平成15年冬学期から大学院講義がスタートしました。
□ 獣医学・応用動物科学専攻博士課程大学院講義 開催要領
□ 学生ならびに担当講座の注意事項
以下の日程、テーマで開講されます。
講義日程 : 5、7、10、1月の第3金曜日(13:00~18:00)(原則)
場所 : 弥生講堂(原則)
平成28年度特論 
第62回 1月13日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
「骨・軟骨欠損へのアプローチ」
担当:高度医療学研究室
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講義予定
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1. Over view
(13:00-)
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望月 学
(東京大学 高度医療学研究室)
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2.生理活性物質を搭載したバイオマテリアルによる組織再生療法の開発
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大庭 伸介
(東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 特任准教授) |
3.滑膜幹細胞を用いた軟骨・半月板の再生治療 |
水野 満
(東京医科歯科大学 再生医療研究センター プロジェクト助教) |
4. 3Dテーラーメイドチタンインプラントを用いた巨大骨欠損の治療戦略 |
本阿彌 宗紀
(東京大学 農学部付属動物医療センター 特任助教) |
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第61回 11月18日(金)13:00~16:40(食の安全センター中島ホール) |
「消化管間質構成細胞群による消化管運動制御とその関連疾患」
担当:獣医薬理学研究室
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講義内容
生理的な消化管運動、すなわち蠕動運動が消化管平滑筋細胞と腸神経系(感覚神経や運動神経)により制御されていることは古くから知られている。しかし、この四半世紀の間に、消化管壁を構成するカハール介在細胞やPDGFRα陽性間質細胞などの間質細胞や筋層間常在型マクロファージが消化管の蠕動運動を制御していることが明らかにされた。また、腸炎疾患における腸グリア細胞の関与も着目されており、消化管運動はこれら一連の細胞群『Gastrointestinal network; GI network』の細胞間相互作用として理解する必然性が提唱されている。本講義では、GI networkを構成する細胞群の形態学的特色、ICCや平滑筋細胞の機能異常の分子機構、人の先天性消化管運動異常疾患や再生医療の可能性について取り上げ、GI networkの生理と病態について理解する。
PNAS 1989, 86;7280, Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2012, 9;633, Cell 2014, 158;300, Gastroenterol 2015, 49:445, Physiol Rev 2014, 94;859
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1. Over view
(13:00-13:10)
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堀 正敏
(東京大学 獣医薬理学研究室)
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2.消化管運動を司る間質構成細胞群
(13:10-13:50) |
堀口和秀
(福井大学医学部 解剖学研究室)
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3. 免疫炎症応答によるカハール介在細胞の機 能破たん
(14:00-15:40) |
梶 典幸
(東京大学 (獣医薬理学研究室)
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4. 休憩
(14:40-15:00) |
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5.免疫炎症応答による消化管平滑筋運動機能破たん
(15:00-15:40) |
堀 正敏
(東京大学 獣医薬理学研究室) |
6. 消化管運動異常を特徴とする先天性疾患と再生医療を目指した基盤研究
(15:50-16:30) |
下島 直樹
(慶応義塾大学 医学部 小児外科学研究室)
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7.まとめ・総合討論
(16:30-16:45) |
堀 正敏
(東京大学 獣医薬理学研究室) |
One coin Sci.Caffe(懇親会)
(17:00~19:00) |
会費: 院生500円、教員2000円 |
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第60回 10月14日(金)13:00~16:40(弥生講堂) |
「ヒト,マウスだけじゃない!実験動物の多能性幹細胞の樹立と利用」
担当:細胞生化学
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講義内容
マウス胚,およびそれに続くヒト胚からの多分化能を有する幹細胞の樹立は,様々な細胞に分化することができる能力(逆に,分化できない性質)の根底にある分子機構の解明や,再生医療への道を拓いた。しかし,獣医学領域への利用やヒト疾患モデル動物の作出を目指した,霊長類,あるいはその他の動物からの多能性幹細胞を用いた研究への挑戦は今でも続けられている。本講義では,これらの研究の第一線で活躍する国内研究者を講師に迎え,最新の研究を紹介していただく。
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1. イントロダクション:ほ乳類の初期胚に由来する 幹細胞
(13:00-13:20)
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田中 智
(東京大学 細胞生化学研究室) |
2.T.B.A.
(13:20-14:10) |
稲葉俊夫
(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
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3. 「動物種の特徴を生かした多能性幹細胞研究」
(14:10-15:00) |
本多 新
(宮崎大学テニュアトラック推進機構) |
4. 休憩
(15:00-15:10) |
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5.「 カニクイザル多能性幹細胞および遺伝子組換えカニクイザル作製の試みについて」
(15:10-16:00) |
依馬正次
(滋賀医科大学動物生命科学研究センター)
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6. 「コモンマーモセットの発生工学研究」
(16:00-16:50) |
佐々木えりか
(慶應義塾大学 先導研究センター)
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7.総合討論
(16:50-17:00) |
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第59回 7月15日(金)13:00~16:40(弥生講堂) |
「ウイルスの制御:基礎から応用へ」
担当:獣医微生物学研究室
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講義内容
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1. はじめに (13:00-13:05)
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堀本泰介
(獣医微生物学研究室) |
2.季節性インフルエンザ ~サーベイランスからワクチン株選定まで~」
(13:05-13:50) |
渡邉真治
(国立感染症研究所・インフルエンザウイルス研究センター) |
3. 「哺乳類間における鳥インフルエンザウイルスの伝播」
(13:50-14:35) |
今井正樹
(東大医科研・ウイルス感染分野) |
4. 「Adaptation of animal influenza viruses to human
host」
(14:35-15:20) |
滝本 徹
(University of Rochester, Medical Center) |
5. 休憩
(15:20-15:30) |
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6. 「ノロウイルスは制御できるのか?」
(15:30-16:15) |
上間 匡
(国立医薬品食品衛生研究所・食品衛生管理部 |
7.「感染研のBSL4実験室」
(16:15-17:00) |
下島昌幸
(国立感染症研究所・ウイルス第Ⅰ部 |
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第58回 5月20日(金)13:00~16:40(農学部1号館8番教室) |
顧みられない人獣共通伝染病対策の現状
担当:獣医公衆衛生学研究室
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講義内容
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1. はじめに (13:00-13:05)
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山田章雄
(獣医公衆衛生学) |
2.顧みられない熱帯病とは?
(13:05-14:05) |
遠藤弘良
(聖路加国際大学臨床疫学センター教授) |
3. ベクターコントロール (14:05-15:05) |
嘉糠洋陸
(東京慈恵医大熱帯医学講座教授) |
4. 休憩 (15:05-15:15) |
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5. 世界におけるエキノコックス症の現状(15:15-16:15) |
野中成晃
(宮崎大学農学部准教授) |
5. わが国のコミットメント(16:15-16:40) |
松本芳嗣
(応用免疫学研究室) |
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以下の講義は終了しました。
第57回 1月15日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
獣医生理学から世界へ
担当:獣医生理学研究室
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講義内容
獣医生理学教室出身の卒業生が、その後、どのような分野でそれぞれ活躍
しているのか、また、大学院時代に学んだことが現在どのように活かされて
いるのかを各講師の講義内容から学び取って欲しい。
講義の全体の要旨はこちらで(PDF)ご確認ください。
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1. はじめに (13:00-13:05)
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2.幹細胞の基礎研究から治療へ向けて |
矢田英理香
(神奈川県立がんセンター・臨床研究所) |
3. 再生医療実現を目指した高効率ヒト骨格筋前駆細胞誘導の開発 |
細山 徹
(山口大学大学院・付属再生医療教育研究センター) |
4. 原因タンパク質から探るFTLD/ALSの発症機構 |
田中良法(東京都医学総合研究所・認知症プロジェクト) |
5. 生殖機能の中枢制御におけるミクログリア/マクロファージ系細胞の関与 |
藤岡仁美(聖マリアンナ医科大学・医学部・生理学教室) |
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第57回 11月20日(金)13:00~17:00(弥生講堂)
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東大-ソウル大学SGU連携企画「野生動物学の現状」
担当:獣医解剖学学研究室
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講義内容
詳細は各講義の要旨(PDF)をご覧ください。
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1. はじめに (13:00-13:05)
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九郎丸正道(東京大学大学院農学生命科学研究科)
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2.野生動物学ー国内およびアジアでの現況ー
(13:05-13:25) 要旨はこちら |
木村順平(ソウル大学獣医学部) |
3. 動物園飼育から見える野生動物学 (13::25-14:05) 要旨はこちら |
黒鳥英俊(元:上野動物園教育普及課学芸員 現:京都大学野生動物研究センター) |
4. 動物園の獣医学
(14:05-14:45) 要旨はこちら |
木戸伸英(公益財団法人横浜緑の協会 金沢動物園) |
5. 休憩
(14:45-15:15)
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6. 鯨類における野生動物医学(15:15-15:55) 要旨はこちら |
田島木綿子(国立科学博物館 動物研究部)
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7.
野生から家畜へ 野生にいたころの性質は家畜を理解するのに必要か?
(15:55-16:35) 要旨はこちら |
入交眞巳(日本獣医生命科学大学) |
8.おわりに(16:45-16:40)
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木村順平(ソウル大学獣医学部) |
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第56回 10月16日(金)13:00~17:00(弥生講堂)
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生殖の神経内分泌学
担当:獣医繁殖育種学研究室
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講義内容
詳細は各講義の要旨(PDF)をご覧ください。
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1. はじめに (13:00-13:15)
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前多敬一郎(東京大学大学院農学生命科学研究科獣医繁殖育種学研究室)
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2.生殖を支配する脳内メカニズム
−歴史的背景と基礎−
(13:15-14:00) |
束村博子(名古屋大学大学院生命農学研究科生殖科学研究室 |
3. 家畜の生殖を支配する脳内メカニズム −新たな知見とその応用の可能性−
(14:00-14:45) |
松田二子(名古屋大学大学院生命農学研究科動物生産科学研究室 |
4. 休憩 (14:45-15:00) |
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5. 新しい生殖制御調節機能から見る生殖関連医学および高次脳機能への連関
(15:00-15:45)
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小澤一史 (日本医科大学解剖学・生体構造学) |
6. 生殖機能の調節に関与する神経ペプチド受容体を標的とする創薬研究
(15:45-16:40) 終了後総合討論
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大石真也 (京都大学大学院薬学研究科ケモゲノミクス分野・薬品有機製造学分野) |
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第55回 9月15日(火)13:00~17:30(弥生講堂)
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細菌と細胞のインタラクションとダイナミズム
担当: 食の安全センター
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講義内容
詳細は各講義の要旨(PDF)をご覧ください。
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1. はじめに (13:00-13:10)
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関崎 勉
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2.宿主細胞内における病原細菌の生存戦略 〜細菌と宿主オートファジーの相互作用〜
(13:10-14:10) 要旨はこちら
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小川道永 (国立感染症研究所・細菌第一部) |
3. 膜動態のダイナミズムから見るオートファジー:A群レンサ球菌をモデルとして
(14:10-15:10) 要旨はこちら
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中川一路 (京都大学大学院・医学研究所・微生物感染症分野) |
4. 休憩 (15:10-15:30)
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5. サルモネラのマクロファージ内生存と持続感染戦略
(15:30-16:30) 要旨はこちら
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高屋明子 (千葉大学大学院・薬学研究院)
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6. ボルデテラ属細菌が起こす感染症:気管支敗血症菌と百日咳菌
(16:30-17:30) 要旨はこちら |
堀口安彦 (大阪大学・微生物研究所)) |
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第54回 5月15日(金)13:00~17:30(1号館8番教室) |
獣医疫学の最前線
担当: 国際動物資源科学 |
講義内容
疫学には、記述疫学、分析疫学、介入疫学などさまざまな疫学があるが、共通しているのは、データを処理理し関係者に役に立つ情報を提供するという役割をもっていることである。様々な分野で、疫学が有用な情報を提供するための道具としてどのように使われているかを紹介する
。
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1. はじめに (13:00-13:10) |
杉浦勝明(東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻) |
2. 牛白血病の疫学調査 (13:10-14:10) |
小林創大(動物衛生研究所ウイルス・疫学研究領域) |
3.
