緊急提言 
平成16年2月19日

全国の小学校、幼稚園・保育園、教育委員会等の教育関係者の皆様
全国の小学生、幼稚園・保育園児等の保護者の皆様へ

日本獣医師会学校飼育動物委員会  委員長 唐木英明
社団法人 日本獣医師会 会長  五十嵐幸男


学校飼育動物の鳥インフルエンザ対策について

平成16年1月に山口県の養鶏場で鳥インフルエンザが発生しました。海外ではこれが人に感染し、死亡者も出たことから、この問題はマスコミ報道でも大きく取り上げられましたので、ご心配の方が多いと思います。

さらに2月には大分県でペットとして飼育されていたチャボにも鳥インフルエンザが見つかったことから、ニワトリ、チャボや小鳥などを飼育している学校、保育園・幼稚園等の先生や保護者の方々から、日本獣医師会などに対して、子どもへの感染を心配する声や相談が寄せられています。

しかし、国内で鳥インフルエンザが発生したからといって、学校や家庭で飼育しているニワトリや小鳥が危険だということではありません。人間も鳥もインフルエンザの予防は同じです。清潔な状態で飼育し、インフルエンザを運んでくる可能性がある野鳥が近くに来ないようにし、ウイルスがいるかもしれない鳥の排泄物に触れた後には手洗いとうがいをすれば感染の危険はありません。詳しいことは、動物衛生研究所のホームページ(http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poultry/tori_influenza.html)をご覧ください。鳥を飼育している皆様には、飼育中の鳥を野山に放したり、処分するようなことはせずに、冷静に対処していただきますようお願いします。

日本獣医師会は、子どもの豊かな心を育てるために動物とふれあう情操教育が大変に大事だと考え、学校で飼育されている動物の診療をはじめ、動物の健康管理や飼育のお手伝いを行っています。動物飼育は子供たちに計り知れない影響を与えますが、それは子どもたちが動物に愛情を持って、守り、育むという役割を果たすことによってもたらされるものです。動物の「お父さん」、「お母さん」であることを自覚した子供たちにとって、その大事な動物が遠くに行ってしまったり、まして処分されたりすることがどのような大きな悲しみを与えるかを周囲の大人は真剣に考えていただきたいと思います。

子供たちの「からだ」の健康を心配するあまり、「こころ」の健康を軽んじるべきではなく、教育関係者、保護者の皆様方には、ぜひとも「学校における動物飼育」の意義を問い直していただきたいと思います。

指導にあたられる教員の方々は、子供たちには衛生的な飼育管理法や、手洗い・うがいの励行を指導するとともに、ご自身で動物の様子を観察していただき、元気がなくなるなどの異常を発見したときには、直ちに近くの獣医師に連絡して診察を受けていただくようお願いします。不明な点がありましたら、地元獣医師会または最寄りの家畜保健衛生所にご相談ください。

最後に、日本獣医師会は、様々な生物の命をみつめ、育む職業である獣医師の団体として、今後とも学校飼育動物に対する支援を継続することを申し添えます。