研究紹介

D型インフルエンザウイルス

インフルエンザウイルスは、粒子を構成するタンパク質性状からA型からD型に分類されます。 人の季節性インフルエンザはA型とB型ウイルスにより、鳥インフルエンザあるいは馬や豚、犬インフルエンザはA型ウイルスによりひき起こされます。 C型ウイルスは人の幼児に感染し呼吸器症状を起こす場合があります。 2011年に、米国の呼吸器症状の豚からC型ウイルスに類似したインフルエンザウイルスが初めて分離され、 このウイルスは牛の重要疾患である呼吸器病症候群に関与している可能性が示されました。 その後、フランスや中国、イタリアなどにおいても類似のC型様ウイルスが検出されています。 ウイルスの抗原性や遺伝子の詳細な解析結果から、この家畜のウイルスは新しくD型インフルエンザウイルスとして国際ウイルス命名委員会により承認されました。 私たちのグループは、D型インフルエンザウイルスがわが国の牛社会にも侵淫していることを初めて明らかにしました。 呼吸器疾患の牛から検出したウイルス遺伝子の解析により、D型インフルエンザウイルスはかなり昔に国内に侵入した後、独自に進化しながら国内に拡がったものと推測されました。 本研究成果は、D型インフルエンザが牛の生産性の障害となる牛呼吸器病症候群の一因であることを示すとともに、今後のワクチン開発等により牛の呼吸器病が制御できる可能性を示しています。

農学部の成果発表ホームページで詳しく解説してあります。

日本農業新聞にも掲載されました(2016年8月)。
現在は国内でのサーベイランスを進めるとともに、ウイルス学的アプローチからD型インフルエンザウイルスの性状を解析しています。

コウモリコロナウイルス

コウモリ由来の新型ベータコロナウイルスはわずか20年で3回(SARS、MERS、COVID-19)のアウトブレイクを起こしている。これらのアウトブレイクは大きな社会問題となり、とくに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は未だかつてないほどの社会的・経済的打撃を与えています。これらベータコロナウイルス感染症であるSARSとCOVID-19はそれぞれベータコロナウイルス属サルベコウイルス亜属のSARS-CoVおよび SARS-CoV-2によって、またMERSはメルベコウイルス亜属のMERS-CoVによって引き起こされます。SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVは、近縁のウイルスがコウモリから複数検出されていることから、コウモリがこれらコロナウイルスの自然宿主であると考えられています。私たちは日本に生息するキクガシラコウモリ属の一種であるコキクガシラコウモリからSARS-CoV-2に遺伝的に近縁なウイルスを検出しました。このウイルスの細胞への吸着・侵入過程を解析したところ、このウイルスはヒトには感染しないと考えられました。またMERS-CoVに近縁なウイルスも日本のコウモリから検出しています。今後は、これらのコウモリ由来のコロナウイルスがヒトに感染するように変異する可能性を考察するために、ウイルスの日本での詳しい分布状況や中間宿主となりうるコウモリ以外の動物への感染性などについてより詳細に解析する予定です。

農学部の成果発表ホームページで詳しく解説してあります。

NHK、

新聞各紙、

Nature誌でもニュースに取り上げられました(2020年11月)。

鳥インフルエンザウイルス

H5N1ウイルスなど高病原性ウイルスによる新たなパンデミックの発生が、ここ15年以上危惧されて来ましたが、2013 年に起きた中国でのH7N9低病原性ウイルスの人への感染拡大は、新たな危機感を人類に与えました。それは、全ての低病原性鳥ウイルスにパンデミックを引き起こす潜在力があるということです。 地球上の至るところを飛んでいる低病原性鳥ウイルス(渡り鳥と共存)が、場合によってはパンデミックウイルスに変貌する可能性があるということです。 私たちは, 様々なHA亜型の低病原性鳥ウイルスを、哺乳細胞やマウスに馴化させることで起きる変異点を同定し、その可能性の検証を進めています。 またH5N1ウイルスやH7N9ウイルスの状況を見てもわかるように、次にどういったウイルスが出現するのか予想困難な変異力・感染力の高いインフルエンザの制御には、何らかのブレイクスルーが必要です。 この命題のもと、感染防御能をもつ新しい鳥用インフルエンザワクチンの開発を目指し、研究を進めています。 具体的には、リバースジェネティクス技術を用い、制限増殖型ウイルスをベースとして、ワクチン効果を増強させる工夫をしたワクチンウイルスの構築を目指しています。

ブニヤウイルス

アカバネ病ウイルスおよびシュマーレンベルグウイルスは、共に妊娠している牛、羊、ヤギなどに感染すると胎仔の脳など中枢神経系で増殖し異常産を引き起こします。 このアカバネ病ウイルスおよびシュマーレンベルグウイルスは牛から昆虫まで様々な細胞に感染することが可能ですが、細胞侵入のために必要な細胞の分子はよくわかっていませんでしたが、 私たちのグループは、ゲノム編集技術CRISPR /Cas9システムを用いてヘパラン硫酸ノックアウト細胞を作製し、ヘパラン硫酸が細胞におけるウイルス吸着・感染を促進するために重要な細胞接着因子であることを明らかにしました。 また、ヘパラン硫酸以外にも感染に重要な細胞因子があると考えられており、現在調べています。

これまでの成果は農学部成果発表ホームページで詳しく解説してあります。

また公衆衛生学的に重要なクリミア・コンゴ出血熱ウイルスなど人獣共通感染症ウイルスの基礎研究、診断法の開発などを、国立感染症研究所・下島昌幸室長(当教室出身)らのグループと共同で進めています。

腫瘍溶解性ウイルスの開発

ウイルス療法は、がん細胞だけを殺して正常細胞は傷つけないように工夫したウイルスを使ってがんを治す画期的な治療法です。 私たちは、犬のガンを治療する組換えイヌアデノウイルスの開発を進めています。

コウモリが持つ新規ウイルスの探索

コウモリはSARSコロナウイルスやMERSコロナウイルス、エボラウイルスなど人間に重篤な病気を引き起こすウイルスの自然宿主であると考えられており、今後も人に脅威となるウイルスを運んでくることが危惧されています。 私たちのグループは日本各地でコウモリの検体を集め、そこから様々なウイルスの分離・検出をしています。またそれらのウイルスの性状を解析しています。

修士・博士課程大学院生募集中!!

当研究室では修士および博士課程の学生を募集しています。当方は獣医学専攻だけでなく応用動物科学専攻も兼担(村上)しているため、修士課程の学生も受け入れることが出来ます。出身学部等は問いません。ウイルスの研究に興味ある方は是非連絡ください。

入試に関しては農学生命科学研究科HPをチェックしてください。

連絡先

東京大学農学部3号館2階209号室
(弥生キャンパス)
TEL: 03(5841)5398
E-mail: ahorimo{ATMARK}mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
shin-murakami{ATMARK}g.ecc.u-tokyo.ac.jp

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