名は動かせず、獣医学教育改善は既存校の再編整備によるほかないことが、以後の協議会でも繰り返し文部省側から表明されるとともに、先行部分についての対応さえ非公式の話題となったが、これは辛うじて残っていた農工大と東大、岐阜大と名大の接触に関連があったのかも知れない。しかしながら、冷え込んだ再編整備の気運は如何ともしがたく、1988(昭63)年初頭には、国立大学獣医学教育の再編整備が当面期待できない旨を正式に表明した文部省は、既に発足していた農学のそれに準じて獣医学連合大学院の設置(1989、昭64)に踏み切り、岐阜大(帯広畜産大、岩手大、農工大、岐阜大関連)と山口大(鳥取大、山口大、宮崎大、鹿児島大関連)の両連合大学院が誕生して今日に至っている。この決定に当っては、改めての再編整備をも視野に入れたと思われる。

読者諸兄姉の多くは必ずしも獣医学関係大学の現存規模にそれほど詳しくはないと思うので、ここで若干の蛇足説明を加えると、再編整備の対象である国立大学獣医学科は、上記両連合大学院関連8校に北大、東大を加えた10校で、学生定員(1学年)は各校30〜40名、計330名である。これに大阪府大40名、私立5校560名を加えて合計930名となり、毎年約1,000名の新獣医師が誕生する。教員1名当たりの学生数は国立大学では私立大学(1.9〜3.0)よりは多く0.7〜1.5であるが、国際水準(<1.0)に見合う北大、東大を除く8国立大学では少数分散(20〜30名)している教員組織で拡大した基礎、応用、臨床各専門領域の教育、大学院の研究態勢を足することは不可能である。さらに、実験・実習設備の手当てがないまま発足した6年制教育は講義偏重(授業時間の3分の2以上)の変則状態となっていて、卒業生の実務素養の低さが、特に臨床、公衆衛生などの分野で批判の対象となっている。再編整備による1校当たりの学生定員増加に見合う施設・設備の拡充・充実が切望される所以である。

今回誕生すべき新学部が軌道に乗った時に、1878(明11)年に始まったわが国の獣医学教育が、いざよいつつも120余年を経て名実ともに国際水準に肩を並べたことになろう。幾多の困難を克服して再編整備の実現に向けて弛まぬ努力を惜しまなかった各位に、改めて深甚の敬意と心からの感謝を棒げたい。

 


2001/2/13

唐木です。新聞記事が話題になっていますので、一言申し上げます。

1)記事の内容は私達の誰も認めたものではなく、「ガセネタ」というべきものです。私たち自身が、根拠のない記事で右往左往するようなみっともない真似は自戒しなくてはならないと思っています。この記事を読んだ農学部長が不快感を持っているとの話も聞いていますが、私達の運動とは違う記事ですから、各大学において早急にその点を学部長に説明していただきたいと思います。

2)西阪専門教育課長のコメントが「後ろ向き」であり、文部省は再編に反対しているのではないか、との声もあります。これも全く根拠がありません。本日、課長にお会いして真意を確認しました。課長の言をお伝えします。

 「文部省は獣医学教育の改善の動きを後押しするつもりであることにかわりはない。再編については、獣医学関係者、所属大学、地域の合意がないとうまくゆかない。さらに、国立大学としての教育、研究のあり方を明らかにすることも必要であろう。これらの案について、農学部長会議の合意が必要と考える。」

このような意向は、これまで何度も聞いているものであり、従来と何も変わっていません。私達の努力次第ということです。
 
新聞が勝手なことを書くのは何度目かのことです。そのたびに私達が振り回されるようなことでは、大きな仕事はできません。私達が決定したことは、すべて議事録に残してあります。議事録にもないことを載せた新聞記事によって、教育改善の動きが妨げられるような事態は避けなくてはなりません.

冷静に、論理的に対処していただくことをお願い申し上げます。


2001/2/13

唐木です。東大の学生が作る学内新聞ですが、東京大学新聞 2001/2/6号に獣医学教
育改善HPの中身をほとんどそのまま掲載していますので、ご参考まで。

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獣医学部設置へ協力
国立10大学の獣医学科 研究・教育規模の拡大目指す
東大も視野に

国立10大学に農学部の中の1学科として存在する獣医学科を再編し、東京大学。北海道大学・九州大学の3大学に大学院獣医学研究科・獣医学部を設置する動きが急速に進行している。研究分野の広がりに対して、各学科の規模が小さく、教官の数もあまりにも少なすぎる現状を改善し、組繊を入きくすることで教育・研究の内容と幅を確保することを構想している。現在は10大学の獣医学科の教官が協力して、九州大学獣医学部設置に向けて2002年度概算要求を通過させることを目指している。 

