東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医薬理学教室(堀教授)

応用研究・特許

大学の研究は、あくまで「基礎研究」を第一とすべきであって、「応用研究」に偏るべきではないと考えています。しかし、時として日々の研究の中で見つけた現象が、直ちに世の中に役立つ要素を含んでいることもあります。その様な場面に遭遇したとき、それを見逃さずに知的財産として登録し、その権利行使を主張することも重要だと考えています。

以下に、2005年11月2006年6月に出願したγ-oryzanolおよびcycloartenyl ferulateに関する2つの特許を紹介します。

米糠成分ガンマオリザノールの作用に関する研究が11月3日の読売新聞夕刊で取り上げられました。PDFでご覧頂けます。

IgE捕捉剤、並びに抗アレルギー性の医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物

出願番号通知 特願2005-340390

米は、世界で年間5億トン以上、日本国内でも年間1000万トンを越える生産高を持つ三大穀物であるが、精米過程においてその約1割にも及ぶ米糠が生じる。現在、その有効利用に関する多くの研究がなされている。

我々は、コシヒカリより常法に従って抽出したγ-oryzanolと、その主成分の一つであるcycloartenyl ferulateを用いて、アレルギー反応に対する作用を検討し、γ-oryzanolおよびcycloartenyl ferulateには強力なIgE捕捉作用があることを明らかにした。

実験は、RBL-2H3ラット肥満細胞株およびラット背位皮膚を用いた受身皮膚アナフィラキシー反応 (passive cutaneous anaphylaxis test; PCA test) を用いて行った。その結果、γ-oryzanolおよびcycloartenyl ferulateがin vitroにおいて強力な肥満細胞脱顆粒抑制作用を示すこと、in vivoにおいても皮内血管透過性亢進反応を抑制することを認めた。

(研究内容: 文部科学省特定領域研究「生体機能機能分子の創成」 第1回公開シンポジウムで公開)

ご興味がある方は、東京大学TLO ( CASTI )にご相談くさい。

  

 

 

NFκB活性化阻害剤


出願番号通知 特願2006-165308

クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD)は、食文化の欧米化やストレス社会、高齢化社会をベースに近年増加の一途をたどっており、その治療法ならびに予防法の開発は国策として急務であり、厚生労働省の難治性疾患としても指定されている。

我々は、コシヒカリより常法に従って抽出したγ-oryzanolと、その主成分の一つであるcycloartenyl ferulateを用いて、 腸炎モデル動物に対する抗炎症作用を検討した。その結果、γ-oryzanolおよびcycloartenyl ferulateには強力な腸炎抑制作用があること、そしてこの効果がNFkB阻害に起因することを明らかにした。

さらに、このNFkB阻害が、脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生を亢進することを見出し、インスリン耐性を伴う2型糖尿などの予防や治療にも有効である可能性を指摘した。

(研究内容: 文部科学省特定領域研究「生体機能機能分子の創成」 第2回公開シンポジウムで公開)

ご興味がある方は、東京大学TLO ( CASTI )または東京海洋大学知的財産本部にご相談くさい。
(本件は、東京大学と東京海洋大学との共同で申請した特許です。)

デキストラン硫酸誘発潰瘍性大腸炎モデルマウスの結腸炎症部におけるミエロペルオキシダーゼ活性に対するγ-oryzanolの影響 : γ-oryzanolは中程度の腸炎(0.5% DSS)における好中球浸潤を強力に抑制した。