宮 崎 大 学

2000/4/27 掲載

平成12年4月24日

口蹄疫問題と獣医学教育再編    宮崎大学農学部獣医学科

 過日、宮崎県で和牛に口蹄疫が発生したことはご存じと思います。その経過は、3月25日宮崎市の畜産農家で飼育される肥育和牛が口蹄疫ウイルスに感染した疑いがあると診断され、ただちに家畜伝染病予防法に基づき県庁、家畜保健衛生所、および農林水産省畜産局衛生課のそれぞれに「口蹄疫防疫対策本部」が設置され、疑似患畜の殺処分、発生地から一定距離内での予備消毒、家畜の移動制限、県内の牛飼育農家への立ち入り検査および血清サーベイランス調査が行われることになりました。この事態を受けて、宮崎大学獣医学科では3月27日緊急学科会議を開き、学科に「口蹄疫対策委員会」を設置し、緊急動員体制を敷きました。そして県の口蹄疫防疫対策本部の支援要請に応じて3月31日より学科教官、大学院生、学生が血清検査等に協力を開始しました。
 これまでに県内で14,308農家、牛21,781頭について検査が行われ、そのうち3農家で患畜および疑似患畜が認められました。血清検査はほぼ完了しましたが、鹿児島、熊本、大分の各隣県での検査が終了するにはなお日時を要します。今回の口蹄疫は疫学的観点から見ると幸い伝染力が弱く、また発見が早く迅速に防疫対策がとられたことと、県内外の獣医師の昼夜を分かたぬ奮闘で被害の拡大をくい止めることができました。しかし、ウイルスの侵入ルートが特定できないことに加えて、今後発生の可能性がないとは言いきれないなど重要な問題が残されました。
 今回の口蹄疫は、我が国が海外から伝染病が侵入する危険に絶えずさらされているという深刻な問題を露呈しました。各国間で人的、物的交流が年々増加している今日、日本の家畜、小動物あるいは人が海外から渡来する病原微生物にいつ感染してもおかしくない状況にあることは各方面から指摘されてきたところです。今後このような問題が起こらないようにするため我が国の獣医学科や獣医師は海外の獣医師と国際的なネットワークを組み、連携して防疫に務めなければなりません。そのためには獣医系大学は国際的に認められるレベルの教育を実施し、世界に通用する実力を持った獣医師を養成する必要があります。また様々な病気に対応できる専門家を多数大学に擁して、緊急事態が発生しても直ちに適切な情報を社会に発信できるようにする必要があります。獣医師の社会における役割は20−30年前とは比較にならないほど大きなものとなり、多方面になってきましたが、獣医師を養成する大学の教育体制は20−30年前からほとんど進歩しておらず、現在の規模では各分野に専門性の高い教員を揃えることは不可能で、上記の課題に応えることは困難です。このような事態を打開するために我々はかねてより複数の地方大学の獣医学科が統合して欧米並みの獣医学部を創設し、専門家をそろえた獣医学教育体制を実現し、国民と動物の福祉に貢献できる獣医師養成を行う必要があると訴えてまいりました。今回の問題で我々は、弱小な獣医学科では畜産物の輸入検疫、新興・再興伝染病の防御、食品の安全性確保に対処することが難しいことを痛感しました。国際教育基準をはるかに下回る獣医学教育では、国際的ネットワークの構築はおろか外国の大学や獣医師に相手にされない恐れさえあります。
 今回、口蹄疫がたまたま獣医学科がある宮崎県で発生したため、宮崎に獣医学科が必要であるという声が一部から聞こえます。しかし現在のような小さい獣医学科では点を抑えるだけで、広い地域を面で抑えることはできず、1997年の台湾における口蹄疫のように強力な病原微生物が侵入して短時間で全国に広まるような伝染病には対処できません。人口8,100万人のドイツには5つの獣医学部しかありませんが、各学部の教員数は少ないところでも100名、多いところでは250名以上と日本とは比べものにならない規模となっています。諸外国では、こういう規模の教員組織を持たなければ全国をカバーして直面する諸問題に対処することができず、また社会が要請する獣医学教育はできないという共通認識があります。我々はこの認識は間違いないことを今回の教訓として学びました。口蹄疫のような病気が再び発生しないように、またもし発生したときには直ちに対処できる獣医師を多く養成するために獣医学科の再編は緊急の課題です。各位にはその必要性をご理解いただけますようお願い申し上げます。


