科学研究費補助金(基盤研究A(1))
「獣医学教育の抜本的改善の方向と方法に関する研究」

第7班「北大・東大・大阪府立大の自助努力案検討班」報告書
                   
代表班員:土井邦雄(班長)、藤田正一(北大)、
       吉川泰弘(東大)、菅野 司(大阪府大)


1.序

本班の目的は、北大、東大および大阪府立大において独自に獣医学研究の抜本的改善をはかる方途を探ることである。その目的を達成するため、日本獣医学会学術集会(第128回?130回)の度に3大学の代表者からなる会議を開催し、意見の交換を行った。その席では、3大学それぞれがおかれている現状を紹介するとともに、それを踏まえて、科研費の目的を達成する方途について検討を加えた。結果として、3大学それぞれに独自の方向で進まざるを得ないとの認識を得、下記のような自助努力案を纏めるに留まった。

ただ、つい最近の動きとして、北大と東大についてはそれぞれ他大学の獣医学科との再編の動きが出てきたため、将来本報告書と異なる方向に進むことになる可能性があるが、その場合でも、本報告書の趣旨は生かされるものと考える。なお、大阪府立大については、大学院部局化の実現を目指すこととなり、他班の報告書にその詳細が収載されるため、本報告書では簡潔な記載に留める。

本班に配布された科学研究費補助金はいずれも上記の会議費と旅費に充当した。

2.北海道大学自助努力案概要 
   
北大においては、獣医学領域における「高度専門職業人の養成」、すなわち、欧米諸国の基準に匹敵する教育・研究体制を充実し、卒業時には直ちに現場で活動を開始できる「専門家」を養成する目的で、大学院獣医学研究科の改組を行う意向である。詳細については添付別紙1を参照のこと。
 
3.東京大学自助努力案概要

東大では、1)獣医学学部教育の充実、2)先端医療等高度医療の専門家の育成、
3)公衆衛生学、環境科学等学際的社会獣医学の専門家の育成、および、4)大学院大学として、基礎獣医学を含む応用動物医科学の基盤研究の推進を念頭に、学内外のメンバーから成る委員会を組織して検討を進めている。詳細は添付別紙2を参照のこと。

4.大阪府立大学自助努力案概要

大阪府立大学の獣医学科および獣医学専攻においては、平成13年度より、獣医学教育の高度化を目指して組織再編を行うことになっている。現在、これに向けた人事の提案、学部および大学院の大幅なカリキュラムの改変の提案を行い、学則の変更について文部省に届け出る準備を行っているところである。
 
その改変の内容は、現在の1専攻・15講座制(専任教員数59名)から、2分野、4大講座制の1研究室3名(教授1・助教授1・助手1)からなる18研究室 (専任教員数54名)にするものである。これ以外に、先端科学研究所の教授2名および連携大学院制度による客員教授1名が大学院生の研究指導を行うこととしている。なお、学生定員には改変を加えないで、現行の学部40名および大学院9名を続けることとしている。(添付資料3−

5.まとめ

大阪府立大学では自助努力が実際に成果として結実したということが出来る。一方、北大と東大については、それぞれに自助努力の方向性を打ち出してはみたものの、1校のみでの獣医学教育・研究の改善には限度があることが如実に示される結果となった。この上は、自助努力に加えて、他大学の獣医学科との連携を求める方向で動かざるを得ないものと思われる。