獣医学の教育科目は獣医解剖学、獣医薬理学、獣医内科学、獣医外科学など、医学・歯学教育と似た基本構成であるが、時代要講により分子生物学、実験動物学、動物行動学などの新たな分野が加えられてきた。そのなかで最も基礎的な18科目が獣医師国家試験に出題される。しかし、各大学の獣医学科には10人程度の教授しかおらず、助手を含めても25人程度である。そのため、国家試験科目のうち半分程度を学内外の非常勤講節による集中講義などで補っているのが現状だ。東大では全科目を専任教官が担当しているが、新たな分野の教育は困難になっている。

近年のバイ才ブームの影響もあり、獣医学は農学部の中でも最も人気の高い学科の一つとなっている。だが、同し6年制教育でありながら、大学設置基準の違いにより医学部とは教育体制に大きな格差がある。学生数が少ないため教官の数も少なく、獣医学の最も重要な部分である臨床教育と公衆衛生教育が不十分だと獣医師会からも指摘されている。獣医学教育の関係者も、問題解決能力や実務能力が十分に備わっていない学生を社会に送り出していることに対する非難が厳しくなることを危倶している。

これらの問題の解決は長年試みられてきた。1997年に財団法人大学基準協会が「獣医学教育に関する基準」を改定、これをきっかけに国立大学獣医学科の再編の動きが加速した。獣医学教育をより充実したものにするために国立の10獣医学科を3獣医学部に再編しようとするものだ。この動きは公私立大学獣医学科にも影響を与えた。現在では全大学の獣医学科が、社会の要望に応え、教育水準を国際的なレベルに引き上げるために、規模を拡大し、獣医学部として学術的に高度で実務能力の高い動物医学教育を実施すべきであるという流れに乗っている,困立大学の獣医学科は私立大学にも同様の水準を求め、各国立大学の学長や農学部長にも国全体の見地に立って再編の要請をする予定だ。


2001/2/7

藤田です。

2月3日に獣医学教育改善に関する岐阜大ー北大ジョイントフォーラムに参加してきました。予想した通り、岐阜の先生方も皆さん非常に熱心で、教育の改善をしたいという真摯な態度に感激しました。これだけ盛り上がっている獣医の教育改善の意識をどのように形にして行くのか、これだけの熱意とエネルギーをどこに向けて集約していったら最も効果的なのか。獣医だけで盛り上がっていても、農学部に賛同してもらわなければ動きようがありません。やはり農学部の説得でしょう。農学部を説得するには我々の総意で、再編のきちんとした理念を構築し、農学部に説明する必要があります。

私が理解している獣医学再編の理念の骨子として、以下のような事があげられると思いますが、追加、あるいは、まずいところがあれば教えて下さい。よろしくお願いします。

1.獣医学教育の質、量ともに向上を計り、欧米の獣医学教育に匹敵する教育を可能にする。
2.各獣医学教育機関には、少なくとも現行の獣医師国家試験科目の教育を専門に教育できるスタッフが揃っている必要がある。
3.教官スタッフの充実に加え、就業年限が6年と、アメリカにくらべ、2年短いことから、大学院におけるプロフェッショナル養育をも視野に入れて教育の充実を考える必要がある。
4.日本における獣医学教育を受けて卒業する年間1000名の卒業生のうち335名を担当する国立大学には、研究者養成の任務も私学に比して重いといえる。
5.新制大学は連合大学院の発足により、教育研究の質が飛躍的に向上した。獣医学教育におけるこの大学院効果は無視できない。
6.欧米の獣医学教育機関のサイズ、および、国家試験に対応できる学科目を教育できるスタッフ数を考慮すると、学生数100人規模の学部が望ましい。
7.100人規模の獣医学部を設置するとなると、その人数の教養教育を大きな支障をきたさず支えることのできる国立大学は基幹総合大学しかない。
8.これらの事から、再編先は大学院重点化大学とする。
9.立地条件等のバランスから、再編先を北海道大学、東京大学、九州大学とする。北大、東大には既存の獣医学科があり、地域的なバランスも良い。九大については、西日本の基幹総合大学がいずれも獣医学科を持っていないため、地域的な考慮から九州にある基幹総合大学とした。
10.これにより、我が国の獣医学教育体制は、地域的に見ると、北日本に国立大学1校、私学2校、東日本に、国立大学1校、私学3校、西日本に、国立大学1校、公立大学1校という体制となる。産業のバックグラウンド、および、患畜数等から、バランスのとれた配置と言える。


2001/2/6

唐木です。

東京大学に新しい学部・研究科の設置は不可能ではないか、という議論がありますが、現在、大学院情報理工学系研究科の設立が準備されていますので、設立準備委員会要綱をお知らせします。これは「東大規則第65号」として総長より平成13年1月24日付で制定通知があったものです。新しい学部・研究科の設立に必要な手続きです。