1999/12/14 掲載

宮崎大学における獣医学科再編整備問題の経緯       平成11年12月15日

宮崎大学農学部獣医学科は、「人類と動物の福祉に貢献する」(大学基準協会「獣医学教育に関する基準」)ことができる獣医学教育を実現するため、諸外国並みの規模の獣医学部を創設することが是非とも必要と考えています。この数年間、その方策を模索してきた結果、九州大学に獣医学部を創設して、そこに獣医学科を統合する案が実現可能なただ一つの道であるという結論に達しました。つきましては、今回、これまでの宮崎大学の農学部および獣医学科における獣医学科再編問題の経過をホームページに掲載することにいたしましたので、我々がなぜ上記の結論に到達するに至ったかをご理解の上、関係各位より獣医学教育改善への努力に対しご支援を賜りますようお願い申し上げます。

資料 獣医学科再編整備に関する経過説明
(平成10年11月9日宮崎大学農学部教官会に獣医学科より提出した資料を一部修正)

1.これまでの獣医学教育をめぐる動きの概略  

 戦後、新制国立8大学に獣医学科が設立されて以来、獣医学教育を充実させる試みは何回か繰り返されてきました。当初は欧米にくらべて教育年限が短いことが問題となり、昭和38年頃から獣医学界内で教育年限延長が論議され、昭和46年獣医学視学委員会の方針として教育年限延長が決まりました。その具体化案として、昭和51年に文部省「獣医学教育の改善に関する調査研究会議」が修士積み上げ方式による6年への教育年限延長を答申し、これは昭和53年入学生から実施されました。この変則6年制の発足にあたっては、各大学に1講座が増設(宮崎大学では獣医公衆衛生学講座)されましたが、それ以外は特に獣医学教育充実のための方策はとられませんでした。
  宮崎大学では、昭和49年に視学委員が来学した際、農学部は畜産獣医学部または獣医学部で臨む意向であることを説明し、50年より畜産学科、草地学科との協議が始まりました。次いで昭和51年に来学した視学委員から宮崎、鹿児島両学科の統合が打診されました。それに対し、宮崎大学は自力で学部を創設する方針をもっていたため、教授会は獣医学科の存置拡充を決議(S52.2.8)、引き続いて宮崎県議会も存置拡充を決議しました(S52.3.30)。昭和52年には畜産獣医学部の基本構想と概算要求提出が教授会で承認されました(S52.3.18とS52.4.26)。その後一時、協議が難航しましたが、昭和55年に畜産獣医学部案が教授会に上程され、56年度概算要求に盛り込むことが了承されました。しかし、結果的にはこの概算要求は認められませんでした。
 6年制教育を行うには不十分なまま修士積み上げによる6年教育が始まったにもかかわらず、文部省からの手当は期待できないことから、昭和58年の国公立大学獣医学協議会で獣医学科を統廃合して新体制を作るべきという意見が大勢となり、昭和60年の同協議会で望月会長より提案された3原則(S60.3.20)「(1)国立大学の再編整備を行うこと、(2)再編整備は現有教官数を基本とし、農学部の再編整備と深くかかわること、(3)再編整備の規模は学部(25講座以上)とし、大学院を併設すること」が合意され、文部省高等教育局長へ提出し、各獣医学科間で再編整備に関する協議が始まりました。その後、鹿児島、宮崎、山口各大学の3学科が統合して九州大学に獣医学部を作る案をはじめ、岡山大学や名古屋大学に学部を作る案、東京大学と東京農工大学の獣医学科が統合する案などが浮上し、活発な動きがありましたが、諸般の事情からこれらの運動はすべてとん挫しました。
 一連の全国的な動きを見ながら、宮崎大学獣医学科では5つの選択肢を考え、その中から「宮崎大学に他大学獣医学科と統合した学部を作る」、「九州大学に獣医学部を作る」の二案に絞ったことを学部長に報告(S60.11.1)し、学部での審議を依頼しました。これを受けて昭和61年、農学部審議委員会の付託機関「農学教育研究検討委員会」は獣医学科の問題は農学部改組と並行して検討するという方針を出しました。しかし、獣医学科を含む学部改組案は国公立大学獣医学協議会長から文部省に提出された再編整備案にそぐわないため、結局獣医学科を含まない学部改組の概算要求が行われ、平成元年に学部改組が実現しました。
 昭和59年度より獣医学教育は修士積み上げ制から一貫6年制に移行し、修士課程廃止により新制国立大学は大学院を失う形となったため、平成2年に緊急避難的措置として連合大学院が東西に発足しました。博士課程をもったという一時的な安堵感と再編整備運動が失敗した挫折感から再編整備に関する論議はしばらく沈静化することとなりました。
 しかし、教育内容の充実が伴わないままに、6年制の卒業生が社会に出るにつれ、卒業生を受け入れる側から教育成果の貧弱さに対する批判が強まってきました。その一方で、外国では獣医学教育体制が着々と整備されるようになり、日本の獣医学教育と国際レベルの格差が歴然としたものになってきました。特に、臨床獣医教育の立ち遅れは深刻で、内外からの批判はここに集中しています。このような状況をふまえて大学基準協会は、我が国の獣医学教育を抜本的に改革すべく、「獣医学教育に関する基準」を平成9年2月に改定しました。改訂された「基準」では、学生入学定員60名までの場合専任教員数を72名以上とし、学生定員が60名を越える場合は超える人数に応じて教員を増加するよう提言しています。そして獣医職業教育を志向しない場合は、応用動物科学のような教育体系に転換することを求めています。