畜産現場のデータを用いた疫学研究
(14:10-15:10) |
中田 健(酪農学園大学)
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4. 休憩 (15:10-15:30) |
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5. 動物感染症とシミュレーションモデル (15:30-16:30) |
山本健久(動物衛生研究所ウイルス・疫学研究領域) |
6. ペット保険データを用いた疫学研究 (16:30-17:30) |
井上 舞(アニコム損保株式会社)
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第53回 1月16日(水)13:00~17:30(弥生講堂) |
人獣共通ウイルス性感染症研究の最前線
担当: 医科学研究所・実験動物研究施設 担当 |
講義内容
2014年の西アフリカでのエボラ出血熱の流行は、国境を越えて広がり、多数の死者を出す結果となった。国際的な協力支援によって沈静化をはかっているが、未だに完全制圧には至っておらず、多くの教訓を残した。人類にとって脅威となるエマージングウイルス感染症は、人獣共通感染症であり、その対策研究には多領域からの国を超えた協力が必要である。獣医学研究者もその一員として多方面で重要な貢献を行っている。本講義では、人獣共通ウイルス性感染症を対象とした研究の最前線を紹介する。
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1. イントロダクション (13:00-13:10) |
甲斐知惠子(東京大学・医科学研究所) |
2. フィロウイルス感染症 (13:10-14:10) |
高田礼人(北海道大学・人獣共通感染症リサーチセンター) |
3. ニパウイルス感染症 (14:10-15:10) |
米田美佐子(東京大学・医科学研究所) |
4.休憩 (15:10-15:30) |
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5. ハンタウイルス感染症-げっ歯類媒介性人獣共通感染症- (15:30-16:30) |
有川二郎(北海道大学・医学研究科) |
6. 重症熱性血小板減少症候群SFTS (16:30-17:30) |
西條政幸 (国立感染症研究所・ウイルス第一部) |
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第52回 11月21日(水)13:00~17:30(弥生講堂) |
資源動物科学の多様なあゆみ
担当:牧場担当 |
講義内容
長い歴史を紐解くと、人類は様々な家畜とその生産物を利用して過酷な環境の中で生き残ってきました。しかし19世紀から爆発的に発展してきた工業化社会では、伝統的な家畜との共存共栄関係を保つことが困難になってきていました。20世紀後半になって様々な新技術が編み出され、家畜の利用は新たな局面を迎えてきています。本講義では、その多様なあゆみについて広い範囲から、多面的に最近の話題を提供する。
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第51回 10月17日(水)13:00~17:20(弥生講堂) |
哺乳類の嗅覚コミュニケーション
担当:獣医動物行動学研究室 |
講義内容
人間などの霊長類を除いた哺乳類の社会行動を観察すると、その多くを嗅覚コミュニケーションに依存していることがわかる。例えば母子間の個体認知、雄雌の判別、縄張り行動、社会的序列などは大部分が嗅覚系の情報伝達を基盤として成立していることが知られている。本講義では、嗅覚に作用する種々の物質について、その本体、受容機構、中枢作用機構について最新の知見を提供する。
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1. 嗅覚系の解剖学的特徴(13:00-14:00) |
横須賀 誠 (日本獣医生命科学大学・病態解析学分野) |
2. 危険と安心の匂い (14:00-15:00)
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清川 泰志 (東京大学応用動物科学専攻・獣医動物行動学研究室) |
3.病気の匂い (15:00-16:00) |
白須 未香 (東京大学応用生命化学専攻・生物化学研究室/ERATO東原化学感覚プロジェクト) |
4.異性をくすぐる匂い (16:00-17:00) |
岡村 裕昭 (独立行政法人農業生物資源研究所・動物生産生理機能研究ユニット) |
5.まとめ (17:00-17:20) |
武内 ゆかり (東京大学応用動物科学専攻・獣医動物行動学研究室) |
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第50回 7月18日(水)13:00~17:00(弥生講堂)
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哺乳類卵の生殖工学・発生工学のトピックス
担当:応用遺伝学研究室 |
講義内容
哺乳類卵を用いた生殖工学・発生工学に関するトピックスの中から、興味深いテーマをピックアップし、最新の研究成果と現状を紹介する。
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第49回 5月16日(水)13:00~17:20(弥生講堂) |
獣医臨床神経学の進歩: Progress in Veterinary Clinical Neurology
担当:獣医臨床病理学研究室 |
講義内容
21世紀に入り、獣医臨床神経学の領域に多様な診断ツール・研究ツールが導入され、動物の神経疾患の病態が次第に解き明かされつつある。これらの知見は、動物の健康と福祉を向上させるのはもちろんのこと、ヒトの疾患モデルとして、あるいは中枢神経系の基礎研究に対する問題提起としても有意義であることが期待される。本大学院講義では、動物の中枢神経(疾患)に関して、臨床?応用?基礎の広い範囲から、最近の話題を提供する。
【問い合わせ先】
獣医臨床病理学研究室 松木直章 (amki@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp) 米澤智洋 (ayone@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp) |
1. 犬の特発性脳炎の病態解析-Etiological Study on Canine Idiopathic Encephalitis (13:00-13:50) |
松木直章(東京大学・大学院農学生命科学研究科) |
2. 小動物の遺伝性中枢神経疾患-Hereditary Central Nervous System Disorders in Small Animals(13:55-14:55)
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大和 修(鹿児島大学・共同獣医学部) |
3.休憩 |
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4.犬と猫のてんかんモデル:温故知新-Epilepsy Models using Dogs and Cats: From the Past to the Future(15:10-16:10) |
長谷川大輔(日本獣医生命科学大学・獣医学部) |
5. 犬の行動診療における新しい診断アプローチ-Advanced Diagnostic Procedure in Clinical Behavioral Therapy in Dogs(16:15-16:40) |
荒田明香(東京大学・大学院農学生命科学研究科) |
6.GnRH欠損マウスを用いた性フェロモンの中枢性制御機構に関する基礎的研究- Mechanisms of Pheromone Release on the Central Nervous System in GnRH-defficient Mice (16:45-17:20) |
米澤智洋(東京大学・大学院農学生命科学研究科) |
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第48回 1月17日(水)13:00~17:10(弥生講堂) |
感染制御の最前線
担当:感染制御学研究室 |
講義内容
感染制御学研究室は2012年に新設された研究室です。獣医領域の感染症をどのように制御するか、多岐にわたる課題をカバーします。近年、動物の感染症に対する社会の意識は急激に高まりました。グローバリゼーションの流れの中、以前は遠くヨーロッパのできごとと思われたBSEが我が国でも発生し、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなど、国内には長い間なかった感染症が発生して大きな被害をもたらしました。21世紀、人類は環境・食糧・感染症という共通の課題を抱え、世界の人の健康・動物の健康・環境の保全は一つに繋がっているという”One World, One Health”の観点から、地球規模で課題の克服に挑むことが求められます。
今回は、初めての大学院特論にあたり、「感染制御の最前線」として、野生動物、国際的取組み、人のワクチン、危機管理といった、さまざまな視点から、感染制御 に関する話題を提供します。
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第47回 11月15日(水)13:00~17:30(弥生講堂) |
遺伝子改変技術と疾患モデル動物を用いた基礎医学研究
担当:実験動物学研究室 |
講義内容
発生工学の進歩により生み出された遺伝子改変マウスは、全遺伝子に対する遺伝子変異マウスを作製する大規模プロジェクトが世界的に進められるなど極めて多数作出されており、もはや生物学・基礎医学研究分野において欠かすことのできないツールとなっている。本大学院講義では、多様な研究を行う獣医学先行の学生が対象ということで、がんや神経変性疾患、感染・免疫疾患、放射線障害など多岐に渡る疾患モデルを対象とした。そしてその中でも特に、多数の遺伝子変異マウスを駆使して研究を進める戦略、あるいは新規遺伝子のクローニングからスタートして遺伝子変異マウスを樹立し遺伝子機能の解析を行うという戦略により、疾患発症の分子機構の解明を目指した先端的研究を行っている先生方に今回ご講演をお願いした。研究の歴史や現場の裏話も含めて、最近の話題を提供したい。 |
1. オーバービュー (13:00-13:15) |
角田 茂 (東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻実験動物学研究室) |
2. 筋委縮性側索硬化症の原因遺伝子同定から疾患発症機構の解明に向けて(13:15-14:15)
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秦野伸二 (東海大学大学院医学系研究科脳神経疾患研究センター/医学部基礎医学系分子生命科学センター長・教授) |
3.C型レクチン受容体:自然免疫と獲得免疫制御における役割 (14:15-15:15) |
西城 忍 (千葉大学真菌医学研究センター感染免疫分野 特任准教授) |
4.休憩(15:15-15:30) |
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5. 放射線障害におけるTLR3の役割(15:30-16:30) |
植松 智 (東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター自然免疫制御分野 特任教授) |
6. 糖鎖研究から見えてきた胃癌発生の制御機構(16:30-17:30) |
中山 淳(信州大学大学院医学系研究科分子病理学講座 教授) |
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第46回 10月18日(水)13:00~17:30(弥生講堂) |
脳神経科学研究の多様性と現状
担当: 比較病態生理学研究室 |
講義内容
脳神経系は生体の高次機能および調節機構として重要な働きをしていることは言うまでもないが、臓器や器官あるいは中枢の神経核における調節様式は多様である。本大学院講義では、マウスから牛まで脳神経科学研究における様々な分野での現状について、この分野に特有な電気生理学的な研究手法や研究成果の応用性も含めて話題を提供したい。 |
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第45回 7月17日(水)13:00~17:30(弥生講堂) |
伴侶動物における臨床疫学研究:Evidence-based Medicine(EBM)のために
(Clinical Epidemiologic Study for Evidence-based Medicine)
担当:獣医内科学研究室 |
講義内容
近代獣医学は医学と同様エビデンスに基づいた診断と治療が要求され、そのため個ではなく動物集団を対象として解析する臨床疫学研究が盛んに行われています。今回の獣医学特論では、よりクオリティの高いエビデンスを得るための臨床疫学研究の基礎と、現状のトピックスについて4名の先生方にご講義いただきます。また最近東京大学でもグローバル化の名のもと英語での講義を増やすことが検討されていますが、今回の獣医学特論は2名の海外講師をお招きしてその講義は英語で行っていただくこととしました。世界にはばたく大学院生の皆さんはぜひ頑張って英語の講義についていってください。 |
1. Introduction (13:00-13:05 ) |
Koichi Ohno (Tokyo Univ.) |
2. Evidence-based Veterinary Medicine: Theory and Practice (獣医領域のEBM:理論と実践) (13:05-14:25)
Dr.Kassは米国カリフォルニア大デービス校の獣医学科教授で疫学研究が専門の先生です。これまでに多くの臨床医とコラボして臨床エビデンスを獣医領域に生み出してきた先生で、今回臨床疫学研究の進め方に関するベーシックな講義を行っていただく予定です。獣医学研究を行う大学院生にとって貴重かつ必須となる講義内容となるはずです。頑張って聞いてぜひ皆さんの明日の研究にも役立ててください。(英語通訳なし、日本語ハンドアウトあり)
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Dr. Philip H. Kass (UC Davis) (カリフォルニア大デービス校) |
