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「授業をどうする」東海大学出版会 無料配布のお知らせ
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「アメリカの医学教育」日本評論社 無料配布のお知らせ  はここ! 終了しました!

PBLに関する記事は別途項目を立て独立させました(インデクスページ参照)。


このページは、「授業をどうする!」 カリフォルニア大学バークレー校の授業改善のためのアイデア集 B.G. Davis and R. Wilson著 香取草之助監訳 (東海大学出版会)をお読みいただいた後の感想をもとに、今後獣医学教育をどの様に実践していくかを皆で議論するためのものです。

また、「アメリカの医学教育」(正と続)赤津晴子著(日本評論社」もお読みいただき、感想をお寄せ頂きたいと思います。

もちろん、それ以外の様々な観点からも、多くの意見をお寄せいただきたいと思います。

「授業をどうする」、「アメリカの医学教育」を受領された方へのお願い:
この本は文部省科学研究費を財源として各先生に配付しているものです。配付の目的はあくまで教育改善研究のためであり、単なる啓発のためではありません。お読みになった後、先生の専門分野ではどの様な授業改革が可能か、あるいは実際にどの様な改革を実行されているかなど、必ずご意見・ご感想などをお寄せ下さい。


2000/6/14

先般、頂戴をしました 『授業をどうする』の読後感想等を お伝えいたします。

文責 大分医科大学 中村哲夫 (ドイツ語担当)

(1)カリキュラム改革委員長(心理学 教授 上野 徳美)の感想:

1)大変 面白かった。
2)具体的で、自分の授業にも 即改善に繋がる可能性のあるヒントが多かった。
3)共感できる分が多い。 それも、机上において、ヒント集として今後も参照したい。
4)自分の気がついていない観点も 教えられて、合点をした処も少なくない。

と感想を申しております。

(2)同 カリキュラム委員 (化学 教授 辰本 英伸)は、いくつか自分が、長年やってきたことが、いくつか 「推奨」されていて、うれしい気がした。

(3) 以下の分は、中村 (カリキュラム委員 ドイツ語 助教授)の分です。

1)良いアイデアも確かに多いのですが、これらの実行を考えるとき、2つの障害がそれを邪魔します。   
1−1)日本の大学の教官は、やたら「多忙」であります。 組織上そうなっているでしょうか? 論文も書け、会議にも出よ、良い教育もせよ、一般常識も忘れるな、かつ、遠距離を通勤する方の多さ。   
1-2) 大学での 対象クラスが大きいこと。(大学に限らず、G7で30人以上の生徒を1クラス単位で纏めているのは、日本のみ。教育予算は、削られっぱなし。それで、授業が成り立たなくなったり、教師の指導力が低下しただの言われても、それは無理であろう)。   

2)学生サイドの心構えの相違:  獣医学部、医学部等は、(おそらく) 将来の自分の像がある程度確定しているので、本来は、勉強に対する自覚・動機がついているはずです。にも拘わらず、私共でも、「これでも大学生か?」、「君は、運動をしに大学へ入ったのか?」 と問たい学生も散見します。原因の一端には、周囲と切り離された(家庭とも、友人達とも、自然とも)環境で、一心不乱、受験・受験で育てられた子供達は、真の自然界・外界・動物・人間等に対する対応が取れていない。 花の美しさに感動できぬ子供が多すぎる。世の両親達も、子供に機材や塾通いの費用を惜しむことは無くても、子供との交流・子供と接する時間を節約しすぎた。更に、論理的な思考が出来ぬ学生多し。日本語が十分使えぬ子供多し。

3)双方に関し:  一般的に、教官と学生との交流(意見の交流、授業での交流)等が疎であろう。受講者の顔と名前が一致しないと、駄目でしょう。学生の思考形態が不明だと、どう説明して良いかも不明なので、判らない処をどんどんアピールしてもらう。それも、そう簡単ではなく、「下手な発言・質問をしても一向に、恥ではない、気にならない雰囲気」を醸し出す必要があります。