東京大学大学院情報理工学系研究科設立準備委員会要綱
     平成13年1月23日
     評議会了承
(設置)
第1条 東京大学に東京大学大学院情報理工学系研究科設立準備委員会(以下「準備委員会」という。)を置く。
(任務)
第2条 準備委員会は、次に掲げる事項について、検討する。
(1)研究科創設に関する基本事項
(2)大学設置審議会に関する事項
(3)その他研究科創設にかかわる事項
(組織)
第3条 準備委員会は、委員長及び委員若干名をもって組織する。
(委員長)
第4条 委員長は、副学長のうちから総長が委嘱する。
2 委員長は、準備委員会を招集し、会務を総括する。
3 委員長に事故あるときは、あらかじめ委員長の指名する委員が、その職務を代理する。
(委員)
第5条 委員は、次の各号に掲げる者に総長が委嘱する。
(1)副学長
(2)関連する研究科(情報学環を含む.)及び研究所(先端科学技術研究センターを含む。)の長のうちから総長が指名した者
(3)総長が必要と認めた教授又は助教授若干名
(4)企画調整官
(委員以外の者の出席)
第6条 準備委員会には、委員のほか委員長が必要と認める者を出席させることができる。
(部会)
第7条 準備委員会における検討を補助するため、準備委員会のもとに部会を置くことができる。
(庶務)
第8条 準備委員会の庶務は、事務局総務部学務課において処理する。
(補則)
第9条 この要綱に定めるもののほか、準備委員会の運営に関し必要な事項は、準備委員会の定めるところによる。
附則
1 この要綱は、平成13年1月23日から実施する。
2 東京大学大学院情報理工学系研究科設立準備会要網(平成12年9月19日制定)は、廃止する。
     以上


2000/1/16

日本学術会議 「学術の動向」 印刷中

随筆: ダイアモンドは永遠に       唐木 英明

アフリカの星
ダイアモンドの価値はCarat、Color、Clarity、Cutで決まる。掘り出される原石の 99.9%は1カラット以下で、それ以上のものは数百トンの鉱石中に一つ程度という。 英国王室所有の「アフリカの星」は、これまでに発見された中で最大である3106カラットの原石「カリナン」からカットされ、530カラットある。よい原石はカットでその価値を発揮するが、逆にカットによりカラットは小さくなってしまう。0.2カラットのダイアモンドなら数千円で買えるが、1カラットになると100万円以上、「アフリカの星」の値段は想像も出来ない。

獣医学に対する社会の評価の変化
話は変わるが、戦後の畜産振興政策に対応して大阪大学以外の旧帝大をはじめとする全国の多くの大学に畜産学科が設置された。その折に新制国立8大学に獣医学科が新設され、これに戦前から獣医学教育を行っていた北海道大学と東京大学を加えた国立10大学が入学定員30〜40名の小さな獣医学科をもつことになった。しかし当時の農村は貧しく、陸軍勤めの獣医師が退役して街にあふれ、古くからの動物に対する差別感も重なって、世の中の獣医師に対する評価は低く、獣医学教育の将来は明るくはなかった。

私は1960年に東京大学に入学したが、開業医であった父が切望していた医学部進学を拒否し、「こともあろうに」獣医学科に進学して勘当の身となった。当時は、後に第9期および第10期日本学術会議会長を連続して務められた獣医微生物学の越智勇一教授、学士院賞を受賞された獣医病理学の山本脩太郎教授など存在感がある先生方が教壇に立っておられたが、不人気の獣医学科への進学者は私を入れてたった3名しかいなかった。教授が8人、学生が3人の家庭教師状態で教育を受けた私達は恵まれていたが、私立大学なら倒産だろう。しかし、先生方には意に介する様子は見えなかった。

獣医学に対する世の中の考え方が変わり始めたのは、高度経済成長が続いた1970年代だっただろうか。庶民が豊かになるにつれて動物が家族の一員になってゆき、動物愛護の精神が静かに浸透していった。さらに、畜産製品の輸入が急増するという時代背景の中で、動物医としての役割以外に、海外から侵入する可能性が高い家畜伝染病や人獣共通感染症を予防し、安全な畜産食品の供給を確保する公衆衛生の担い手として、また、製薬企業の成長とともに薬品の効果と安全性を研究する基礎医学研究者の養成機関としての獣医学の役割が見直されていった。私の勘当も1972年に助教授に採用された頃やっと解かれたが、これは亡父が獣医学を認めたからではなく、年を取ったせいかもしれない。そして1978年から獣医学は医学、歯学と並んで6年制教育となった。

獣医学教育の問題点
獣医学の教育科目は獣医解剖学、獣医生理学、獣医薬理学、獣医内科学、獣医外科学など、医学、歯学教育と似た基本構成であるが、時代の要請により分子生物学、実験動物学、動物行動学などの新たな分野がこれに加えられてきた。そのなかで最も基礎的な18科目が獣医師国家試験に出題される。ところが、新制国立大学獣医学科には9-10名の教授、助手まで入れても総数25名の教官しかいない。だから必須18科目の半分程度については学内外の非常勤講師による集中講義などを行うなどにより、教育の質を保つ努力を続けている。しかし、教官数の絶対的な不足を工夫により補う方法には限界があり、新たな分野の教育などは困難である。