3.休憩 (14:25-14:35) |
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4. Nutritional Management of hyperthyroidism in cats (猫の甲状腺機能亢進症の栄養管理) (14:35-15:35)
Dr.Melendezは米国イリノイ大、オクラホマ大での教員活動後にマークモーリス研究所で医療本部長としてご活躍されている先生です。消化器疾患や内分泌疾患を専門とし、特に栄養との関連性について研究を行っています。今回は最近の療法食のブレークスルーとも言われる、猫の甲状腺機能亢進症に対する栄養療法について、エビデンスに基づいたお話をしていただく予定です。(英語通訳なし、日本語ハンドアウトあり) |
Dr. Lynda Melendez (Mark Morris Institute) (マークモーリス研究所) |
5.休憩(15:35-15:45) |
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6. Analysis of prognostic factors for canine lymphoma (犬のリンパ腫の予後因子に関する解析) (15:45-16:30)
佐藤雅彦先生は本学獣医学研究科にて、犬リンパ腫における微小残存病変測定の臨床的有用性に関する研究で学位を取得され、現在農学特定研究員として研究活動を継続して行っております。今回は犬のリンパ腫の予後因子のエビデンスについて、佐藤先生をはじめとする当研究室での研究成果を中心にReviewしていただきます。どんな犬ではリンパ腫の予後が悪くなるのか?(日本語) |
Dr. Masahiko Sato (Tokyo Univ.) |
7. Shelter medicine: herd management for companion animal (シェルターメディシン:伴侶動物医療の群管理) (16:40-17:30)
田中亜紀先生は日本獣医生命科学大学をご卒業後に2001年渡米し、カルフォルニア州立大学デイビス校にて、シェルターメディシンの研究を行う傍ら、国内大学の非常勤講師や日本の行政職員向けにシェルターメディシンの講習会を行うなど精力的にご活躍の先生です。シェルターメディシンはシェルターの動物を医学的かつ疫学的に解析してより適切な群管理へと導く学問で、まだまだ歴史も浅く国内では講義を聴く機会はほとんどありません。貴重な講義をぜひ聞き逃さないよう!(日本語) |
Dr. Aki Tanaka (UC Davis) (カリフォルニア大デービス校) |
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第44回 6月14日(金)13:00~17:30(弥生講堂) |
疾患と免疫制御
担当:応用免疫学研究室 |
講義内容
免疫応答は病原体の侵入など外的要因から身を守るだけではなく、生体内の恒常性維持など様々な場面で活躍する。しかしながら、炎症反応などは諸刃の剣であり、免疫バランスの異常はそれ自体が疾病へとつながる。つまり、寄生適応や恒常性維持には「生体」と「異物」が互いを熟知する必要があるといえる。本講義では、「生体」が「異物」とのクロストークに用いる「免疫」について、感染症やがん、自己免疫疾患といった様々な角度からアプローチする若手研究者を講師に迎え、最新の研究を紹介する。 |
1.はじめに (13:00-13:10 ) |
松本芳嗣 (東京大学大学院農学生命科学研究科応用免疫学) |
2.トキソプラズマと宿主との免疫学的相互作用解析 (13:10-14:00)
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山本雅裕 ( 大阪大学 微生物病研究所 感染病態分野 ) |
3.リーシュマニア原虫の抗原学 (15:30-16:10) |
後藤 康之 (東京大学)
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4.休憩 (14:50-15:00) |
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5.癌と肥満細胞(15:00-15:50) |
村田幸久 (東京大学大学院農学生命科学研究科放射線動物科学) |
6.CD8T細胞の生体内での恒常性維持機構(15:50-16:40) |
瀬戸口留可 (京都大学次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点創薬研究グループ) |
7.制御性T細胞による免疫制御(16:40-17:30) |
堀 昌平 (理化学研究所統合生命医科学研究センター免疫恒常性研究チーム) |
懇親会 (17:35-) 於 7号館A棟104号室 |
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第43回 1月18日(金)13:00~17:05(弥生講堂) |
ヒトと動物の神経変性疾患研究の現状
担当:獣医病理学研究室 |
講義内容
ヒトでは老化による神経変性疾患の代表として、アルツハイマー病やパーキンソン病などがある。いずれも病因についての研究が進みつつあり、変性したタンパク質の脳内沈着が一因であることが分かってきた。動物にもこれらの神経変性疾患は存在するのであろうか。本講義では、ヒトと動物の神経変性疾患について、臨床と病理、およびこれまで解明された分子発生機序を概説する。
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1. ヒトの神経変性疾患の臨床と病理 (13:05-14:35 ) |
新井信隆(東京都神経科学総合研究所) |
2. 動物の脳老化の病理 (14:45-15:30)
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中山裕之(東京大学) |
3. ネコ科動物の脳老化の病理 (15:30-16:10) |
チェンバーズ ジェームス(東京大学)
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4. 動物の神経変性疾患の現状 (16:20-17:05) |
内田和幸(東京大学) |
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第42回 11月16日(金)13:00~17:30(弥生講堂) |
骨破壊、骨転移と破骨細胞
Bone destruction, bone metastasis and osteoclast
担当:獣医外科学・高度医療科学研究室 |
講義内容
骨の腫瘍や関節リウマチなどの骨破壊性疾患は、獣医療において日常的に遭遇する疾患である。また、犬では前立腺腫瘍などでしばしば腫瘍の骨転移が認められる。これらの疾患では、骨破壊や疼痛の抑制が大きな目標となるが、近年、これらの疾患を制御する骨微小環境に注目が置かれるようになり、研究面でも大きな進展を遂げている。当研究室における犬骨肉腫の研究でも破骨細胞の機能異常が病態制御に関わることが示唆されており、そのメカニズムを深く理解することは獣医臨床においても大きく役立つと考えられる。本講義では、破骨細胞の分化制御や機能の基礎的研究における最新の知見から、実際の口腔癌や関節リウマチの骨破壊制御における破骨細胞の役割、さらには骨転移による癌性骨痛の疼痛メカニズムについて、それぞれの分野における第一線の研究者に紹介してもらう。 |
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第41回 10月19日(金)13:00~17:30(弥生講堂) |
消化管運動のペースメーキング細胞:カハール介在細胞の機能と病態
Physiology and pathophysiology of Interstitial Cells of Cajal, a pacemaking cells for gastrointestinal motility
担当:獣医薬理学研究室 |
講義内容v
生体より摘出した消化管は、脳からの司令が断絶しているにも関わらず、食物を口側から肛門側へと輸送する『蠕動』能を保持している。このことから消化管には心臓同様ペースメーキング能を持った細胞が存在すると考えられてきた。しかし、その細胞の実体は長らく不明であったが、近年、消化管運動のペースメーキング能を司る細胞がカハールの介在細胞(Interstitial Cells of Cajal; ICC)と呼ばれる間質細胞であることが証明された。本講義では、カハール介在細胞の分布や微細形態、発生分化、自動能発生機構、さらにはICCや壁内神経叢異常の関与する消化管運動不全疾患とその治療戦略など、最新の測定技術や再生医療技術の話を交えて各専門の研究者に紹介してもらう。 |
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第40回 7月20日(金)13:00~17:45(弥生講堂) |
エピジェネティクスの深淵 担当:細胞生化学研究室 |
講義内容
エピジェネティックスはもはや新しい分野ではありません。胚発生から疾患まで,およ
そあらゆる局面で動物の生涯に関わっており,獣医学分野でも重要な研究領域です。本
大学院講義では,クロマチン,ヒストン,DNAメチル化レベルなどの基礎研究からヒト疾
患との関係の解析まで,最近の研究を紹介していただき,エピジェネティクスの世界に
どっぷり漬かる機会を提供します。
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第39回 5月18日(金)13:00~17:20(弥生講堂) |
動物ウイルス学の最前線 担当:獣医微生物研究室
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第38回 1月20日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
腸内フローラと免疫 担当:獣医公衆衛生学研究室
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第37回 11月25日(金)13:00~16:10(弥生講堂) |
組織幹細胞の分化制御とその生理的意義 担当:獣医生理学研究室
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講義内容
生体の各組織(器官)には組織特異的幹細胞が存在し、当該組織が損傷した場合の再生や恒常性維持を担う。幹細胞は自己複製能をもつとともに非対称的に分裂し、分化運命の決定した前駆細胞を生み出す細胞と定義される。長い間、再生しないと考えられてきた中枢神経系においても神経幹細胞が存在し、ニューロンやグリアへと分化することが明らかとなっている。また、肝臓とならび高い再生能力をもつ骨格筋には多
様な分化能をもつ幹細胞が存在する。本大学院講義では、中枢神経系や骨格筋に存在する幹細胞の分化制御とその生理的意義について話題を提供したい。 |
1. はじめに(イントロダクション) (13:00-13:10 ) |
西原 真杉(東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医生理学教室)
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2. 成体脳における神経新生とその調節 (13:10-13:50) |
西原 真杉(東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医生理学教室)
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3. 分泌タンパク質による神経幹細胞の運命決定 (13:50-14:30)
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根建 拓(東洋大学生命科学部応用生物学科・動物細胞工学研究室)
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4.休憩 (14:30-14:50) |
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5. 骨格筋に出現する脂肪細胞の起源とその蓄積機序 (14:50-15:30) |
山内啓太郎( 東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医生理学教室) |
6. 幹細胞生物学から再生医学へ:全能性幹細胞と組織幹細胞 (15:30-16:10)
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橋本有弘(国立長寿医療研究センター研究所・再生再建医学研究部)
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第36回 10月21日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
鳥の科学 担当:獣医解剖学研究室 |
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第35回 7月15日(金)13:00~17:30(弥生講堂) |
ゲノムから見た妊娠成立
担当:動物育種繁殖学研究室 |
講義内容
哺乳類は子宮内で受精卵・初期胚を育てるため、受精卵・初期胚の生存率は格段に良くなった。ところが、初期胚と子宮内膜という異種細胞同士の接着・浸潤やその後の胎盤形成という新たな問題を抱えることになってしまった。着床や胎盤形成といった妊娠成立過程はさらに、未だに解明されていない様々な現象を包含している。①母親は胎児の産物を異種たんぱく質と認識し、抗体まで産生しているのに、通常、rejectすることはない。②浸潤性・非浸潤性な着床過程に関わらず、トロホブラスト細胞は優れた浸潤能を持つ。③上皮細胞同士が接着や融合することはないが、胚盤胞・トロホブラスト細胞(上皮細胞)と子宮上皮細胞は接着も融合もすることが出来る。④他の臓器に比べ、哺乳動物の胎盤形態に著しい差異が見られる。本セミナーでは、着床・妊娠成立機構の新知見を紹介するだけではなく、いままでジャンクDNAと考えられていたゲノム配列の関与など今後注目される新研究領域を紹介する。 |
1. イントロダクション(13:00-13:10) |
今川和彦 (東京大学大学院農学生命科学研究科) |
2.
