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 生殖細胞は卵・精子形成を通し、遺伝情報を次世代に伝える唯一の細胞です。生殖細胞は卵巣内にいるか、または精巣内にいるかで、卵または精子への分化が運命づけられます。当研究室では、哺乳類における減数分裂の性差や精子形成メカニズムを、細胞・組織・個体レベルで研究をしています。


卵巣内・精巣内の生殖細胞の減数分裂 開始
Biomolecules 2019; 9: 775.より改変)

周期的な減数分裂開始と精子形成

 卵巣内の全ての生殖細胞は胎仔期に減数分裂を開始し、その後は第一減数分裂前期(GV期)で停止します。一方、精巣内の生殖細胞は胎仔期には減数分裂を開始せず、体細胞分裂のG0/G1期で停止してしまいます。

 思春期になると、精巣内では減数分裂開始が周期的に誘導され、ほぼ生涯を通して精子が生産されます。精巣内の減数分裂や分化の調節機構は、組織の恒常性や個体の妊よう性に重要です。

 当研究室では、精巣内の未分化な精原細胞から減数分裂をおこす精母細胞への分化調節や精子形成を研究し、生殖細胞の性差や種差の解明などを行っています。
 


精巣内への細胞移植

 哺乳類では同種であれば、精巣内に別の個体の生殖細胞を移植すると、精子形成がおこり、別の個体の精子をつくることが可能です。

 しかし、異種(特に遠縁種)の生殖細胞を移植すると、精子形成は正常に完了することができなくなります。

 我々は同種・異種細胞の移植による精巣内の細胞同士の秩序や生体適合性を研究することで、基礎的な知見を得るとともに生殖工学技術の開発などを行っています。


幹細胞(青)や減数分裂を開始した精母細胞(緑)
を含む精巣内の細胞同士の秩序



受精直前の精子の形態
Commun. Biol. 2024; 7: 16.より改変)


加齢による精子形成の機能低下メカニズムの解明

 成体の精巣内では減数分裂開始が周期的に誘導され、連続的に精子が生産されますが、近年、加齢により精子機能が低下することが明らかになってきました。

 加齢による男性不妊や家畜の繁殖能力の低下は、社会的にも重要な課題です。

 当研究室では、加齢による精巣内の組織恒常性の破綻や精子形成の異常について遺伝子レベルで研究を行っています。
 


精子形成における(幹細胞から精子までの)細胞秩序