本のしょうかい 獣医学の新しい本
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獣医学関連の本、あるいは獣医学関係者が執筆した本を紹介する欄です。
雑誌の記事などに関するものでもかまいませんので、 ご紹介下さい(自薦でも構いません)。
(宛先:ozaki@mail.vm.a.u-tokyo.ac.jp
スキャナーがあれば表紙の画像もお送り下さい(JPEGかGIF 形式で)。

獣医学関連の出版社へのリンク
文永堂出版 学窓社
養賢堂 朝倉書店
インターズー 近代出版
HPのリンクまたは新刊書の紹介を希望される出版社はお申し出下さい。

小動物の臨床薬理学
尾ア 博・西村 亮平 著
A4判376頁 オールカラー、定価(本体16,000円+税)
ISBN 4-8300-3190-5


 ・より効果的でより安全な薬物療法を行う上で必要不可欠な薬理学の基礎から応用までを網羅。
 ・カラーイラストによるわかりやすい解説。
 ・巻末付表には小動物臨床に用いられる医薬品の一覧を掲載。
 本書は、好評いただきました「獣医畜産新報」誌の連載をもとに、さらに内容を充実させ新たに編集し直されたものです。分かりやすい豊富なカラーイラスト(模式図)によりさまざまな薬品の薬理作用がビジュアルに理解できるように工夫されています。
 効果的でより安全な薬物療法を行うには、その基礎となる薬理学の知識が必要となることは言うまでもありません。
 「獣医畜産新報」誌の連載記事を見逃されていた方はもちろん、連載を読まれていた方にもぜひともお奨めしたい最新刊です。

目 次:第1章 吸入麻酔薬/第2章 注射用全身麻酔薬/第3章 静穏薬・鎮静薬/第4章 抗てんかん薬/第5章 オピオイド/第6章 局所麻酔薬/第7章 血管拡張薬/第8章 強心薬/第9章 抗不整脈薬/第10章 血液凝固系に作用する薬物/第11章 利尿薬/第12章 呼吸器系の薬/第13章 胃疾患の治療薬/第14章 腸疾患の治療薬/第15章 NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬/第16章 副腎皮質ステロイド薬(コルチコステロイド)/第17章 アレルギー性疾患の治療薬/第18章 糖尿病の治療薬/第19章 生殖器疾患の薬/第20章 抗腫瘍薬/第21章 抗菌薬/第22章 抗真菌薬/第23章 駆虫薬/第24章 殺虫薬/第25章 問題行動の治療薬/第26章 ワクチン/第27章 動物医療における医薬品と法規制/第28章 薬に関するインフォームド・コンセント

(文永堂ホームページより転載)



走査電顕アトラス マウスの発生
近藤俊三 [写真]、牛木辰男、川上速人、近藤俊三、高田邦昭、花岡和則 [著]
岩波著店、東京、2003年 
定価 15000円(税別)

画期的な待望の写真集がようやく出版された。本書は受精、卵割、胎仔とマウスの個体発生の全過程を丹念に追ったもので、血管鋳型法と走査電顕を駆使して胎性期の発生過程を3次元的に示した美しい写真の数々に驚かされる。この写真集は三菱化学生命科学研究所電子顕微鏡室での25年におよぶ近藤俊三博士の粘り強い研究と技術改良の成果である。近藤博士を導かれた加藤淑裕、団勝磨両先生はすでに故人となられたが、ご存命であればこの出版を最も喜ばれたことであろう。共著者も近藤博士の写真を目の当たりにして、近藤ファンになられた方々である。

本書は、受精から器官原器・胎盤の形成過程、主に誕生までの胎性期の各器官形成、そしてこの研究に用いられた実験法解説の3部構成になっている。どの部分をとっても発生過程の変化、退縮など詳細で一目瞭然である。最初に掲げられている、精子が卵子透明帯を通過する写真は新聞や教科書に掲載され、見たことがある人は多いと思う。近藤博士の写真の豊富さを知る者としては、総数500枚ほどの写真では多少物足りないが、頁数を増やさぬよう、写真とその説明は最小になっている。また、各所に模式図が適切に配置され、理解を助けている。

現在のところ、体長1 - 2 cmのマウス胎児仔の血管鋳型作成、さらに2 - 3 mmの胎仔血管に色素を注入する技術をもつのは、世界で近藤博士しかいない。しかし近年、遺伝子操作はマウスを用いた例が多く、その操作いかんによっては胎生死する例も多くあり、胎仔発生の経時変化を観察できるこの技術はますます必要となっているだけに、この写真集が技術継承のきっかけとなることを期待したい。すでに実験法の試料作成法は内外から多くの問い合わせがあると聞く。その意味で、本書に近藤博士の発表した邦文、欧文の文献が記載されていない点は残念である。