着床前コミュニケーション
(13:10-13:40) |
櫻井敏博 (東京大学大学院農学生命科学研究科)
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3.
胎盤形成と栄養膜細胞の分化
(13:40-14:20) |
金野俊洋 (東京大学大学院農学生命科学研究科) |
4. マウスの胚発生と着床 (14:20-15:10) |
松本浩道(宇都宮大学農学部動物生産学講座)
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5. 内在性レトロウイルスと妊娠の成立 (15:20-16:00) |
橋爪一善(岩手大学農学部獣医学科基礎獣医学講座) |
6. ゲノム情報から見た進化 (16:00-17:00) |
五條掘 孝(国立遺伝学研究所生命情報DDBJ研究センター) |
7.
質疑応答・総合討論 (17:00-17:30) |
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第34回 5月20日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
微生物ゲノム研究のフロンティア
担当:食の安全研究センター |
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第33回 1月21日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
ワクチンの科学:課題と試み 担当:農学国際専攻国際動物資源科学研究室 |
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第32回 11月19日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
ヒトと動物の共通感染症の最前線 担当:医科研実験動物研究施設
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講義内容 |
1. イントロダクション(13:00-13:10 ) |
甲斐知惠子 (東京大学医科学研究所実験動物研究施設)
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2.眠り病を眠らせたい(13:10-14:40) |
北潔 (東京大学大学院医学系研究科・国際保健学専攻・生物医化学教室)
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休憩 (14:40-14:50) |
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3.
サルモネラ感染成立の分子メカニズム(14:50-16:20) |
山本友子 (千葉大学大学院薬学研究院) |
4.
クリミア・コンゴ出血熱の最近の話題(16:20-17:50) |
西條政幸(国立感染症研究所ウイルス第一部)
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5.質疑応答・総合討論(17:50-18:00) |
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第31回 10月15日(金)13:00~17:50(弥生講堂) |
発生工学の最近の進歩 担当:医科研システム疾患モデル研究センター |
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第29回 5月21日(金)13:30~18:00(弥生講堂) |
哺乳類フェロモンによる生理機能および行動の制御法開発 担当:獣医動物行動学教室 |
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第29回 5月21日(金)13:30~18:00(弥生講堂) |
哺乳類フェロモンによる生理機能および行動の制御法開発 担当:獣医動物行動学教室 |
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第28回 1月15日(金)13:00~17:15(弥生講堂) |
鳥類・哺乳類各種における生殖工学の最前線 担当:応用遺伝学教室
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第27回 11月20日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
腫瘍に対する免疫療法の現状 担当:
獣医臨床病理学教室 |
講義内容 |
1.
人医療における免疫療法
(13:00-14:30 ) |
鳥越 俊彦(札幌医科大学) |
2.
免疫寛容から考える免疫療法
(1) 制御性T細胞による免疫寛容
(14:30-15:15) |
堀内 大(日本動物高度医療センター) |
休憩(15:15-15:30) |
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3.
免疫寛容から考える免疫療法
(2) 悪性黒色腫の免疫寛容解除による免疫療法
(15:30-16:00) |
富張 瑞樹(帯広畜産大学) |
4.
獣医療における活性化リンパ球療法
(16:00-16:30) |
嶋田 照雅(帯広畜産大) |
5.
犬の悪性黒色腫に対する樹状細胞免疫療法
(16:30-17:00) |
盆子原 誠(日本獣医生命科学大学) |
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第26回 10月2日(金)13:00~17:20(弥生講堂) |
動物個体を基盤とした医科学研究-獣医臨床から疾患モデル 担当:実験動物学教室 |
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第25回 7月17日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
心筋活動の比較生物学:正常と異常(不整脈) 担当:比較病態生理学教室 |
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第24回 5月14日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
ネコのレトロウイルス研究最前線~臨床病態、分子病態、分子疫学の最新情報~ 担当: 獣医内科学教室 |
1.Introduction 東京大学獣医内科学研究室 教授 辻本元 (13:00-13:10)
2.猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の病態 山陽動物医療センター 院長 下田哲也 (13:10-13:50)
3.FeLV関連腫瘍の分子病態:Insertional mutagenesis 東京大学獣医内科学研究室 助教 藤野泰人 (3:50-14:30)
4.FeLVの遺伝子解析から臨床応用への取り組み 山口大学獣医感染免疫学研究室 准教授 西垣一男 (14:30-15:10)
5.猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症の疫学調査-日本国内のFIV株はどう変異しているか?臨床ではどうする?- 鹿児島大学臨床獣医学講座内科学分野 准教授 遠藤泰之 (15:20-16:00)
6.ネコ内在性レトロウイルス 京都大学ウイルス感染症研究センター 准教授 宮沢孝幸 (16:00-16:40) |
第23回 1月16日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
神経系と免疫系研究における最近の話題 担当: 応用免疫学教室 |
1.オーバービュー 東京大学大学院農学生命科学研究科応用免疫学教室 小野寺節
獣医学領域においては様々な最新技術が用いられている。かって、科学技術振興調整費の計画委員を行っていた時、その時点での生命科学のクリーンアップは癌、免疫、神経、それにゲノム、レンチウイルスであった。これらのキーワードを組み合わせる事のできる課題が予算の優先順位で高い評価を得ていた。それらの全てを半日の獣医学特論で述べる事はできない。
しかしながら、今回はゲノム、免疫系、神経系のキーワードを用いて講義内容を組み立てたい。理化学研究所および動物衛生研究所において、研究チームリーダー等をなさっている先生方に研究内容をお話いただく。
大学院生諸氏がこれらの分野における研究話題に興味を持っていただければ幸いである
。
2.脊椎動物特異的膜蛋白質ネトリンGとその受容体NGLの分子進化の意義
理化学研究所脳科学総合研究センター 糸原重美
脊椎動物の脳が示す高次機能は、遺伝子の多様化と、それに支えられた神経回路の複雑化および精緻化によって獲得された。この神経回路に“こころ”の物質的基盤があり、その機能不全が精神疾患等の原因である。我々は、神経回路の精緻化もしくは可塑性の分子機構を明らかにする目的で、脊椎動物固有の膜蛋白質の同定を試みた。その結果、ネトリン/UNC6ファミリーに属する新規分子ネトリンG1およびネトリンG2を同定した(仲柴ら2000, 2002)。ネトリンG1およびG2は古典的ネトリンと重要な相違点を持つ。まず、古典的ネトリンが分泌蛋白質であり、濃度勾配に基づいて長距離の軸索走行を制御するのに対し、ネトリンGsはGPIアンカーにより細胞膜に固定され、その様な機能を持たない。さらに、ネトリンGsは古典的ネトリンと受容体を共有しない。最近、ネトリンG1は膜蛋白質NGL1を、ネトリンG2はNGL2を受容体とし、両リガンド・受容体間に交差反応性が無いことが明らかにされた(西村ら 2007)。したがって、ネトリンG1とG2間、これらと古典的ネトリンとの間に機能的重複が無い。ネトリンG1とG2遺伝子は相互排他的な脳領域で発現し、独立した神経回路の軸索上に局在する。ネトリンG1およびG2欠損変異マウスの解析から、軸索上のネトリンG1あるいはG2が樹状突起上の受容体NGL-1あるいはNGL-2を回路特異的サブドメインに選択的に拘束し、樹状突起に機能的区画を与える事が明らかとされた(西村-穐吉ら 2007)。この機構は、脊椎動物の脳を特徴づける大脳皮質層構造の形成機構の一端を担う。皮質層構造は、多様な情報を高度に統合する基礎構造であると考えられており、ネトリンGsとNGLsの分子進化の意義が窺われる。我々は両遺伝子欠損変異マウスの行動学的解析および電気生理学的解析から、ネトリンGsとNGLsの相互作用が選択的神経回路で担う機能の重要性を明らかとしている。その概要と将来展望を話題としたい。
参考文献:
- NakashibaT, IkedaT, NishimuraS, TashiroK, HonjoT, CulottiJG, and Itohara S. Netrin-G1: a novel GPI-linked mammalian netrin that is functionally divergent from classical netrins. J Neurosci., 20: 6540-6550, 2000.
- Nakashiba T, Nishimura S, Ikeda T, and Itohara S. Complementary expression and neurite outgrowth activity of netrin-G subfamily members.Mech Dev., 111 47-60, 2002.
- Nishimura-Akiyoshi S, Niimi K, Nakashiba T, and Itohara S. Axonal netrin-Gs transneuronally determine lamina-specific subdendritic segments. Proc Natl Acad Sci USA104(37): 14801-14806, 2007.