2.獣医学をめぐる国際情勢の変化

 この1,2年に獣医学教育をめぐって国際的に大きな動きが生じています。北米圏、旧大英連邦圏では獣医学教育基準をすでに統一し、EUでは通貨統合が終了する1999年1月までに統一する予定で、その基準は米英と同レベルです。全国獣医学関係大学代表者協議会および大学基準協会獣医学教育研究委員会は平成10年4月にヨーロッパ獣医科大学視察団を派遣し、獣医学教育の実情を調査してきましたが、ヨーロッパでは教員数、施設・設備、教育内容のすべてにおいて日本を大きく上回り、1学年100名の学生に対して100名の教員、それ以上の技術員、事務員という、日本とは較べものにならない教育組織を持つことが基準とされており、大学基準協会が定めた規模をも凌駕することが明らかとなりました。例えばスイスのベルン大学獣医学部には60名の教員がいますが、それでも基準を下回るため、チューリッヒ大学との再編を進めているほどです。今後は教育基準の統一に続いて、これらの国の間での獣医師資格の相互承認の動きが加速化することが予想されます。
 欧米の基準統一後、日本を含むアジアに同様の基準の採用を迫る圧力がかかってくるのは必至です。タイ、インドネシア、フィリピンなどはすでに大きな獣医学部が存在し、ある程度の対応は可能ですが、日本、韓国、台湾、中国は小規模な教育体制であり、抜本的な改革をしなければ対応は困難です。このうち韓国、台湾は国の政治体制から見て、トップダウン的に教育改革を行う可能性があり、もし日本だけが立ち遅れますとそれから生じる国益上の不利益は大きいことが予想されます。今すぐに日本の獣医学教育を改革したとしても、新制度での卒業生が出るまでに6年かかるので、これ以上の遅滞は許されない状況となっています。