下手な書評は必要なく、写真を眺めていれば、マウスがわずか19日で個体になり生まれることの不思議さなど、様々な思いが湧き上がってくる。本書は、価格も比較的手ごろであるので、学生から第一線の研究者、特に哺乳動物の遺伝子改変を扱う研究者には、ヒトを含めた哺乳動物における受精から個体までの正常発生のレファレンスとして、座右の書になるだろう。

石田 行知(シンシナチ大学客員教授)、唐木 英明(東京大学名誉教授)

 

野生動物の研究と管理技術
Research and Management Techniques for Wildlife and Habitats fifth Edition, Revised

日本野生動物医学会
大泰司紀之、野生生物保護学会 丸山直樹・渡邊邦夫 監修
鈴木正嗣 編訳
定価20,000円
ISBN 4-8300-3185-9

生態調査からその解析、応用・実用と野生動物の研究と管理技術についてあらゆることを網羅しています。さらに獣医学的な内容にも深く及んでいます。野生動物にかかわる全ての関係者必携のl冊です。

 

臨床獣医師のための
イヌとネコの問題行動治療マニュアル

武内ゆかり、森裕司 著

ファームプレス ISBN4−938807−24−6−C3045 定価 8700円

問題行動治療のノウハウを明快に解説したマニュアル。巻末にはすぐに使える質問
票や飼い主に渡すハンドアウトを添付。

 

暮らしの中の死に至る 毒物・毒虫

唐木英明 著・監

講談社  ISBN4−06−264153−4

天然毒から人口毒まで60酒の毒性と対処法をトキシコロジストの立場から一般向けに解説した本。

 

 

 

小さな命を救いたい

西山ゆう子 著

てんしっぽ不妊手術基金  1500円

北大獣医学部を卒業後、単身で渡米し、獣医師免許を取得して勤務獣医師として働いている女性獣医師のつづった手記。

決してあってはならない人生体験から立ち直り、夢を勝ち取っていく。動物に対する限りない愛情から獣医師を目指した著者の心情が伝わってきます。

アメリカの獣医事情についてもうかがい知ることができます。

東京大学 尾崎博

 

 

 

コンパニオンアニマル Q&A

練馬小動物研究会 編

文永堂出版 ISBN4−8300−3181−6   2600円

練馬区獣医師会の先生方が、長年にわたりスーパーマーケットの一角に相談室をもうけ、ここでの相談の内容をまとめたものだそうです。

飼い主がどの様な問題に困っているか。それに対して獣医師はどの様に対処したらよいか。

小動物臨床を目指す学生さんに特にお勧めしたい1冊です。

東京大学 尾崎博

 

 

 

よい獣医さんどこにいる

坂本徹也 著

WAVE出版  ISBN4−87290−083−9

最近の獣医師事情、獣医学教育の現状を、社会(一般)の目からみて書かれた本です。かなり誇張された表現もありますが、よく言い当てている部分もあり、多いに参考になります。

    内容の一部を抜粋

 

 

毒性学 −生体・環境・生態系−
藤田正一 編 (朝倉書店) ISBN4-254-46022-8

書評 準備中

 

最新 獣医診療ハンドブック
長谷川篤彦監修 (インターズー) ISBN4-900573-78-7 16000円

小動物臨床家向けの雑誌、AD&Sに掲載された特集記事をまとめたものです。
102名にのぼる執筆者の最新の記事がまとめられています。

目次: 
臓器系 呼吸器 − 心臓 − 血管 − 腸 − 腎臓 − 泌尿器 − 神経 − 網膜 − 
      耳 − 赤血球 − 好中球
寄生体 フローラ − 好気性菌 − マイコトキシン − レトロウイルス − 
      ノミ − ダニ
その他 疫学 − 麻酔 − カルシウム − MHC − レセプター − 抗生物質 −
     系統分類  

 

 

 

新 獣医薬理学
編集:浦川紀元、大賀浩、唐木英明、大橋秀法、中里子幸和、伊藤勝昭、伊藤茂男、尾崎博
(近代出版)  ISBN-87402-043-7 2色刷 4500円

この教科書は、質疑応答による新しい授業形態が可能となることを目指して新たに編集された獣医薬理学の教科書で、必要最小限の項目を出来るだけ平易に解説したものです。あとは、各教官がそれぞれの創意工夫でシラバスを作成し、学生に提示するというスタイルを目指しています。

 

イオンシグナルの謎 カルシウムの40億年を渉猟する
唐木英明 編著 (メディカルレビュー社) ISBN4-89600-302-0 1800円

書評 (東北大・医・分子薬理学 柳澤輝行)