4)即物的に この『授業をどうする』について: 

私の授業では、上に述べたこと、乃至、この書物に含まれているアイデア等と同じ方向での考え方にたって、さまざまな試みをしております。 最大のネックは、時間数のすくなさ、学生の1クラスあたりの多さ(45−50名、昔は、100名を語学のクラスに押し付けられた)、必修などという指定のため、動機が不充分な学生と、(先方も、こちらも)いやいやながら(?)付き合うことが多い、また、組成が複雑で、受講者のレベルに相当な差があり、対象とすべきレベルを単一化できにくい、本来は、能力別クラスを編成すべきでしょう。

あとは、私は、必ず、全受講者の名前と顔を、授業開始後、2週間以内に覚えます。語学の授業では、Woher kommen Sie , Herr X ? と、相手の名前を知らぬと授業にならないと称して、最初の授業の際、学生に「自分をアピールする個人票」(A−6,自分の気にいった写真を添付のこと)を出してもらうよう依頼します。最低記載すべき内容は、学籍番号、氏名、アピールしたいことなんでも。

これを、必死に1週間で覚えます。次の授業では、同上のごとく、話す際に、氏名を言います。要は、学生一人が教師1人と対峙している関係を確立します。

大勢の授業では、指名されていない学生は、ともすれば、緊張を解き、我関せずという顔をします。私は、たとえば、Welche Stadt kennen Sie ? という質問をし、後から答える者が、既に挙げられた都市名をいうのは、前の発表者のいうことを、注意して聞かなかったからだそして、これは、相互に不幸なことだから、極力注意しましょう、といい、更に、もし、同じ答えを云ってしまったら、その方は、一曲サービスをしましょう、と申し渡しています。(歌なら 何でも良い、歌でなくとも、良い。)

要は、自分の発言が自分にとって大切なように、他人の 発言も、十分 傾聴しようという 態勢の確立を 狙っています。

あと、受講者が当番で、授業内容を纏めて、1年生は 日本語で、2年生以上はドイツ語で、ドイツ語の広場 という本学のHPの一隅にある、ドイツ語のページに書きこんでもらっています。 

教官の仕事は、それを 必ずチェックし、誤解・不充分な理解が無いか、どこ が弱かったかを見て、次の授業に活用します。 一方、欠席してしまった学生などは、これを見ると、 最低の情報が得られます。

2000年度系入学生に対しては、更に次回の授業の 予定を、2・3日前には、アップロードします。 (もちろん シラバス等で、概要は書きますが、 NHKのドイツ語放送を援用しつつ授業を進めて おり、更に、学生の疑問・進度等により、その都度、 前回の授業の反省のもと、これを出しますので)。 期末試験の際には、それを見ながら、質問を考えます。

要は、「受験勉強で、勉強がいやだ」と いう学生に、多元的モノの見方をしてもらうように、 多くの刺激を与え、それに対する学生からのフィード バックを見て、それに応えてやること、願わくば、 「学問の真の面白さ」に気づき、自分が楽しくて 、勉強がたのしくて、という状態を経験させてやる 手助けをする、ということに、(特に一般教養では) 尽きるのではないでしょうか。

猶、本学のドイツ語の広場 は、http://www.oita-med.ac.jp/ から 学生のページへ行って、その最下段にある 「ドイツ語の 広場」をクリックしてくださり、掲示板を除くと、 上記 授業関連のそれと、Q&Aのページがあります。 外部の方も、書きこんで良いので、よろしかったら、 ご覧ください。 以上、取り急ぎ、恵贈を受けました『授業をどうする』に 対して、私どもの意見を取りまとめ、お伝えしました。 ありがとうございました。


2000/3/21 東京農工大学農学部獣医学科家畜解剖学教室 柴田 秀史

この本には,一部はすでに自分なりに実施していることが書かれてい ましたが,それ以外は自分が行なっている講義にはあまりあてはまら ない部分が多いように思いました.