3.獣医師への社会的ニーズの変化

 戦後、各大学に獣医学科が設立された頃は、獣医学は畜産業と密接に関連し、産業動物の保健衛生、畜産製品の安全管理が獣医師の主な任務でした。獣医学科が農学部、特に畜産学科のある農学部に多く設立されたのはそういう事情が背景にあります。このニーズは今でも変わってはいませんが、国民の生活様式の変化、国民の動物に対する考え方の変化、経済・文化の地球化(グローバリゼーション)などにより獣医師がもっと幅広く活動することが必要となってきました。まず産業動物については、ウルグアイ・ラウンド合意により畜産物が自由化され、予防獣医学の必要性が大きくなってきました。将来、国際基準に到達した教育を受けた獣医師の検査証明がなければ、日本の畜産品は海外に出せなくなることが危惧されます。グローバリゼーションの別の側面では、特に最近、マラリア、牛海綿状脳症(狂牛病)、病原性大腸菌O-157、ラッサ熱、エボラ出血熱など従来であれば局地にしか伝播しなかった伝染病が早い速度で世界中に蔓延する事態となり、組織的かつ国際的な研究体制、防疫体制を確立することが急務となってきました。獣医学教育基準の国際化の動きは、このような情勢に臨んで、国際的なネットワークを構築する必要があるからです。
 また、伴侶動物が家族の一員と見なされ、高度医療を受けるようになり、それをサポートするため獣医学の高度化、専門化が求められるようになってきました。最近は動物を人間の伴侶と見なす考えから一歩進んで、動物を人間の疾病の治療やリハビリテーションに役立てる考え(アニマル・アシステド・セラピー)が生まれてきていますが、これは獣医師の協力なしにはできません。野生動物保護への期待も高まり、これは環境保護運動と結びつくと同時に、動物福祉の思想が広まり、ここでも獣医師の出動が必要となっています。動物と人間の接触が増えてきたことで動物から人間への病気の感染(ズーノーシス)という問題が大きくクローズアップされ、国際伝染病の問題と合わせて獣医師が国際連帯のもとで取り組むべき新たな課題となっています。
 このように獣医師の社会的任務は昭和20?30年代とは一変するほど拡大し、獣医学が高度化、多様化するにつれ、従来の教育組織では対応しきれない現状となってきました。

4.国立大学獣医学科再編の再検討

 このままでは十分な獣医学教育が出来ず、国際的にも取り残される可能性が高いため、獣医学を担当する教官の危機意識は高まり、平成7年頃より各大学で打開策の検討が始まりました。宮崎大学では、農学部改革構想についての論議が本格化していた平成7年度後半から獣医学科で学科の将来構想を検討し、「我々は獣医師養成の教育研究を続ける」ことを確認した上で、その方策として学部内他学科の協力により新学科を創設する案を検討することとし、平成8年4月より動物生産学科の家畜生産学コース、草地畜産学コースと協議を開始しました。しかし、これは合意が得られず同年7月、白紙に戻すこととなり、協議は中断しました。
 大学審議会が獣医の学生定員の拡充は認めないことを答申(H8)したこともあって、各教官の間では再編整備で教育を改善するしかないという認識が再び広まってきました。平成8年4月に新制国立8大学の獣医学科代表による8大学懇談会が設置され、牧田国公立大学獣医学協議会会長(山口大学)より獣医学科が統合して獣医単科大学を創設する案が示されました。宮崎大学獣医学科はこの案には賛成しかねる旨回答し、他の大部分の獣医学科も同意しなかったため、本案は立ち消えとなりました。宮崎大学獣医学科は単科大学に代わる案の検討に入り、検討を重ねた結果、5つの選択肢を設定しました。それは、(1)学部内の他学科の協力による新学科創設を引き続き模索し、農学部内で大学基準協会の「基準」(当時は基準案で正確な内容は把握していなかった)を達成する、(2)教官純増により宮崎大学国際開発獣医学部(または学科)を創設する、(3)他大学の獣医学科を招致して宮崎大学に獣医学部を作る、(4)学部を連大化する、(5)山口大学参加校をしかるべき大学に統合する、というものです。この5つの選択肢は、農学部改革委員会より各学科の改組案を求められた際に獣医学科の回答として報告されました(H9.2.26)。この選択肢は、改革委員会では特に論議されることはありませんでしたが、(1)案は前年の協議がとん挫後、見通しが立たないこと、その後の情勢の進展により、(2)案の大幅な教官の純増は無理であること、(4)案の学部の連大化は文部省が否定的であることも次第に明らかになってきました。
 8大学懇談会は平成9年4月に解消し、8大学は東西それぞれで検討することとなりました。岐阜連大を構成する東日本4大学は、平成9年6月に「獣医学教育・研究に関する理想像」(冊子)を発行し、さらに新組織設立のため努力する意思表明を行いました。一方、山口連大を構成する西日本4大学は、同年6月に「再編整備検討委員会」を発足させ、打開策の検討を開始しました。研究科長を兼ねる徳力委員長は、第2回委員会(H9.10.11)で九州大学に獣医学部を作ることを提案し、第3回委員会(H9.12.18)で九州大学獣医学部設置趣意書(私案)を提示しました。これに対して、山口大学獣医学科は徳力私案に同調しましたが、宮崎、鹿児島、鳥取の3学科は「一つの案として検討する」という態度で臨むことをそれぞれ決めました。会議を重ねるたびに、九州大学が受け入れる意志があるかどうかがわからない状況では、これ以上の検討は意味がないという空気になってきたため、徳力委員長は平成10年4月、4学科が統合して九州大学に獣医学部を創設する可能性を九州大学総長に打診したところ、4月下旬に総長より前向きに検討したい旨の回答を得ました。九州大学獣医学部案がにわかに現実性を帯びたものになり、鳥取大学、鹿児島大学もその方向に傾いてきました。当獣医学科では討議を重ね、5つの選択肢の(3)案も可能性が薄くなったことから(5)案しか選択の余地はないと判断し、平成10年6月4日の学科会議で「九大獣医学部案を進める方向で検討する」ことを決定しました。ついで8月3日、九州大学における再編整備案の学部での検討方を依頼する文書を農学部長に提出しました。
 西日本と連動する形で、東日本4学科は東北大学に獣医学部を設立する構想で東北大学と協議を開始しました。東京大学獣医学科、北海道大学獣医学部は、8国立大学獣医学科の方針を尊重し、独自に獣医学教育の充実を図る途を模索しています。このような動きを受けて、同年8月、全国獣医学関係大学代表者協議会は再編整備を進めることを全会一致で決定し、唐木会長は獣医関係6団体代表と連名で文部省高等教育局長に獣医学教育の充実に関する要望書を提出し(H10.9.7)、全国の国立大学農学系学部長に農学部長会議での検討を依頼する文書を送付しました。また、国公立大学獣医学協議会は、各農学部長宛に九州大学と東北大学へ統合する案が進行していることを説明し、検討を依頼する要望書を送付しました(H10.10.7)。