3.ヨーネ病の問題点と解決への道筋 動物衛生研究所ヨーネ病研究チーム上席研究員 百溪英一
我が国・海外での汚染状況:ヨーネ病は抗酸菌に起因する家畜の伝染病で、これまでに清浄化を達成した国はなく、我が国では年間1000頭程度の摘発がなされが、国際的に見て清浄化の優等生である。昨年、米国農務省(USDA)は全米の大規模酪農農場のほとんどが汚染され少なくとも全乳牛の2%の牛が患畜であると報告した。2007年秋につくば市で開催された国際ヨーネ病学会でも各国の厳しいヨーネ病汚染状況や対策が報告された。ヨーネ病は静かに蔓延する伝染病であるが感染が広がった農場は悲惨な状況となり、防疫も著しく困難になるのである。
公衆衛生上の危惧:クローン病のヨーネ菌原因仮説や、それを裏付ける論文は1980年代からあるが、近年、患者の組織や血液などからの菌分離やDNAの検出報告が著しく増加し、2008年には米国微生物学会がヨーネ病の人への感染についてのレポートをまとめ、「クローン病患者の腸組織や血液にはヨーネ菌が7倍高く存在し、その関連性にはもはや疑いがない」とまで述べ、速やかな調査研究の推進を求めている。しかし、クローン病の原因は未だに不明であり、多くの異なる起源による症候群であるかもしれない。我が国の厚生労働省は「健康の安全確保という観点から、これを管理すべき疾病ととらえており。人への健康の影響ということが懸念される。」と公式に述べた。そのために、食品衛生におけるヨーネ菌感染の扱いが一段と強化された。近年、ヨーネ菌と関連していると報告された人の疾病にはクローン病以外に、過敏性腸症候群(IBS)や1型糖尿病などがある。もし、これらの難病の原因が明確になれば、予防や治療の道が開けることからも、ヨーネ菌に関する研究は急務である。上記の問題の根源にあるヨーネ病の特殊性、病理発生機序や分子生物学的特性から見たヨーネ菌の感染戦略と将来に向けての清浄化の可能性について紹介したい。
4.牛白血病ウイルス(BLV)による白血病発症機構の解明 理化学研究所 間陽子
エイズと白血病を引き起こすレトロウイルス[ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)、牛白血病ウイルス(BLV)及びT細胞白血病ウイルス (HTLV)]は進化過程において、通常のレトロウイルスに共通な遺伝子の他に、調節遺伝子とアクセサリー遺伝子による複雑でユニークな増殖制御機構と病原性発原機構を獲得してきた。演者はこれらウイルスの生物学的特性を担っていると考えられているこれら遺伝子を取り上げて、未解明であったレトロウイルス特有の複製、伝播、潜伏、再活性化様式を、細胞及び個体レベルの両面から解析してきた。
本講義では、HTLVに最も近縁なレトロウイルスで、長い潜伏期間の後に悪性Bリンパ腫である地方病性牛白血病 (EBL)を誘発するBLVに焦点をあてたい。EBLには有効な治療法はなく、発症すると必ず死の転帰をとることから畜産界に与える打撃は深刻である。また、感染個体ではその遺伝子発現が著しく低く維持されていることから、発癌にはウイルスのみならず宿主側の複数の要因が密接に関与していることが示唆されている。特に、レトロウイルス特有の潜伏化機構と宿主応答との相互作用、そしてBLVによるアポトーシス耐性と腫瘍化の機序についての我々の最近の知見をまじえながら紹介したい。
5.家畜サイトカインの生産技術とサイトカインによる家畜疾病防除法の開発 動物衛生研究所次世代製剤開発チーム長 犬丸茂樹
家畜飼養形態の大規模化、集約化にともない日和見感染症や複合感染症、慢性感染症および生産病など従来の防除技術では充分な効果が得られない家畜疾病が顕在化し、大きな経済的損失もたらしているため、厳しい経営状況にある畜産にとってこれらの疾病を防除するための新しい疾病防除技術の開発が重要な課題となっている。これに対する手段して、我々はサイトカインを利用した疾病防除法に着目している。
サイトカインを用いた疾病防除法を開発するには家畜への投与実験が不可欠であり、そのためにはサイトカインが大量に必要になる。そこで我々は家畜サイトカインの大量生産技術の開発に取り組み、昆虫培養細胞あるいはカイコを宿主とする2種類のバキュロウイルス遺伝子発現系を用いることによってウシのGM-CSF、IFN-γ、IFN-τ、ブタのGM-CSF、IL-2などの大量生産を可能にした。2種類の発現系の内、昆虫培養細胞を用いる系では無血清培地の中にサイトカインが分泌・蓄積するため、高度な精製を行わなくても動物実験に使用できるという利点があり、カイコを用いる系は生産効率が非常に高くコストを低く押さえられるため、家畜用サイトカイン製剤の実用化を図る際には有望な生産系となる。しかし、バキュロウイルス遺伝子発現系で生産される糖タンパク質は糖鎖構造が哺乳類細胞由来のものと異なるのが最大の欠点である。糖鎖構造はサイトカインの体内での安定性やアレルギーなどに関係することが考えられるため、糖鎖構造を改変する研究も必要である。
サイトカインの大量生産によりウシへの投与実験が可能になったため、組換えウシGM-CSFの乳房内投与によりウシの潜在性乳房炎の治療効果があることが分かり、治療技術の確立を目指して研究を行っている。また、IFNは抗ウイルス薬などとしての利用が期待されるため研究を推進している。今後、さらに研究協力の幅を広げることによって種々のサイトカインを利用した家畜疾病防除法が開発できると考えている。 |
第22回 11月21日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
「ヒトと動物の神経変性疾患―アルツハイマー病の進化―」 - 担当:獣医病理学教室 |
1.「神経変性疾患の臨床」 高尾昌樹(脳血管研究所・美原記念病院)
2.「アルツハイマー病の分子病態」 高島明彦(理化学研究所・脳研究センター)
3.「老齢動物の脳病理」 内田和幸(東京大学・獣医病理)
4.「アルツハイマー病の進化」 中山裕之(東京大学・獣医病理)
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第21回 10月10日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
「組織の損傷・修復と再生」- 担当:獣医外科学、高度医療科学教室 |
1.Introduction 東京大学農学生命科学研究科 西村 亮平 13:00~13:05日々の臨床の中では、常に様々な問題に直面するが、残念ながら完全な正解を得られることはあまり多くない。また、ある程度正解が得られたと思っている問題でも、新しい知見により例えば治療法が180度ひっくり返ってしまうことも中にはある。したがって我々は、何が問題であるのか意識し、それを解析する方法を考え、実際それを分析することによって解決法を探し出し、これを臨床に応用して行かなくてはならない。しかし、必ずしもこれは患者の抱える問題を解決する手段となるとは限らない。これは実用上の問題があるという場合もあるが、解析を行う時に問題の本質を十分見ていないということも少なくない。生体で生じる問題は、いくつもの要素が絡むため、試験管内で起きる現象ほど単純ではない(試験管内で起きる現象でも十分に複雑であるが)。
それでは、この問題をなくすことはできなくても、できるだけ小さくするためにはどうすればいいのであろうか。ここに臨床と基礎の融合がある。もともと臨床と基礎は生じている問題をどこから眺めているかの違いがあるだけで、違うものを見ているわけではない。臨床はその先に基礎があるからこそ面白いのであり、またその逆も真であると思う。
我々の研究室における最近の研究テーマの中に、術後の癒着防止、クモ膜下出血後の血管攣縮防止、筋ジストロフィー治療薬の開発、脊髄損傷に対する再生療法がある。これらには一見繋がりはないように見えるが、じっくり観察してみるとこれらの問題には組織の損傷・修復や炎症あるいは組織の再生という共通したキーワードがあることに気付く。先にも述べたように生体で起きている現象は、数多くの要素が複雑に絡んでいることが大部分なので、何か一つのメカニズムが分かれば一件落着というわけにはいかない。しかし、一つ一つの要素を丹念に解析し、これを積み重ねていくことこそが、真の問題解決の最も早道であるのではないだろうか。
このような背景から、今回の講義は、“組織の損傷・修復と再生”というテーマで、炎症の問題も絡めながら、3人の先生方にお話ししていただくことにした。おそらく、さまざまな分野の人たちに興味深い内容であると思う。活発な討議を期待している。
2.「アラキドン酸カスケード律速酵素であるPLA2の抑制による新規炎症抑制法の開発」 東京大学医学部病院ティッシュ・エンジニアリング部/株式会社ネクスト21 下畑 宣行 13:05~14:05生体中には様々な脂質分子が存在し、特に生理活性をもつものを脂質メディエーターと総称している。これら脂質メディエーターは生体中で様々な働きを担っており、免疫・炎症反応においても極めて重要な役割を演じている。最も代表的な脂質メディエーターであるプロスタグランジン (PG) やロイコトリエン (LT) などのアラキドン酸代謝物 (エイコサノイドとも呼ばれる) は古くから解析がなされてきており、臨床的知見、実験動物を用いた薬理学的知見や分子レベルでの解析によりその重要性が実証されている。PGは発熱や疼痛の原因となり、LTは炎症反応やアレルギー反応に重要な役割を果たしている。
PGやLTの前駆体であるアラキドン酸及びアラキドン酸代謝物の生合成に関わる一連の反応の流れを、アラキドン酸カスケードと呼んでいる。細胞にシグナルが伝達されると、細胞内でのカルシウムイオン濃度の上昇、MAPキナーゼ (MAPK) の活性化が誘導される。その結果、細胞質フォスフォリパーゼA2 (cPLA2) が活性化し、リン脂質膜からアラキドン酸を遊離させる。遊離したアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ (COX) 及びリポオキシゲナーゼ (LOX) といった酵素群の働きによって、それぞれPG、LTへと代謝されていく。解熱鎮痛作用をもつ非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) は、COX機能を抑制することにより、PGの生合成を阻害することによって薬理効果を得ている。さらに、ステロイド性抗炎症薬は、PLA2の活性を抑制することにより抗炎症作用を発揮する。
我々は従来知られている抗炎症薬とは異なる戦略で炎症反応を抑制する方法を見出した。二糖類の一種であるトレハロースは、生体膜を保護することによって炎症シグナルの細胞内への伝達を抑制し、PLA2活性を阻害して炎症反応を低下させる。トレハロースは乾燥や高熱といったストレスから生体分子を防護する性質を持っていることが知られている。さらに、種々の刺激物質に対するPLA2の活性を測定したところ、トレハロースによって活性化が抑制されていることがわかった。これらの知見を元に、臨床的なトレハロースの応用を現在検討しており、これまでの研究の進捗を解説する。
3.「組織損傷とPGD2」 大阪バイオサイエンス研究所分子行動生物学部門 有竹 浩介
14:05~15:05
