本院で行っている、もしくは行う予定の臨床試験についてです。臨床試験とは、安全で有効となりうることが期待される医薬品もしくは医療機器を用いた治療です。 飼い主様への十分な説明と、飼い主様の同意の下で実施します。現在実施している臨床試験は以下の通りです。
2016年、当院にて実施した臨床試験*1を受けた猫のご家族からのご指摘により、この臨床試験が不適切に実施されていたことが判明しました。
このことを反省し、再発防止のために新たな規約を制定することにしました。
臨床試験は動物たちに新しい治療法などを試みるもので、有効性が期待される反面、
効果がないことや健康上のリスクを伴うことがあります。臨床試験への参加には通常条件がありますが、
実施する際には動物やご家族さまの権利と安全への配慮を最優先に考える必要があります。
また、不利益やリスクを十分に説明し、ご家族さまの自由意志で試験にご参加いただくことが原則です。
従来の治療法では助けられなかった動物たちに、救いの手となる診断法や治療法をみつけられるように今後とも努力してまいります。
*1) 2016年に当院で実施した慢性腎臓病のネコを対象にした獣医師主導の臨床試験(治験として参加者を募集)で重大な過ちがありました。
ご参加いただいた方には、大変ご心痛、ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
当該臨床試験は終了しており、同じ内容で試験を受けた方、有害事象がみられた方にはすでに連絡済みですが、
臨床試験を受けられた方でご心配な方はメールでご連絡ください。
[連絡先] clinical_trial [アット] vmc.a.u-tokyo.ac.jp
※メールを送信する場合には上記アドレスの[アット]の部分を@にご変更ください。
本臨床試験は目標症例数に達したため、2021年12月1日をもって終了することとなりました。
ご参加くださった飼い主さま、ご紹介いただいた先生方、誠にありがとうございました。
臨床試験は終了となりますが、新薬は実費であれば使用できますので、移行上皮癌・前立腺癌でお困りの場合は是非ご相談ください。
詳細につきましては担当獣医師のホームページをご確認ください。
犬の膀胱・尿道移行上皮癌および前立腺癌は、尿路に発生する悪性腫瘍です。
外科手術により癌組織をすべて摘出することができれば根治となりますが、
犬の移行上皮癌や前立腺癌は悪性度が高く、手術を行っても再発や転移を起こしてしまうことがあります。
また既に転移のある症例に対して、根治目的の手術は不適応となります。
そのため内科療法が重要となりますが、現在のところ有効な薬剤は確立されていません。
これまでの研究により、犬の移行上皮癌や前立腺の発症・悪化に関わるメカニズムを解析したところ、
治療のターゲットとなりうる分子を発見しました。そこで現在、その分子に特異的に作用する薬剤を用いて、
臨床試験を実施しています。この臨床試験は、2017年7月に東京大学附属動物医療センター治験委員会で承認を受けました。
※研究の詳細や費用については当センターのお問い合わせ専用ダイアル(03-5841-5420)にお問い合わせください。
文責:東京大学附属動物医療センター第1内科 前田真吾(獣医臨床病理学研究室)
犬の膀胱癌は犬において比較的、高い頻度で発生する予後の悪い腫瘍の一つです。当センターにおける臨床研究では、
膀胱尿道全摘出術による根治率は1〜2割であり、内科療法を組み合わせた際の平均的な生存期間は、1〜1.5年前後です。
これまでの研究で、犬膀胱癌ではIDO1と呼ばれる分子が過剰に発現し、膀胱癌に対する抗腫瘍免疫応答が抑制されていることを発見しました
(Ikeda N, J Vet Med Sci, 2021、研究科内成果報告はこちら)。
さらに、IDO1阻害剤を投与することで、犬膀胱癌移植マウスにおいて治療効果があることがわかりました。
外科系診療科では、2021年10月に東京大学附属動物医療センター治験委員会で承認を受け、IDO1阻害剤を用いた犬膀胱癌症例に対する臨床試験を行なっています。
※研究の詳細や費用については当センターのお問い合わせ専用ダイアル(03-5841-5420)にお問い合わせください。
※臨床試験に参加された方の試験薬の費用は免除されます。
研究責任者:東京大学附属動物医療センター 外科系診療科 中川貴之、加藤大貴
獣医外科学研究室のHPはこちら
一般に、限局性の固形腫瘍に対する第一選択は外科手術ですが、手術で取りきることが難しいほどに進行してしまった症例や全身に転移しやすい腫瘍に罹患した症例では、外科手術に加えて、抗癌剤や放射線療法が適用となります。
しかし、いずれの治療法も治療効果が乏しく、有効な治療法がないことが多いのが現状です。
固形腫瘍の血管は特有の血管壁の大きな隙間が存在し、薬剤を高分子化しサイズを大きくすることで、
その隙間より薬剤が漏れ出し蓄積しやすくなるEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果があります(Matumura Y, Maeda H, Can Res, 1986)。
EPR効果を利用することで、健康な臓器に比べ腫瘍組織に多くの薬剤を集積させられます。
そこで、ピラルビシンと呼ばれる抗癌剤と高分子ポリマーを結合させた高分子型抗癌剤を開発し、
マウスモデルにおいて低分子型抗癌剤(普段用いられるタイプの抗癌剤)に勝る抗腫瘍効果が得られることを発見しました(Nakamura H, Maeda H, J Control Release, 2014)。
外科系診療科では、2021年10月に東京大学附属動物医療センター治験委員会で承認を受け、高分子型抗癌剤を用いた臨床試験を行なっています。
※研究の詳細や費用については当センターのお問い合わせ専用ダイアル(03-5841-5420)にお問い合わせください。
※臨床試験に参加された方の試験薬の費用は免除されます。
研究責任者:東京大学附属動物医療センター 外科系診療科 中川貴之、加藤大貴
獣医外科学研究室のHPはこちら