私は獣医学科の2年次学生に解剖学の講義を行なっています.2年生 ですから,学生は解剖学的なさまざまな概念はもとより,個々の解剖 学名にもほとんど親しんでいない段階です.解剖学という科目の性格 上,どうしても覚えなければならない概念や用語があります.できる かぎり覚えなければならない項目を少なくなるようにはしてみても, ある程度はしかたがないです.そこで講義は教官から学生への一方向 性の知識伝達型になってしまいます.しかも,臨床との関係や国家試 験のことを考えますと,狭い範囲のトピックを深く解説してディスカ ッションにもっていくというやりかたではなく,どうしても広く浅く まんべんなくという教え方になってしまいます.

しかし,たとえ一方向の講義ではあっても,私なりに工夫してみて, 比較的効果があったこともあります.「授業をどうする!」のMinute Paperに少し似ていますが,私は昨年度から,出席をとるのに配る出 席カードに,学籍番号,氏名の他に,「質問あるいはその他一言」を 書く欄をもうけました.講義のあとカードを回収すると,1/3くらい の学生がなんらかのコメントを書いてきます.「次回から頑張ります」 とか「今日はうちのイヌが元気がない」というようなものや,「○○ ○のところがわからなかった」,「話すのが早すぎる」,「黒板をす ぐには消さないで」というものがあります.これらのコメントは次回 の講義の冒頭で,コメントを書いた学生の氏名は明かさずに,すべて 答えるようにしています(「試験はどこがでますか?」にはもちろん 答えませんが).学生がわかりにくかったところがこちらにわかり, しかも,こちらの講義のやり方のあまり良くなかった点を改善できる きっかけにもなり,とてもいいです.

また,講義自体は,おおざっぱではありますがシラバスを配り,板書 したり,プリントを配ったり,スライドを使ったり,模型や実物標本 を使って説明したりしています.講義室内がすこしホルマリン臭くな るのが欠点ですが,実物標本は毎年比較的好評のようです.

現在行なっている講義のやり方にはまだまだ改善の余地があるとは思 いますが,関根先生や山本先生のコメントにもありますように,これ 以上改善するのは,非常に大変です.講義以外に実習もありますし, 来年度からはじまる新カリキュラムでは共通教育科目の講義やゼミが 増えます.研究面でも,サポートしてくれる職員は皆無であるにもか かわらず,いい研究をして一流の国際誌に論文を発表することが当然 とされてきています.管理運営的な仕事や,研究室内での雑務も相当 あります.本当に「授業(と研究)をするためのサポートをどうする !」ですね.


2000/1/9 麻布大学獣医学部解剖学第二研究室 山本雅子

関根先生がおっしゃっていたとおり、しなくてはいけないことが多々あるのにも関わらず、 サポートは皆無であることが悲しい事実です。私立大学は脅威的な人数の学生を相手に講義し、実習に至っては数班に分けて実施しているのが現状です(麻布大学だけかも知れませんが)。 また、卒論の学生も多数在室しており、その指導だけでも大変なものです。 きちんとした実験をさせるためには、手とり脚とりでなくては事はほとんど進みません。 従いまして、論文をたくさん書くためには、前述のどれかを手抜きするしかないことという理屈になります。

私は発生学および組織学を講義・実習いたしております。


特に発生学について:
講義は、教科書があり、それを元にして板書しながら、動物の体ができあがっていく段階を教えております。従いまして、完全に1方向性の講義になります。現在の流行は完全なる資料を揃えて学生に配布し、それを元に講義を行うという方法のようですが、私はときどきプリントを作って配布するくらいです。発生学を講義するのに一番困難なことは立体的な事象を黒板(教科書あるいは配布するプリントも)の上で説明しなくてはいけないということです。従いまして、コンピュータグラフィックを用いての教材があったらというのが一番の願いです。勿論自分で作成すればよいのでしょうが、多大なる労力と時間と資金が必要であるのは言うまでもありません。昨年、アメリカで出版された人間の発生学の本の出版元が、HP上で、その本に掲載されております多数の図のうち、ほんの一部ではありますが、時間の経過と共に身体の各部ができあがっていくのをアニメーションで表現しております。非常に興味深いものであり、それをそのまま講義で使いたいくらいですが、講義室にはそのための道具建てがありません。