プロスタグランジン(PG)D2は、肥満細胞、Th2リンパ球、マクロファージ、ミクログリアなどで活発に産生される炎症性の脂質メディエーターである。様々なPGの共通前駆体であるPGH2の9,11-endoperoxideを還元型グルタチオン(GSH)の存在下に、9-hydroxy, 11-keto groupを持つPGD2 に異性化するPGD合成酵素(PGDS)には、リポカリン型(L-型)と造血器型(H-型)の2種類の酵素が存在する。そして、造血器型PGD合成酵素 (H-PGDS)が、炎症やアレルギー反応でのPGD2の生合成に関与する。我々は、H-PGDSのラット、マウス、ヒトcDNAと、マウスおよびヒトの遺伝子のクローニングを行い、遺伝子ノックアウト(KO)マウスとヒト型酵素大量発現トランスジェニック(TG)マウスを作製して、これらの遺伝子操作マウスがアレルギー反応、脂質代謝、組織障害など様々な生理機能の異常を示すことを証明した。同時に、ラット或いはヒトの遺伝子組換え型酵素のX線結晶構造解析を行い、経口投与で有効な阻害剤との複合体のX線結晶構造を決定した。
本酵素は、190アミノ酸残基で構成される分子量26,000のモノマーからなるホモダイマー蛋白質であり、ダイマーの中央部にMg2+結合部位を持ち、サブmMのMg2+存在下にGSHに対する親和性と代謝回転数が増加する。アミノ酸配列の相同性解析の結果、本酵素は哺乳類で最初に同定されたシグマ型のGSH転移酵素であることが判明した。X線結晶構造解析の結果、本酵素の全体構造は他のGSH転移酵素と極めて類似しているが、触媒部位の構造は他のGSH転移酵素には見られない特徴的なクレフト構造を持つことが示された。さらに、ヒトH-PGDSと阻害薬複合体のX線結晶解析によって、触媒部位の微細な構造解析結果を基に、選択的かつ強力な阻害薬の分子設計が可能となった。
我々は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと多発性筋炎患者の生検組織、そのモデル動物であるmdxマウスや筋ジストロフィー犬の壊死筋周辺で H-PGDSの発現が昂進することを見出した。さらに、外傷性脳損傷や多発性硬化症患者の剖検脳組織、そのモデル動物である実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスの脱髄部位、あるいは遺伝的脱髄疾患モデルマウス(twitcherマウス)の脱髄部位でH-PGDSの発現が昂進することも見出した。そして、H-PGDS 阻害薬の投与は、mdxマウスや筋ジストロフィー犬の筋壊死、EAEマウスの脱髄、twitcherマウスの組織損傷の拡大を防止することを証明した。これらの結果は、PGD2が筋壊死や神経変性疾患などに伴う2次的な組織傷害の拡大に関与することを示唆し、H-PGDS 阻害薬が筋ジストロフィーや多発性硬化症などの難治性疾患の進行抑制薬としての開発の可能性を持つことを示す。
休憩 15:05~15:15
4.「脊髄損傷後の軸索再生制御機構の解明と軸索再生促進へのストラテジー」 慶應義塾大学整形外科/独立行政法人国立病院機構村山医療センター整形外科 金子 慎二郎 15:15~16:15
哺乳類成体中枢神経系のニューロンの軸索は末梢神経系のニューロンの軸索に比して再生能に乏しいが、その理由の1つとして中枢神経系の損傷部に於いては軸索の再生を阻害する様々な因子が存在するという事が挙げられる。一方、中枢神経系に於いては末梢神経系に比して損傷を受けたニューロンの軸索のintrinsicな再生能自体が乏しいという側面もあり、これらの軸索再生制御機構を分子生物学的に解明する事は、脊髄損傷等の中枢神経系の損傷後に、より良い軸索の再生を得る為には極めて重要な課題の1つであり、本講義ではこれらの事項に焦点を当てて概説する。
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第20回 7月18日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
Frontier of Gastrointestinal Research (Topics)-
消化管研究の最前線(トピックス)
- 担当:獣医薬理学教室
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1.はじめに Introduction 尾崎 博(東京大学獣医薬理学教室)13:00~13:102.腸内細菌によるIL6トランスシグナリングの活性化と腸粘膜炎症性疾患
ヤクルト中央研究所 松本 敏消化管粘膜は、粘膜上皮細胞を隔てて多数の常在性腸内細菌と接している。常在性腸内細菌は、おそらく宿主免疫機構による認識によってそのポピュレーションサイズが調節され、一方、宿主側においては、常在性腸内細菌に対する免疫学的な不応答が粘膜免疫機構に誘導されることで、両者の生理的バランスが保たれていることが推定される。炎症性腸疾患(IBD)の病態発症機序として、宿主の遺伝子背景を基礎とした常在性腸内細菌に対する免疫学的不応答機構の解除や消化管粘膜バリア機構の破綻に起因した腸粘膜における炎症性及び炎症抑制性サイトカインのバランス異常が推定されている。その根拠として、腸粘膜炎症性腸疾患(IBD)や消化管炎症を基盤として発症するある種の大腸癌: colitis-associated-cancer (CAC)等、消化管炎症疾患モデルは無菌飼育環境下では疾患発症が観察されない。IBDやCACモデルの腸粘膜では、IL6/Stat3経路の活性化が顕著であることを明らかにした。また、上記モデルの腸粘膜における過剰なIL6/Stat3経路の活性化は、CD4+ T細胞や粘膜マクロファージにより分泌されるIL6と活性化マクロファージ細胞膜上より切り出される可溶性IL6受容体蛋白質(sIL6Ra)との複合体と標的細胞膜上のgp130受容体を介した、いわゆる古典的な膜結合型IL6レセプターを用いたIL6シグナル伝達経路とは異なるIL6シグナルの増幅結果(IL6トランスシグナリング)であった。本講義では、IBDやCACモデルを用いたIL6ランスシグナリングの活性化と腸内細菌との関連性について解説し、腸内細菌や上記シグナルをターゲットとした病態抑制の可能性について議論したい。
3.経口免疫寛容と食物アレルギー反応:タンパク質抗原の経口摂取により誘導される免疫抑制と免疫疾患について 農学生命科学研究科 食の安全研究センター 八村敏志腸管は、栄養吸収器官である一方で、経口的に侵入した病原体に対する生体防御の最前線であるという性質のため、最大級の免疫器官となっており、免疫応答が巧妙に制御されている。経口摂取されたタンパク質抗原に対しては、抗原特異的免疫応答能の低下が誘導され、経口免疫寛容 (oral tolerance)と呼ばれている。経口免疫寛容は摂取した食品タンパク質に対する過剰な免疫応答を抑制し、食物(食品)アレルギーの抑制機構の一つとされている。本講義では、経口免疫寛容の誘導機序および食物アレルギー反応との関係について解説したい。
経口免疫寛容による免疫応答低下は、T細胞によるものであることが知られており、その機構として、抗原特異的T 細胞の低応答化、抗原特異的T細胞のアポトーシス誘導、制御性T細胞による抑制が示されている。我々は、卵白アルブミン(OVA) 特異的T細胞抗原レセプター(TCR)を発現するDO11.10 TCRトランスジェニックマウスを用いて、経口免疫寛容状態のT細胞の解析を行ってきた。OVAを経口投与したDO11.10マウスにおいては、OVA特異的CD4 T細胞の増殖応答、IL-2産生応答の低下、およびその免疫抑制機能が観察できる。我々はこのT細胞において、TCRからの細胞内シグナル伝達(特に細胞内カルシウム濃度上昇に関わる経路)に変化が生じることを示してきた。また、最近この経口免疫寛容T細胞が細胞表面分子CD62L/CD44の発現により免疫抑制機能の異なる細胞集団に分離できることを見出した。 一方で、同じくOVA特異的TCRトランスジェニックマウスであるOVA 23-3マウスに20%卵白飼料を経口摂取させると血中に特異的IgE抗体応答、小腸に組織形態変化を伴う炎症が誘導されることを明らかにしている。このマウスにおいては卵白飼料の短期間の摂取で、脾臓、腸間膜リンパ節のT細胞のIL-4産生能が亢進しており、Th2細胞の誘導がIgE応答、小腸の炎症に関与していることが示唆された。この実験系においても摂取期間が長くなると、T細胞の応答性は著しく減少し、T細胞が経口免疫寛容状態となる。これらの結果より、経口免疫寛容の誘導過程における一過的Th2応答がアレルギー反応の要因になることが示唆された。最近、食品成分の免疫調節機能が注目されているが、上記の動物モデルを用いて、オリゴ糖などによるTh2型応答やIgE応答を抑制する作用を見出している。これらについても紹介したい。4.腸管上皮細胞の免疫調節機能とその食品成分による制御 応用生命化学専攻 食糧化学研究室 戸塚 護
腸管は常に常在菌や病原菌、様々な食品由来成分に曝されており、栄養素の吸収・代謝と同時に、共生細菌との共存、病原菌の排除などの複雑な役割を担っている。腸管上皮細胞(IEC)は、タイトジャンクションを形成して物理的なバリアとなるだけでなく、管腔内への抗菌ペプチド分泌や分泌型IgAの輸送により常在菌の侵入を防いでいる。さらに、様々な刺激に応答し、サイトカイン・ケモカインなどの産生を介して、上皮内あるいは粘膜固有層に存在する免疫担当細胞の働きを調節する機構も明らかにされつつある。小腸IECは、通常状態で外来抗原の提示に必須のMHCクラスII分子を発現している。管腔内抗原の認識に重要な役割を果たしているものと考えられるが、その生理的意義は不明である。このようにIECの免疫調節機能には未解明な点が多く残されている。腸管での免疫調節機能の破綻が、炎症性腸疾患などの発症に深く関わっており、腸管免疫系の構成要素としてのIECが果たす役割を明らかにすることは、病態の解明においても重要である。また、広大な腸管粘膜表面を構成する上皮細胞は、プロバイオティクスをはじめとする免疫調節機能を有する食品成分の作用点としても重要な意義をもつ。
我々は、特に小腸IECの免疫調節機能を明らかにするとともに、それに影響を与える食品成分のin vitro評価法を確立することを目的として、マウス小腸IECの初代培養系の構築、および新規小腸IEC株の樹立を行ってきた。導入したガン遺伝子の発現をテトラサイクリンで制御可能な小腸IEC株は、ガン遺伝子の発現抑制により増殖を停止し、クリプト型IECの表現型から、絨毛上部の成熟型IECの表現型を示すように分化することを明らかにした。それに伴いリポ多糖など菌体成分刺激に対する応答性は上昇した。マウス小腸IEC株のMHCクラスII分子を介した抗原提示機能を解析したところ、CD4陽性の小腸上皮細胞間リンパ球(IEL)に対しては、増殖応答誘導能は低いにも関わらず、IFN-γ産生を強く誘導することが見いだされた。また、ビフィズス菌体で刺激したマウス小腸IEC株の培養上清には、粘膜固有層B細胞のIgA産生を増加させる因子の存在が認められた。ビフィズス菌体は、ヒト腸管上皮細胞株Caco-2およびマウス腸管組織培養系で、分泌型IgAの管腔側への輸送を担う多量体免疫グロブリン受容体(pIgR)の発現を増強することも示された。
一方、Caco-2細胞を用いて、炎症時に誘導されるサイトカイン・ケモカイン産生を抑制する食品由来成分についても解析を行ってきた。これまでに、肉などに多く含まれるジペプチドであるカルノシン、コーヒーに多く含まれるクロロゲン酸およびカフェ酸がIL-8産生を抑制すること、概日リズムを司るホルモンであり、ナッツ類などにも多く含まれるメラトニンはIL-8産生には影響しないが、IL-6産生を抑制する活性を有することが示された。これらの成分は腸炎症の制御に有効であることが期待される。