このような獣医学教育の現状に対しては、獣医学担当教官だけでなく、社会からも問題提起がされている。例えば1998年に日本獣医師会が行ったアンケート調査によれば、獣医学の最も重要な部分である臨床教育と公衆衛生教育が不十分であるとの結果が示されている。教育体制を早急に改善しない限り、問題解決能力や実務能力が充分でない学生を卒業させるという獣医学関係大学に対する社会の非難は、ますます厳しくなるだろう。

最近のバイオ・ブームの中で、遺伝子やタンパク質だけでなく、生きた哺乳動物の研究ができる獣医学科は学生の間で次第に人気が高くなり、現在では各大学とも入学が困難な学科になっている。難関を突破して入学した優秀な学生にとっては、同じ6年制教育でありながら教授が10名以下しかいない獣医学教育と、大学設置基準の定めにより70名以上の教授を擁する医学教育の格差は大きな驚きであり、不満であることはしばしば耳にする。しかし、その教育体制に不満があっても獣医学科を卒業しなくては獣医師になることが出来ず、学生に選択の余地はない。

一方、国立大学全体を見渡すと、10獣医学科の入学定員は325名、助手以上の教官総数は約300名ある。仮にこれを3つに分割すれば、入学定員約110名、教官数約100名となり、医、歯学部には及ばないものの、現状より充実した教育体制と成り得る。従って、国立大学における獣医学教育の貧困は、教育に対する国の投資が不十分なためでなく、組織を小さく分割しすぎたために起こった悲劇ということになる。

教育改革の動き
財団法人大学基準協会は獣医学6年制教育のあるべき姿、獣医師国家試験、国際基準などの観点から、1997年に「獣医学教育に関する基準」の改定を行い、広範な獣医学教育課目を教授するための助手以上の教員数を最低72名と定めた。

これをきっかけとして、獣医学教育を改革するために、国立大学獣医学科の教官は再編整備の努力を始めた。すなわち、現在の10獣医学科を3-4獣医学部に再編成しようとするものである。この動きは公、私立大学獣医学科の改革運動を呼び起こし、獣医学関係者の賛同を得て大きな動きになりつつある。そして、日本学術会議からも、2000年3月付けで、獣医学研究連絡委員会報告「わが国の獣医学教育の抜本的改革に関する提言」が行われた。その内容を要約すると、以下の2点である。

1.獣医学に対する社会の要望に応え、また獣医学教育を国際的水準に引き上げるために、獣医学教育の規模は、最低限、獣医師国家試験出題科目を十分に教授できる程度のものとし、学科ではなく学部において学術的に高度で実務能力の高い動物医学教育を実施すべきである。

2.文部省は十分な教育資源を備えた獣医学部を構築し、現状では極めて不十分である臨床・応用獣医学関連の実務教育を行うための施設・設備ならびに教員の充足を図り、動物医学教育の実を挙げるよう努力することを提言する。一方、再編整備の動きには反対の声もある。その一つは、現在、獣医学科を持つ大学の学長、農学部長(獣医学科は農学部の所属)の、自らが管理する大学、学部を縮小するような事態を容認できないとする立場だ。これについては、大学において重視すべきものはそのサイズではなく教育内容であり、自校単独で教育改善が不可能であれば、日本全体の利益を重視する立場から、再編も止むを得ないとする意見もある。

大学教育をダイアモンドに
 ダイアモンドの財産としての価値は最低1カラット。10(テン)パーと呼ばれる10個で1カラット程度の小粒は大きな宝石の飾り石としての使い道しかない。獣医学教育の改革は10パーを集めて1カラットのダイアモンドを作り直そうとするような困難があったが、幸いに関係者の理解を得て少しずつ進展している。しかし教育改革は獣医学だけの問題ではない。少なくとも理科系教育の内容と幅を確保するためには、ある程度の教官の数が必要である。10パーのように小さな学科、学部しかもたない多くの国立大学を、どのようなビジョンを持って国際レベルのダイアモンドに作り変えてゆくのか、20世紀にはついに解決できなかった21世紀の宿題である。

唐木 英明 (からき ひであき 1941年生)
日本学術会議第6部会員、東京大学大学院教授、
全国大学獣医学関係代表者協議会会長
専門:獣医薬理学


2000/1/11

 臨時全国大学獣医学関係代表者協議会記録(案)