 以上がこれまでの獣医学をめぐる情勢と当学科の対応の推移です。今日、獣医学教育改革の必要性は逼迫したものとなり、後戻りできないところに来ています。獣医学教育の充実は、国内と海外への安全な食品の安定的供給を確保し、人間と動物の伝染病を予防する観点からも欠くことのできないものであり、社会の要請であると我々は理解しています。そのためには九州大学に獣医学部を設置するのが最善の途であると我々は考えています。
 宮崎大学から獣医学科がなくなることは宮崎大学にとって大きな損失であり、我々にとっても愛着ある宮崎大学を離れることは痛恨の極みであります。しかし、このままではわが国の獣医学教育の衰退を招くことになり、国民に責任を果たすことができなくなります。21世紀において次世代が担うべき世界水準の獣医学教育を行う環境を整えておくことは我々の責務であり、他に選択肢はないと考えています。我々が置かれている状況をご理解の上、ご検討いただきますようお願い申し上げます。

_________________ _______________________________________________________________________________

上記資料以後の経過  

 平成10年6月4日の学科会議で、獣医学科の将来構想に関して五つの選択肢から「九州大学に獣医学部創設を創設し、そこに統合する」案を学科教官全員で決定し、同年8月3日学部長に獣医学科案について学部での検討を依頼する文書を提出したのに応えて、学部長は農学部審議委員会(注:学部の重要事項を審議する委員会)にその審議を付託し、10月より獣医学科案の審議が始まりました。同年11月9日農学部教官会(注;構成は全教官)が開かれ、獣医再編問題について獣医学科および学部長より説明があり、質疑応答が行われました。その後、獣医学科を除く3学科で獣医学科案についての審議が始まり、平成11年1月19日の教授会で獣医再編案が協議題となり、3学科での審議内容が披露されました。いずれの学科からも「獣医学教育充実のためであるならば獣医学科が宮崎大学を出ていくことを理解する」ことが表明されました。次いで、同年2月16日の教授会で、学部長より「九州大学が獣医学部創設の概算要求を出すときは宮崎大学農学部は獣医学科のマイナス概算要求を出すことを認める。ただし、概算要求の内容については別途審議する」という主旨の提案がなされ、圧倒的多数の賛成で承認されました。以上が、農学部での経緯ですが、大学レベルでの協議は現在のところ行われていません。また、県をはじめとする地元への説明もこれから行うところであります。

PDFファイルはこちら

 

ホームページに戻る