5.消化管炎症と運動機能 東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医薬理学教室堀 正敏Mechanism of intestinal motility disorder induced by inflammation:Department of Veterinary Pharmacology, Graduate School of Agriculture and Life Sciences, The University of Tokyo Masatoshi Hori消化管における炎症性の疾患には、厚生労働省難病指定を受けている炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Diseases; IBD)をはじめ、細菌、ウイルス、寄生虫による感染性の腸炎、腸閉塞や腸穿孔、さらには外科手術による術後腸麻痺に至るまで、さまざまな原因による疾患が含まれる。また、最近では炎症応答を伴わないとされていた、下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群(IBS)も、精神的ストレスだけでなく局所での軽微な炎症応答が深く関与することがわかってきた。これらの炎症性の腸疾患は、獣医領域でも大きな問題となっており、ブタの増殖性腸炎を始めとする産業動物での様々な感染性の腸炎、コンパニオンアニマル、特にイヌでのIBD様疾患やIBS様疾患がその例としてあげられよう。
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)では消化管における免疫異常が重要な役割を果たしており、これまで粘膜免疫に着目した研究が精力的に行われている。一方、これら腸炎疾患では消化管運動機能障害が観察される。腸炎疾患における消化管運動機能の抑制は、腸内容物の停滞から腸内フローラを変動させ、エンドトキシンなどの菌体毒素の曝露によってさらに腸粘膜炎症を悪化させる。したがって、腸炎疾患の治療や予後において、消化管運動機能の回復と維持は重要な治療項目として位置づけられている。しかし腸炎疾患における消化管運動機能障害に関する研究は驚くほど遅れている。近年、消化管平滑筋層にも常在型マクロファージなど固有の免疫系の存在が明らかとなっており、かつ腸炎時には粘膜層のみならず平滑筋層においてもサイトカイン発現上昇が確認されている。すなわち、サイトカインの持続的な消化管筋層への暴露が消化管運動機能障害の原因となっている可能性が考えられている。
我々は、消化管平滑筋層が細菌毒素や炎症性サイトカインに長期間暴露されることで平滑筋細胞自身に機能異常をきたすのではないかとの仮説をたて、消化管運動機能障害の分子メカニズムの解明に取り組んできた。今回は、はじめに消化管運動を制御する細胞群について概説した後、エンドトキシンや炎症性サイトカインの曝露により、どのような分子機構で消化管運動が障害を受けるかIn vitroとIn vivoでの実験データーを元に解説する。
6.過敏性腸症候群における病態研究と今後の治療法 ヤクルト中央研究所 河合光久
消化管機能性疾患の一つである過敏性腸症候群は、消化管に器質的病変が存在せず、腸の機能異常により腹痛、便通異常(下痢、便秘)を呈する疾患である。その病態メカニズムは未だ不明であるものの、ストレスや不安あるいは消化管感染症などの既往歴が病態発生にかかわりを持つといわれている。
基礎研究分野では、ラットにストレスを負荷したモデルや大腸炎を起こした病態モデルが開発され、医薬品や食品研究などで汎用されている。我々はTNBS(2,4,6-trinitrobenzensulfonic acid)を大腸起始部に処置した大腸炎モデルラットを内臓痛治療薬の研究に活用している。このモデルはTNBS処置1週間後に大腸遠位部にバルーンを挿入し、大腸伸展刺激を行うと、対照動物に比べて低いバルーン内圧で腹筋収縮を示す代表的な内臓痛モデルである。近年、消化管粘膜下の肥満細胞がIBS病態に重要な役割を果たしていると報告されている。そこで、我々もTNBS大腸炎モデルの炎症誘発部位とは異なるバルーン伸展刺激部位の大腸粘膜組織を調べたところ肥満細胞の増加が観察され、組織中にRMCP-2(rat mast cell protease-2)の増加も認められた。また、薬理学的な検討のため行った肥満細胞の膜安定化剤であるドキサントラゾールの処置はTNBSによる内臓痛の閾値の低下を有意に抑制した。このことは過敏性腸症候群の病態に腸の粘膜下にある肥満細胞が重要な役割を果たしている可能性を示している。同様のモデルを使った研究者は、その大腸粘膜あるいは腸内神経叢にセロトニン、CGRPなどの含有細胞や伝達物質の増加がみられることを報告した。したがって、これらの結果は、肥満細胞や粘膜上皮細胞から分泌される物質の増加が腸内に分布する知覚神経に作用し、持続的な興奮を引き起こして病態を形成している可能性を示している。近年、過敏性腸症候群の予防や治療効果を目的とした臨床試験でも、いくつかのプロバイオティクスが IBS患者の内臓痛や腹部不快感などの症状を改善したという報告がなされている。しかし、その一方で、有効性が不十分であったという成績もあり、今後プロバイオティクスの有効性と作用機序は慎重に検証されなくてはならない。特にプロバイオティクスの基礎研究にも病態モデルを用いた評価・解析を取り入れ、その効果の信頼性を高めることが必要と考える。
以上のことから、過敏性腸症候群の病態モデルの研究は、今後の本疾患の新規薬物、プロバイオティクス、機能性食品や新しい治療法および診断法の開発に有用な情報を与えるツールになると思われる。
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第19回 5月21日(水)13:00~16:40(弥生講堂) |
Beyond Genetics and Epigenetics for Veterinary Sciences
担当:細胞生化学教室(講義は英語で行われる) |
講義内容 |
1.
Introduction to “Beyond Genetics and Epigenetics for Veterinary Sciences
(13:00-13:15 ) |
東京大学大学院応用動物科学・獣医学専攻
塩田邦郎 博士 |
2.
Interspecies hybrids and reproduction (13:20-14:20) |
コーネル大学獣医学部教授 およびJames A. Baker Institute所長 Douglas . F. Antczak 博士 |
3. Dystrophic dogs as an animal model of Duchenne muscular dystrophy(14:30-15:30) |
国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部部長
武田 伸一 博士
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4. Chromatin remodeling and ovarian function
(15:40-16:40) |
モントリオール大学獣医学部教授 およびCentre de recherche en reproduction animale所長
Bruce D. Murphy 博士
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13:00-13:15Introduction to “Beyond Genetics and Epigenetics for Veterinary Sciences” 塩田 邦郎 東京大学大学院応用動物科学・獣医学専攻
病気の理解と新たな予防・治療法確立には、分子・ゲノム・エピゲノムレベルでの個体の理解が不可欠である。個体観察のみでも、分子・細胞の理解のみでは不十分である。今回の講義は、これらを意識して、個体の病理と生理学研究についてゲノムとエピゲノムレベル研究の最前線の先生方にお願いしました。コーネル大学やモントリオール大学、および国立精神・神経センター神経研究所の現場や学園風景も示される。
13:20-14:20Interspecies hybrids and reproductionDouglas . F. Antczak 博士コーネル大学獣医学部教授 およびJames A. Baker Institute所長
馬の研究所として有名な研究所に所属し、免疫、生殖、およびゲノム研究の第1人者である。多くの実験では近交系の実験動物が研究の材料であるが、人を含む殆どは遺伝子は不均一である。今回の講義は雑種強勢(弱勢)についてウマ、ロバ、ラバの研究を基礎に、ジェネティクスとエピジェネティクスの講義となる。14:30-15:30
Dystrophic dogs as an animal model of Duchenne muscular dystrophy 武田 伸一 博士 国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部部長
遺伝性疾患は深刻である。筋ジストロフィーの原因遺伝子はすでに明らかになっているが、マウスでは発症は見られず、人でも発症時期はまちまちで、症状も複雑である。原因遺伝子が明らかになっても発症の原因は別である。いかにして新たな治療法を確立するか、イヌを使った研究の重要性を示す。
15:40-16:40
Chromatin remodeling and ovarian function Bruce D. Murphy 博士 モントリオール大学獣医学部教授 およびCentre de recherche en reproduction animale所長
全ての体の細胞は受精卵から分化している。卵は体細胞からPrimordial Germ Cellを経由して発生する。卵と卵巣の発生・分化のエピジェネティクス制御について、クロマチンの構造変化を中心にした講義となる。博士は、実験動物ばかりでなく、ミンクや牛、豚など、様々な動物について造詣が深く、どのような話になるのか、楽しみである。 |
第18回 1月18日(金)10:40~15:30(弥生講堂) |
食中毒細菌の挙動とその制御
担当:獣医公衆衛生学教室 |
講義内容 |
1.食中毒細菌の挙動とその制御?はじめにー(10:40-11:00 ) |
東京大学 熊谷進 |
2.
腸管出血性大腸菌O157:H7の遺伝子型変異機構の解析
(11:00-11:45) |
動物衛生研究所 秋庭正人 |
3.
腸管出血性大腸菌食中毒とその原因検証のための公衆衛生学的研究(13:00-13:45) |
国立医薬品食品衛生研究所 工藤由起子
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4.
ブドウ球菌エンテロトキシン研究の新展開(13:45-14:30) |
岩手大学 重茂克彦
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5.
カンピロバクターのバイオフィルム形成能とその生物学的意義(14:30-15:15) |
宮崎大学 三澤尚明
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7.