日  時  平成13年1月6日(土)午後1:00〜3:10
場  所  東京大学農学部3号館 4階教官会議室
出 者 者
会 長  唐 木 英 明(東京大学) 
副会長  種 池 哲 朗(酪農学園大学)
 (北海道大学)  藤田 正一、梅村 孝司、桑原 幹典、藤永 徹、斉藤 昌之
 (帯広畜産大学)  山田 純三、品川 森一、前田 龍一郎
 (岩手大学)  内藤 善久、谷口 和之、三宅 陽一、安田 準
 (東京大学)  吉川 泰弘、佐々木 伸雄、土井 邦雄
 (東京農工大学)  金子 賢一、加茂前 秀夫、丸尾 幸嗣、谷口 隆秀、佐藤
 俊幸
 (岐阜大学)  小森 成一、平井 克哉、工藤 忠明、北川 均
 (鳥取大学)  関根 純二郎、島田 章則
 (山口大学)  甲斐 一成、徳力 幹彦、林 俊春
 (宮崎大学)  立山 晉
 (鹿児島大学)  岡 達三、岡本 嘉六
 (大阪府立大学)  澤田 勉、畑 文明
 (酪農学園大学)  加藤 清雄
 (北里大学)  小山 弘之、天間 恭介、前原 信敏、小山田 隆
 (麻布大学)  政岡 俊夫
 (日本大学)  酒井 健夫、渡部 敏、野上 貞雄
 (日本獣医畜産大学)  池本 卯典、中條 眞二郎、大石 巖
                                   以上4
8名
 (事務局) 日本獣医畜産大学 深浦 大二郎、宮本 忠
 特別出席      
  日本学術会議獣医学研究連絡委員会前委員長  高 橋  貢

唐木会長が開会を宣し、直ちに本日の議事に入った。

議 題:日本の獣医学教育の全体像について

唐木会長から、本日の協議内容について、(1)「獣医学教育に関する基準」達成のために各大学は努力をしているところであるが、国立獣医系大学改革の鍵は九州大学獣医学部設置に向けての平成14年度概算要求の成否が握っている。本協議会は全面的にこの動きを支援したい。(2)再編後の新体制下において各大学が担う獣医学教育の役割・理念について本協議会の見解を示す。の2点に関し協議したい旨説明があった。

(1)国立獣医系大学の再編について
徳力国公立大学獣医学協議会会長(山口大学)より、本日午前中に開催された「国公立大学獣医学協議会」における協議について次のとおり報告があった。

昨年10月の国公立大学獣医学協議会において決議された、
@ すべての国立大学が再編に参加する。
A 新しい枠組みを模索する。
B 全国で3〜4校を目指して国立獣医系大学を集約する。
C 西2校の現在の先行再編案を全面的に支援する。
 の4項目を次の3項目に変更して、再編を目指すこととした。

@ すべての国立大学の獣医学研究科・獣医学科が再編に参加する。
A 北海道大学、東京大学、九州大学に新しい獣医学研究科・学部の設立を目指す。
B 西2校の現在の先行再編案を全面的に支持する。

以上の報告を受け、種々意見交換があり、本協議会はこの新たな決議を全面的にサポートすることとした。

(2)再編後の獣医学教育体制について
唐木会長から、再編後の国公立獣医系4大学の配置が北海道、東京、大阪、福岡となり、私立5大学は従来どおり北海道、東北、関東に配置されること、また、国公立大学はいずれも大学院重点化大学となることなども踏まえて、新体制下における各大学の教育理念や特性、国公立大学と私立大学の役割分担をどうするのかなど、再編後の日本の獣医学教育の全体像を明らかにすることが求められており、今後、本協議会での早急な検討が必要である旨の説明があった。

引き続き、高橋 貢 前獣医学研究連絡委員会委員長から、国立獣医系大学再編後の獣医学教育について説明があった。

この後、各大学からそれぞれの実情を踏まえ、獣医学教育再編に向けての考え方や対応策についての意見が交換された。その中で、国立大学は再編により設置される3大学すべてが大学院重点化大学となることについては、現在の獣医学教育施設を最大限利用することが求められていること、獣医学教育は総合大学で行うことが望ましいこと、「獣医学教育に関する基準」に示された専門授業科目126単位のうち各大学の特徴となる専修授業科目は30単位程度であり、重点化大学での教育が他の大学とそれほど大きな違いはないこと、大学院進学者を考えると1000名の卒業生中3割程度が研究志向であってもよいことなどの理由で、支障はないことも了承された。

以上のまとめとして、次の事項が確認された。
@国立獣医系大学再編に伴い、わが国の獣医学教育のあり方について検討を行う。
A「獣医学教育に関する基準」の達成に向けて、本協議会から私立大学法人本部(理事長)および大阪府知事に対し要望書を提出する。文案は次回の本協議会にて協議を行う。


2000/1/6

唐木です。

臨時国公立協議会、臨時全国協議会、東6大学懇談会がただ今終了しました。以下のように、非常に重要な決定が行われました。正式な議事録はあとでお知らせしますが、概略は以下のとおりです。