  よい問題設定とその解こそが科学の進歩に寄与することができるといわれている。それ故、謎とその解へのプロセスは科学的精神の骨格である。初学の人や若手研究者はまずどんな謎があるのかを知らなければならない。この本の編著者の企画による、第1回若手研究者のための薬理学セミナー「イオンチャネルとポンプの進化」が、生命・生体機能の魅力を知ってより深い興味を薬理学に持ってもらうことを目的として、一年前に開かれた。会場は満席であり、演者は十分にのり、質問・討議もホットであった。本書はその時の興奮をもう一度甦らせてくれた。この本は題名の通りに謎に満ちたテーマ設定で、着眼点が新しく時には意表を衝くような展開をしており、思わずどんな答が用意されているのかと、先を追って読んで行きたくなる。そして、カルシウムシグナリングやイオンチャネル・トランスポーターに影響する薬物・毒物を薬理学教科書とは異なった切り口で接することができて楽しく有益であった。

  本書は6章からなり、カルシウム・シグナルの謎、トランスポーター、非選択的陽イオン、カリウム、カルシウム、ナトリウムチャネルの順で、太古からの細胞や生物が解決しなければならない生存を賭けた営みを進化の流れで追う順番と構成になっている。薬理学者であろうとなかろうと生命現象に携わるものは地球の歴史、化学進化、分子進化、生物進化のそれぞれの研究の動向に注意をはらう必要があることをあらためて思い起こさせる。本書の冒頭に引用されている、集団遺伝学で有名なドブジャンスキーの言葉は、誰もがかみしめなければならない言葉であろう。

  スフィンクスの謎かけのように、例えば、「生命が誕生したとき、最初に必要であったのは核酸や蛋白質の拡散バリアとしての細胞膜であった。しかし、この膜には水や基質や老廃物を通す機能も必要であったはずである。最初のトランスポーターはどのようなものであっただろうか?」や、「すべての細胞はカルシウム濃度を低く保っている。これはカルシウムが生命体にとって猛毒であるためと説明されている。しかし、カルシウムは本当に猛毒であろうか?」と問われて、それぞれの識者は自分なりの考えを持っているはずであるが、この書ではどのように解かれているか、さらにはアポトーシスまで展開されているさまは、それこそ読んでのお楽しみである。

 エントロピー増大にあらがうものとして細胞膜が生じたばかりでなく、生命維持機構に必須の選択透過性をその細胞膜は獲得した。「そして、ポンプ膜からチャネル膜への変換が、エネルギー膜から情報膜へのパラダイムシフトを実現した。」と述べてあるところでは、うなずくとともに思わず考え込んでしまう。

  また、常に大きな世界に眼を向けよと、警告している文章もある。「生命の進化は生息の場である地球環境の変遷と切り離せない。めざましい深化を遂げている地球の歴史変遷に関する研究がここで述べた我々が今想定している生物学の常識を覆す可能性もあるだろう。」

 そして、著者の一人が以下のように挑発している。「以上、謎解きで話を進めてきたけれど、どうだったかな?私なりの答に納得のいかない点も多いと思うが、もっとスマートな解答は君たちにまかせよう。」

  2色刷りでコントラストもしっかりしている図が計83枚、表は12もある。価格は広く多くの方に読んでもらいたいとの意思の表れであろう。囲み記事やフットノートも充実していて、教科書や辞書で間に合わないことも解説され、理解を助けている。他の章の内容とともに照らし合わせて用語に注意しながら読者が考えれば、現代生物学の主要な論点とその研究成果がおのずと概観でき、薬理学や関連領域にとって重要な細胞膜機能やシグナルの見方が身に付くようになっている。「生物学の面白さ」を知るという意味でよい企画・実演とごちそうのあるシンポジウム(饗宴)のぜいたくさを味わえること請け合いである。

 柳澤輝行

東北大学医学部分子薬理(旧 第二薬理)
東北大学大学院医学系研究科
生体機能制御学講座分子薬理学分野
980-8575 仙台市青葉区星陵町2-1


 

 

ペット・カウンセリング
工 亜紀 著 (芳賀書店) ISBN4-8261-3004-X 1600円

自宅の前の駐車場に車につながれたラブがいつもいます。昼間いて夜にいなくなるのです。とても人なつこくて、私が近寄ると大変な喜びようです。名前はモモ。ある夜、娘がこの犬と遊んでいたときに飼い主と会い、聞き出しました。一人暮らしの青年で、アパートにモモと暮らしているのですが、一人で留守番が出来ずに、一日中吠え続け家の中をめちゃくちゃにしてしまうのだそうです。仕方なく昼間仕事に出ている間、駐車場に置いているのだということが分かりました。

この本はペットのしつけについて、日本でも数少ない行動カウンセリングを専門とする獣医師が書いたものです。内容は、ペットの行動の基礎、問題行動の種類、その予防法、そしてカウンセリングの実際。理論的に手際よく、しかも動物への愛情を込めて書かれています。著者自身の描いたイラストも読者を楽しませてくれます。

東京大学大学院農学生命科学研究科 尾崎博


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