等などいろいろ書き連ねましたが、「授業をどうする!」という本よりは、 「授業をするためのサポートをどうする!」というレベルの話もあっても良いのではないでしょうか。 しかしながら、結局は資金(私学では授業料と入学定員の関係)にいきついてしますのでしょうが。


1999/12/20 鳥取大学農学部獣医学科畜産学教室  関根 純二郎

 配布された標記の本を読ませてもらいました。以下に、感想を述べます。

 UCバークレー校の先生方の授業に対する取り組みの大部分は、既に小生が実施して いるもので特に、目新しいものとは言えないというのが全体的な感想です。
 但し、いくつかの点で、実施することが必要であると考えますが、時間的な余裕が 全くないのが現状です。たとえば、授業を実施する前にかがみの前でその練習をする とか、毎回授業の前にハンドアウトを2回読み返し、授業実施に必要なメモカードを作成することは重要であるとは思いますが、1週間に6コマの授業(50分ではなく 90分)をこなさなければならない場合では、現在でも、ハンドアウトの作成だけで 土、日は完全につぶれてしまいます。したがって、授業の中で、ミスプリント、記述 の間違い等を発見したり、学生から指摘を受けたりしています。更に、日本の大学の 場合、授業のほかに各種の管理的仕事をやらされますが、それらの調査および書類作成等に費やす時間がかなりあります。しかし、日本ではこれらの仕事をサポートしてくれる秘書官は全く考慮されていません。したがって、教官が自分でやらなければな りません。また、実験等を実施する場合においても、プロトコールを作成して指示す るだけでは物事がほとんど動きません。したがって、実際に動物を飼養している現場 に出て行くことが必要となります。米国においても、教官が実験現場に出て行くこと はあるものの、ほとんどが、指示どうりに技官がサンプルを取っているかとか、飼料 をきちんと給与しているかとかいった確認のためのみの場合がほとんどです。我が国 では、サポートスタッフの仕事まで教官にやらせて、その上、世界の一流雑誌に研究論文を発表せよ、授業のやり方も工夫せよといわれると、何ともやりきれない気分に なります。おまけに、学生のほうにも問題があります。たとえば、再三この語は長い ので略号を使用するのでしっかり覚えておくようにと指示してから略号を使うと、そ れはどんな意味でしょうとの質問を受ける羽目になります。
 細かいことをならべれば切りがありませんが、要は、教官自身が、常に自覚を持っ て物事に対処するようにならなければ、いくら制度をいじっても解決にはならないと 思います。
 ちょっと過激かもしれませんが、更に言えば、教官の自覚を促すには、降格、解雇 もあり得る事態がなければ多分不可能だと思います。 以上、勝手な感想で申し訳ありません。


1999/10/19 酪農学園大学獣医学部寄生虫学教室 助教授 浅川満彦 (野生動物学、生物多様性論 担当)

 この本は、授業(主に講義)改善のためのアイデア集であり、分かり易い授業展 開のための技術が類例とともに紹介されている本で、講義担当者にとっては参考に なると思う。特に、私立大学を卒業し、同じ私大に勤務する私にとって、授業が商品であった ことに、あらためて気づかされるきっかけとなった。  
  しかし、あくまでも技術面のみであり、理念や哲学的な部分はなく、論議の起爆 剤となるには少し役不足ではないだろうか。次回は(もし、このような形で意見を徴集されるのなら)、現在の大学教育問題を深く考えさせるような課題の本をネタ にして欲しいと希望する。


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