1)臨時国公立協議会
 東6大学の話し合いの結果、再編先を北海道大学と東京大学の2校とすることが決まったとの報告を受けて、前回協議会の決議を次のように改定しました。
 (1)すべての国立大学獣医学研究科・獣医学科が再編に参加する。
 (2)北海道大学、東京大学、九州大学に新しい獣医学研究科・学部の設立を目指す。
 (3)西2校の現在の先行再編案を全面的に支持する。
 また、東6大学懇談会(佐々木会長・東大)を正式な会議と認めました。さらに、広報委員会を設置しました。

2)臨時全国協議会
 以下のことが決まりました。
 前述の国公立協議会決議を全面的に支援する。
 新たな体制になったときの国・公・私立大学の役割分担について外部に対する説明文を作成する。
 公・私立大学の教育改革を支援するための文書を出す。

3)東6大学懇談会
 以下のことが決まりました。
 北海道大学+帯広畜産大学+岩手大学、そして東京大学+東京農工大学+岐阜大学のそれぞれをグループとすることについての可否を、1月中に、各大学において検討する。もし2大学以上の反対があればこの組み合わせを変更するが、反対が1大学以下の場合はこの組み合わせで直ちに協議に入る。
 東6大学懇談会をこれと並行して開催する。

これで東6大学もやっとスタート台に並ぶことができました。残された課題は、各大学において学部、大学の承認を受ける努力をして頂くことです。

以上ご報告します。


2001/1/5 唐木英明


唐木です。

明けましておめでとうございます。

ついに21世紀が始まりました。今年1年で獣医学教育の将来像を確定しなくてはなりません。その意味で2001年は獣医学教育改善運動にとっても画期的な年になるはずです。そして、そのような歴史的運動の実質的な第1歩として、明6日には臨時国公立、全国協議会が開催されます。

私達は研究も休日も犠牲にして教育改善に取り組んできました。もうこれ以上はできないという声もあります。私も同じ気持ちですが、あと1年だけ努力を続けましょ う。

今年も皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。

追伸:
私達の運動が仲間内の論理にならないように、世の中に分かりやすく説明する責任があることを感じてきましたが、その努力はまだ不十分なようです。それは、受験生から届いた、私達の運動についての下記の意見に代表されています
http://jvm2.vm.a.u-tokyo.ac.jp/Kaken/iken-iken.htm#-15
受験生など、一般の人に説明をするページを早急に立ち上げたいと思います。どのような内容にすべきかなどご意見をいただければ幸いです。


2000/12/21 唐木英明

唐木です。

このところ日本学術会議の行事にほとんどの時間をとられていました。1週間かけて英、仏、伊、スイスを訪問し、各国アカデミーと会談し、今週月曜日には各国から会員を招待して国際シンポジウムの総合司会をし、火曜日には招待者を皇居に案内、本日は招待者も参加して学術振興会主催フォーラムがありました。この機会に、会場で町村文部大臣、有馬元文部大臣、井村科学技術会議議員(元京大学長)、岩本全専門教育課長などにお会いして、獣医学教育改善についての協力を要請しまし、今帰ってきました。岩本さんからのアドバイスでは、私の高校の後輩だからといって文部大臣に動いてもらっても、文部省が本気で動かない限りこの問題は解決できません。文部省に反発されないためにも、この問題はトップダウンでは難しく、あくまでボトムアップで各大学の努力で解決せざるを得ないようです。

国際シンポでは21世紀の科学のあり方、倫理、教育など幅広い話題が話し合われましたが、主題とは別に私が面白かったのは同時通訳の難しさでした。会議は総理大臣、文部大臣、官僚などが参加し、同時通訳が行われましたが、日本語を英語に訳すのを聞いていると、通訳は実に苦労をしていました。それは日本語のあいまいさによるもので、発言者の真意を推し量って翻訳しないと、直訳では英語にならない、換言すると、私たちは実にあいまいな日本語を話していることです。

そういいながら、私自身もあいまいな日本語を書いていることを鳥取大学からご指摘いただきました。「まだ方針が明らかでない鳥取大学」という私の表現は、もちろん、「大学、学部」を指すもので、「学科」を指すものではありませんが、あいまいな表現でした。島田先生のご指摘に感謝します。

西の4大学では少なくとも学部レベルでこの問題が話し合われています。東はまだ6学科間の合意もできていなかったのですが、やっとその可能性が見えてきました。西の学部長間では「東が動かないのに西が動く理由がない」といった言動が一部に見られると聞いていますが、東が大きく動いて、西の学部長にインパクトがあることを願っています。


2000/12/20 島田章則

鳥取大学農学部獣医学科再編事務局より送信いたします。

獣医学教育改善活動の一環として、全国大学獣医学関係代表者協議会唐木会長より「臨時協議会開催」「岩手大学の決断」が寄せられました。獣医学教育の全国的青写真 (ビジョン)確立にご尽力いただいております会長をはじめ全国の諸先生に感謝いたします。

