麻 布 大 学

 


唐木教授による「国立獣医系大学再編の現状と展望」の講演を終えて

麻布大学 獣医学部長 政岡俊夫  

去る2月9日、麻布大学において予めお願いしてありました唐木先生による標記講演が行われました。当日は本学の理事長、学長をはじめ50名余りの教員の出席があり、また科研費メールにも紹介致しましたので近隣の大学からも出席をいただきました。すでに九州大学が正式に獣医学部設立についての交渉を受諾するとの情報が入っており、国立大学の動向に強い関心が寄せられ高い出席率になったものと考えております。

講演は獣医学教育の充実の必要性、日本の獣医学教育の現状、欧米諸国の現状と改革への取り組み、国立大学の再編問題など約1時間に渡り、これまでの獣医学教育に関する諸々の改革の経緯を踏まえながら詳細に講演してくださり、出席者は十分理解できたものと思っております。講演後の質疑の中心は、一つは新しく設立されるであろう獣医学部の規模であり、もう一つは日本における獣医師の必要数でありましたが、時期が時期だけに唐木先生は言明を避けられ、基準協会の基準が指標となること、毎年出る約1000名の卒業生の職域を確保する努力は必要であることを言われております。  

この講演を紹介致しましたのは、講演を拝聴し私なりに感じたことを申し上げ、皆様方の御意見、御批判を賜りたく投稿致した次第です。

1)これから新しく設立される獣医学部あるいは自助努力によって充実される獣医学教育の組織は、大学基準協会の基準が指標となることを再認識した。
 何を今さら寝言みたいなことを言ってとお笑いになる方もおられると思いますが、私の心のどこかに大学設置基準の存在がありましたが、日本で通用する基準であっても世界では通用しないことを知らされた。
 獣医学教育の充実は、当初獣医師免許の相互承認と言う誤った認識でスタートしたと思っておりますが、現在の認識は世界的に獣医学教育の均一化が問われているのであって、世界の基準に匹敵できる日本の大学における獣医学教育組織の規模は大学基準協会の基準が指標となる。また、工業界を中心とした日本技術者教育認定機構(JABEE, Japan Accreditation Board for Engineering)が問題視しているように、大学での教育は国際的に通用する教育プログラムを有しているか否かが問われている時代であて、大学設置基準だけに頼る時代では無くなっていると考えるのが妥当のように思える。 このように考えるなら、新しく作られる獣医学部は、仮に入学定員60名とするならば教員72名以上、付属の教育動物病院の教員6名以上、さらに付属研究組織(動物実験センター等)の教員6名以上に加え事務、技術職員を要する陣容となるのは必須で、私学関係者の一人として本学の状況を分析すると肌寒いものを感じます。

2)単年度卒業生の数は約千名を必要とし、獣医師の職域確保に関して我々はもっと努力する必要がある。
 獣医学科の学生は就職に困らないと言う時代は終わった。現在、約1000名の卒業生が毎年社会に出ているが、社会が必要としている獣医師の数は、開業300名、公務員300名(一説には200名とも言われている)および残りが企業等基礎研究分野と考えられている。獣医師会の平成元年から7年度までの調査で卒業生の就職先が単年度平均で公務員230名、動物病院340名、企業200名、その他150名および不明90名と計算でき、前述の裏付にもなっているが、一方ではこの調査は実際に獣医師免許の必要な数が年間600とも800とも言われる根拠になっていると思われる。しかし、1000名の卒業生は社会的に考えて組織上必要な数と思われ、これを維持するために企業等の基礎研究の分野への進出をこれまで以上に充実することと公務員希望者をこれ以上減らさない努力をする必要があると思える。現在、獣医学教育改革の主眼を臨床教育の充実に置いているが、公衆衛生教育、基礎科学教育等の充実も取り上げ、学生にこの方面への興味を持たせることも大切と考える。

 講演を聞き終えて、これまで私なりに認識してきたことを再整理しただけの事で、皆様方にとりましてはことさら目新しいくもなく言い尽くされた事と存じメール上に載せるまでもありませんが、これをきっかけとして事務局が提唱致しておりますメールでの議論が盛んになれば幸いです。

 

ホームページに戻る