「岩手大学の決断」の中で、「まだ方針が明らかでない鳥取大学」(東6大学の方針決定が九大案の推進に必須であることはすでに書きましたが,同時に,まだ方針が明らかでない鳥取大学にも大きなインパクトになることを期待しています)との記述がありましたので、改めて確認・説明させていただきます。

鳥取大学農学部獣医学科の方針はすでに決まっており、再編に向けて学科として活動を続けています(残念ながら農学部から承認が得られておりませんが)。

1)獣医学科再編活動当初(平成9年4月、国公立大学獣医学協議会での決定)から再編(西日本4大学)案を学科で決議しています。
2)獣医再編の理解を求めての農学部内での活動(概略)
a. 毎月の教授会での再編関連情報報告(本年1月より)
b. 農学部将来計画委員会での議題としての審議(昨年4月〜現在)
c. 農学部教官集会開催(H12.11.20)、農学部全教官への個別訪問による説明・要請(H12.11.21-現在)
d. 大学改革の啓蒙(獣医再編の理解):H11年度学長裁量経費によるフォーラム開催
e. 九大への再編(2校先行案)への参加の承認の要請(H12.12.8将来計画委員会)

再編が社会で進行する中で、農学部内での獣医再編への理解はこれまでよりも得られつつありますが、独立行政法人化を目前に控えマイナス概算を認めるところまでは達 しておりません。本事項(獣医再編)は、一学部で審議する(下から審議する)こと ではなく、文部省の指導により上から行われるべきものだとの強い意見があります(鳥取大農学部)。獣医再編は、西日本のごく一部の活動であり、全国的には具体的な動きは無い、そのような状況で承認はできないという意見も聞かれます(鳥取大農学部)。また、全国農学部長会議での「基本姿勢」(H12.10.17)も、鳥取大農学部長は次のように受けとめています(H12.12.18「今後の抱負」)

「獣医学教育について
 全国の獣医学科(学部)を擁する国立大学農学部長会議において合意した事項を念頭に、獣医学教育の充実に向けて自助努力を最大の目標としつつ、再編を含むいくつかの選択肢についても将来計画委員会において検討を継続すべきでしょう。再編を考慮するにあたっては、合意事項である既存獣医学教育研究施設の有効利用、地域性の配慮などが不可欠とえます。」

一地方大学の現状(実状)をご理解いただけましたら幸いに存じます。

「岐阜,岩手の2大学の方向が決定した」「まだ方針が明らかでない鳥取大学」とありますが、学部の承認が得られているかどうかの違いと理解してよいのでしょうか?


2000/12/20 唐木英明

12月16日に開催された東6大学の集まりでの決定を受けて,岩手大学が以下のよう な重大な提案をされましたので、お知らせします。

*******************

<平成12年12月18日岩手大学獣医学科学科会議にて了承>

岩手大学獣医学科からの
提案 1.東六大学は、二大学に新しく再編し、獣医学部を設立する。
   2.その新構想については、各大学対等の立場に立って構想委員会(仮称)を設けて そこにおいて成案を作成する。
    3.獣医学教育改善臨時委員会(藤田委員会)は、日本における獣医学教育の再編整備案(配置などを含めた)を
      農学系学部長会議に提案し、文部省内に調査会設置を強 く要請する。

*******************  

一言私見を付け加えさせていただきます。  

東北大案を最も熱心に推進されていた岩手大学ですが,これ以上東北大学に固執す ると教育改善運動全体の足を引っ張ることになることを理解されて,短時間で重大な決意をされたものであり,内藤先生はじめ岩手大学の先生方に心から敬意を表しま す。  

岐阜大学は,東北大との話し合いの結果を踏まえて,すでに東北大案の実現性は薄 いとの態度を表明しておられます。岐阜,岩手の2大学の方向が決定したことで,獣 医学の資源を使って東北大に獣医学部を設置する可能性は消えました。今回,東6大学の情勢が大きく動き出したのは,前回の岐阜大学の決断が大きな要素であり,小森先生,平井先生はじめ岐阜大学の先生方の先見の明に心から敬意を表します。  

帯広畜産大学は,学長方針で単独改革案を作成していますが,この案では基準達成 が困難であるとともに,私の勝手な解釈ですが,必ずしもこれが獣医学科の先生方が 望んでいる方向とは考えられず,その行方は予断を許さないところです。  

北大と東大は,新しい獣医学部を最初から作り直す覚悟で他大学と話し合う決意を表明されていますので,岩手大学の提案2の実施に問題はないと考えています。  

残る農工大学も今週末くらいには方針決定がなされるものとお待ちしています。

東6大学の方針決定が九大案の推進に必須であることはすでに書きましたが,同時 に,まだ方針が明らかでない鳥取大学にも大きなインパクトになることを期待してい ます。  

私達は1枚岩になることが求められています。1大学でも決定が遅れることが,教 育改善全体の足を引っ張ります。16日の会議での徳力国公立会長の発言のように,こ れからが長い道のりです。獣医学内部の結束,再編参加について学部の了承,国立大学農学部長会議の了承,大学の了承,概算要求,文部省,大蔵省(その頃は名前が変 わっていますね)の了承,地域の了承などを考えると,独法化の前にすべきことは山 積しています。  

1月6日に,長い道のりに向かって団結の第1歩を踏み出せるように願っています。


2000/12/20 唐木英明

唐木です。
1月6日の会議日程についてご質問がありましたので再確認します。

2001年1月6日(土曜日)
午前10時−12時 国公立協議会
   (東6大学の結論を得て,国公立の青写真について協議を行う。詳細は国公立 事務局から通知を発送の予定)
午後1時−3時 全国協議会
   (国公立の結論を得て,私立大学を含む全国の青写真について協議を行う。協 議の内容はお知らせしたとおり)

国公立協議会の開催通知は別途お送りします。

前回お送りしましたお知らせの訂正が一つあります。

協議会会場を東京大学農学部7号館と書きましたが,都合で3号館4階会議室に変更し ます。

以上よろしくお願いします。


2000/12/19 山田純三

唐木先生へ  6日1時から3時に開催とのことですが、先の会議のときは午後は全国の私立を含 めた会議を開催されるような事をお聞きした記憶しているのですが、それはキャンセ ルですね。確認の為にご返事をお待ちしております。 山田純三


2000/12/19 唐木英明

唐木です。

すでにご存知のことと思いますが,12月16日に東6大学の集まりが開催されまし た。その目的は獣医学教育の改善を成功させること,そのために九大への再編を支援 することです。もし九大案がだめになれば,獣医学教育の改善運動自体が暗礁に乗り 上げます。それでは,どうしたら九大案を支援できるのか?それは,獣医学教育全体 の将来像を明らかにすることです。特に,東6大学をどうするのか,現在のところ全 く先が見えません。しかし、これを早急に明確な形で国立大学農学部長会議および文 部省に提示することが求められています。

そのような中で開催された東6大学の会議では,前回に引き続き,岐阜大学がかな り明快な形で東北大案実施が困難な状況であることを明らかにしました。岩手大学は 東北大案実施にこれまで最も熱心でしたが,岐阜大が後退した以上,全体の流れを止 めないためにはこれ以上の東北大の説得に時間をかける余裕はないという状況に理解 を示される発言がありました。北大,東大は,4大学と真摯な話し合いを始める覚悟 を披瀝しました。いずれにしろ,各大学は,「もうタイムリミットを過ぎている」現 状を充分に理解し,各大学において審議し,至急結果を出すよう努力することに合意 しました。

また,時間的余裕がないために,東6大学の検討結果にかかわらず,1月6日に国公 立および全国協議会を開催し,獣医学教育の将来像について検討することを,徳力国 公立協議会長と決めさせていただきました。

全国協議会における検討事項は以下のようなものと考えています。

 1)国立大学をどのような形に再編するのか?新しくできる各大学の理念,役割は 何か?大学院大学への再編の意味,地域との関係などを明らかにする。
 2)公立大学の役割は何か?国立大学,私立大学との違いなど。
 3)私立大学の役割は何か?国公立大学との違い,最も多くの卒業生を出す組織と しての教育の理念,各大学の違いなど。
 4)各大学における大学院教育をどうするのか?とくに,連大廃止後の大学院をど のようにするのか?
 以上を合わせると,わが国の獣医学教育の青写真が明確になると思います。

 各大学は,時間がほとんどありませんが,できればこのような問題についてあらか じめお考えおきいただきたく,お願い申し上げます。

 なお、各大学にお送りしました開催通知を採録します。もし,学科主任がご出張な どでお留守の大学がありましたら,代理の先生にご連絡いただきたくお願い申し上げ ます。

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     平成12年12月18日

獣医学科長殿

   全国大学獣医学関係代表者協議会
   会 長  唐木 英明

全国大学獣医学関係代表者協議会(臨時)開催のお知らせ

下記の要領で臨時協議会を開催します。正月早々ではありますが出席賜りたくお願 い申し上げます。

   記

1.日時:2001年1月6日(土曜日)午後1時-3時
2.場所:東京大学農学部7号館
3.議題:日本の獣医学教育の全体像について

【開催理由】

九州大学において獣医学部設置のための委員会が発足し、平成14年度概算を目指し て作業を開始しています。

この点に関連して、文部省および国立大学農学部長会議から、国立大学獣医学科再 編後の、国公私立大学を含む、日本の獣医学教育の全体像を明らかにすることが求め
られています。この点について緊急に協議を行いたく、臨時協議会を開催します。

なお、同日午前中に国公立大学獣医学協議会も開催されます。

会場準備等の都合がありますので、12月25日までに出席者名をFAX (0422-33-2094)またはEメール(fukaura@nvau.ac.jp)にて事務局(日本獣医畜産
大学)までお知らせください。


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