全体質疑
(15:15-15:30) |
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食中毒細菌の挙動とその制御ーはじめにー 熊谷 進 (東京大学大学院農学生命科学研究科)第二次世界大戦後、食中毒患者数は最初の数年間を除き毎年2?6万人で推移してきた。この間、死亡者数は年間数百万人から徐々に減少し、この約20年間は年間10人前後で推移している。この減少は、食品衛生の向上によるとともに、医療の進歩によるところが大きい。この約半世紀間、患者数に減少傾向が見られないのは、食中毒病因物質の種類が漸次追加されてきたこともあって、報告される事例の割合いが増加してきたことと、食品の製造流通規模の大型化に伴う大型食中毒事例の発生を反映したものと考えられる。この十数年の細菌性食中毒発生の特徴はとくに、サルモネラ、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌,カンピロバクター、黄色ブドウ球菌に見ることができる。サルモネラ食中毒は、欧米諸国に少し遅れて平成4年頃から、鶏卵のサルモネラ・エンテリティディス汚染に起因して年々増加したが、平成10年頃から減少し現在に至っている。腸炎ビブリオ食中毒はもともと我が国において、最も発生頻度が高く患者数も多い食中毒と認識されていたが、平成4年に著しく減少してから再び平成9年と10年に増加したが、この増加は東南アジアや米国においても同じ時期に増加が認められた血清型O3:K6による食中毒の増加を反映したものである。平成8年に腸管出血性大腸菌による大規模食中毒事例が相次いで発生した。学校給食等の大量調理施設の衛生管理の強化や食肉処理工程の改善が速やかに図られ、その後、食中毒は減少したが依然として集団事例は見られる。カンピロバクター食中毒は平成9年から増加し、その後、食鳥処理場における衛生水準の向上への対策が講じられたが、減少せずに現在に至っており、その制御が望まれている。黄色ブドウ球菌による食中毒は耐熱性のエンテロトキシンによって起こるが、乳業メーカーによる衛生管理不良により大型の食中毒が発生したことがある。これら細菌性食中毒については、原因食品や汚染経路、食材の汚染実態や汚染機序などの調査を踏まえ、食中毒発生防除のための対策が講じられてきた。その後の食中毒発生状況から、それら対策が功を奏したと考えられるが、さらに有効な方策を講じるためには、食中毒細菌の挙動に関する科学的知見の集積が必要である。加えて、今後とるべき対策の効果を予測するために、微生物学的リスク評価手法を十分に活用することが望まれるが、その精度を高めるために、食中毒細菌の挙動や病原性の研究ならびに同細菌に対する人の感受性に関わる研究の発展が望まれる。この講義では、こうした食中毒細菌の挙動と病原性に関わる最近の知見を、それぞれの専門家が紹介する。腸管出血性大腸菌O157:H7の遺伝子型変異機構の解析 秋庭正人 (動物衛生研究所安全性研究チーム)【背景】腸管出血性大腸菌O157:H7(O157)は最も重要な食品媒介性人獣共通感染症病原体の一つであり、牛が主要な保菌動物と認識されている。本菌の分子疫学的解析手法としてはパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を利用した遺伝子型別法が広く用いられる。PFGEは巨大DNAを分離するための技術であり、制限酵素消化ゲノムDNAのPFGE像の相違に基づいて遺伝子型が決定される。我々は牛由来O157のPFGEによる解析を行う過程で、牛の腸管内で遺伝子型が変化する現象を見いだした。この遺伝子型変異の機構や意義を明らかにする目的で一連の研究を行った。【実験結果】実験感染牛及び試験管継代における遺伝子型変異-Sakai株を投与した4頭の実験感染牛から経時的に分離したO157、計913株の遺伝子型をPFGEにより解析したところ、全頭で投与2日後までに投与菌と遺伝子型の異なる株の出現を認めた。供試913株はPFGEにより13の遺伝子型(B1~13)に型別され、投与菌と同じB1型が620株と全体の68%を占めた。B1型以外の12遺伝子型のうち、B2型が185株と全体の20%を占めた。4頭の牛で同様の傾向が認められたことから、生体内通過による本菌の遺伝子型変異には方向性が存在する可能性が示唆された。一方、試験管継代により分離した968株はPFGEにより13の遺伝子型(T1~13)に型別された。投与菌と同じT1(B1)が277株、B2型と同じT3型が326株と、それぞれ全体の28、34%を占めた。実験感染牛及び試験管継代由来株で共通の遺伝子型は4型認められた。変異菌の制限酵素切断部位の解析-Sakai株の全ゲノム塩基配列情報によるとXba I切断部位は染色体上に40ヶ所、プラスミド上に2ヶ所存在する。これらの部位をPCRで増幅し、Xba I切断部位上に変異が存在するか否かを調べた。染色体上40ヶ所のXba I切断部位のうち、5ヶ所でPCR増幅を認めなかった。その他35増幅断片はXba Iで切断できた。
Whole Genome PCR Scanning(WGPS)による遺伝子型変異の解析-WGPSとは全ゲノムを10-20 kbのフラグメントに分け(約460断片)、それぞれの断片をPCRで増幅することで、ゲノム上の挿入・脱落変異を検出する技術である。実験感染牛由来の変異株を用いてWGPS解析したところ、遺伝子型特異的な変化としては、プロファージの脱落が3ヶ所で認められた。また、その他の遺伝子領域の脱落が2ヶ所で認められ、うち1ヶ所にはシグマ因子を規定するrpoSを含む17遺伝子が存在した。
変異菌の性状解析 -変異菌のストレス耐性を調べたところ、上記のrpoS脱落株で酸、高温、浸透圧、胆汁酸に対する抵抗性が減弱していた。投与菌と比較してストレス抵抗性が増強した株は認められなかった。【考察】 遺伝子型変異機構の一つとしてプロファージを含むゲノムDNAの脱落が関与することが示されたが、これだけではO157遺伝子型の多様性を説明できない。他の機構の関与も検討する必要がある。また、変異菌の中に腸管内における生存性に有利と思われる形質の獲得は認めなかった。現段階で遺伝子型変異を菌側の適応現象として説明することはできない。腸管出血性大腸菌食中毒とその原因検証のための公衆衛生学的研究 工藤由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)腸管出血性大腸菌による食中毒は1980年代から問題になり、現在では世界的に多発している。近年、国際機関や各国において食品の健康影響評価を目的とした微生物学的リスクアセスメントが始まり、リスクマネジメントに関与し影響を与えうる要因を、食品の生産、製造、流通、消費における各段階で解析し、食中毒が減少するための対策に役立つ情報を科学的に示す事が求められている。腸管出血性大腸菌についても芽野菜や牛肉などを対象として行われている。今回は生産段階および消費段階での食中毒発生の要因や危害把握のための食品からの腸管出血性大腸菌の検出についての研究を紹介する。1. 発芽野菜の汚染についての研究発芽野菜は腸管出血性大腸菌O157やサルモネラなどの食中毒の原因として多くの報告があり、日本では1996年に発生した腸管出血性大腸菌O157 による大規模食中毒の原因食材としてカイワレ大根が疑われた。その後もカイワレ大根による食中毒事件が発生しており汚染の機序や菌の分布についての解明が求められた。汚染種子からの栽培や生育後の汚染などを想定し、菌の汚染について解析した。2. 食中毒発生事例での検証における酸度、塩濃度および温度の菌挙動への影響細菌の挙動には温度、pH、水分活性、栄養、抗菌性物質の存在など多くの条件が影響するが、これらが食中毒の発生の有無を左右したことが考えられる事例があった。二校分の学校給食を同一の施設で同一の食材を用いて調理したにもかかわらず、一校でのみ食中毒が発生した。調理条件の差違によって本事例が矛盾なく説明することが可能か否かについて、実験を行い考察した。3. 食品からの検出についての研究腸管出血性大腸菌O157は発症菌量が低い病原微生物のひとつであり、汚染食品からの検出法の感度も高くなければならない。食品中には多くの雑多な微生物が存在することが少なくない。例えば、1gあたり106の細菌が存在する中のひとつの腸管出血性大腸菌をとらえなければならないこともある。食中毒の原因究明や防止に貢献する効果的な検出法を目指して、基本となる培養法や培養法を補う遺伝子検査法を組み合わせた検査法の確立を行った。
ブドウ球菌エンテロトキシン研究の新展開 重茂克彦(岩手大学農学部獣医学課程食品安全学)ブドウ球菌エンテロトキシン (staphylococcal enterotoxin; SE) は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が産生する外毒素であり、ブドウ球菌食中毒の原因毒素であると共に、スーパー抗原活性を有しToxic Shock Syndromeにも関与するとされている。SEsは、従来SEA-SEEの5型が知られていたが、近年多数の新型SEsの存在が報告された。現在までにSEG, SEI, SElJ, SElK, SElL, SElM, SElN, SElO, SElP, SElQ, SElR, SElU, SElVが報告されており、SEsは極めて多様性の高い毒素群であることが明らかになってきている。しかしながら、現在食中毒への関与が明確にされているのはSEA-SEEの古典的SEsであり、新型SEsの食中毒原性の解明は重要な研究課題である。 我々は、これまでに新型SEs遺伝子の探索を行い、いくつかの新型SEsを同定してきた。また、ほぼ全ての新型SEs遺伝子を検出することができるmultiplex PCRの系を確立し、食中毒由来株を始めとする種々の黄色ブドウ球菌菌株のSEs遺伝子保有状況を調査し、多くの黄色ブドウ球菌が新型SEs遺伝子を含む複数のSEs遺伝子を保有していることを明らかにした。さらに、新型SEs遺伝子をクローニングし、大腸菌発現系により発現・精製する系を確立した。得られた組換え型SEsを抗原として特異抗体を作成し、新型SEsの免疫学的検出法を確立してその産生量を評価すると共に、新型SEsの生物活性(スーパー抗原活性および嘔吐活性)の解析を進めている。今回の講義では、これらのデータを総合し、新型SEsはヒト食中毒の原因毒素になり得るか否かを考察したい。 また、SE遺伝子はプロファージやpathogenecity islandsといったgenomic islands (GI)や、プラスミドのような可動性遺伝因子によってコードされており、菌株間を水平移動することにより黄色ブドウ球菌の病原体としての進化に関わっていると考えられている。SE遺伝子をコードする可動性遺伝因子の多様性についても言及したい。カンピロバクターのバイオフィルム形成能とその生物学的意義 三澤 尚明 (宮崎大学 農学部 獣医公衆衛生学講座)
食中毒細菌の一種であるカンピロバクター (Campylobacter jejuni/coli)はグラム陰性,微好気性のラセン桿菌で、家禽、家畜、伴侶動物および野生動物の消化管内に広く分布し、主に菌に汚染された食品や飲料水を介して人に感染する。特にわが国では牛肉、鶏肉、レバー等の生食の食習慣があるため、カンピロバクターに感染する危険性が高く、公衆衛生上問題となっている。C. jejuniは,実験的には30℃以下の温度では増殖できず、大気中の酸素濃度で速やかに死減するため、食品等の環境は動物の腸管内よりも厳しい生存環境であると考えられる。しかしながら、本菌は低温保存などのある条件下では食品中で長期間生存することが知られており、河川や下水からも分離されることから、このような環境に適応して生存するための戦略を兼ね備えていると考えられる。従って多様に変化する環境要因に応答する遺伝子を検索し、それらの発現や調節機構が菌の環境中での生存様式とどのように関連しているかを明らかにすることは、本菌による食中毒発症機序を理解する上で重要である。Campylobacter jejuniの細胞壁外側にはスライムと呼ばれる有機ポリマーが付着し、液体培地中で培養すると容器として用いたガラスやプラスチックの表面に付着して、いわゆるバイオフィルムを形成することを我々は観察してきた。バイオフィルムの形成は多くの細菌で認められ、外部環境から菌体自身を保護したり、化学療法剤や宿主免疫機構に抵抗性を示すこと等が知られている。そこで我々は、Campylobacterの環境・食品中での生存性におけるバイオフィルムの役割を明らかにするため、バイオフィルムの形成過程を形態学的に観察し、バイオフィルムの形成に関与すると考えられる遺伝子群をゲノム情報から推定し、これらのノックアウトミュータントを作製してそれらの機能を調べた。8種類の遺伝子をそれぞれ破壊した変異株を得ることができた。変異株のバイオフィルム形成能を野生株と比較したところ、鞭毛の発現に関与するflaAflaB、flbA、pflA及び運動性に関与するmotA変異株のバイオフィルム形成能は培養後72時間まで有意に低かった。一方、莢膜多糖の発現に関与するkpsM変異株の形成能は72時間以上培養した場合、野生株と有意差は認められなかった。以上の結果から、バイオフィルム形成能には鞭毛による運動性が必要条件であり、フィルムの構成成分であるスライムの菌体外への放出と密接に関連していると考えられた。乾燥抵抗性試験では5日後において、motAミュータント及びplanktonicな状態ではほとんど死滅したのに対し、バイオフィルム形成菌では多くの菌が生残していた。加熱抵抗性試験ではバイオフィルム形成菌の方がより高温、長時間の感作において生残していた。消毒剤の殺菌作用に対する抵抗性試験でもバイオフィルム形成時の方が高濃度、長時間の作用に抵抗性を示した。このようにC. jejuniが形成するバイオフィルムは種々の物理化学的処理に対して抵抗性を示すことから、集合体を形成することで環境中における生残性や薬剤抵抗性に重要な役割を持つことが示唆された。
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第17回 10月26日(金)13:00~17:20(弥生講堂) |
ウイルス研究の最前線
担当:獣医微生物学教室 |
講義内容 |
1. イントロダクション(13:00-13:10 ) |
東京大学大学院農学生命科学研究科 明石博臣 |
2. ウイルス粒子成熟過程のリアルタイムイメージング (13:10-14:10) |
東京大学医科学研究所感染症国際研究センター 川口寧 |
3. ボルナ病ウイルス:静かに広がる人獣感染ウイルスとその分子生物学 (14:10-15:10) |
大阪大学微生物病研究所ウイルス免疫分野 朝長啓造 |
休憩(15:10-15:20) |
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5. 鳥インフルエンザ:感染の仕組みと制御 (15:20-16:20) |
東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野 堀本泰介 |
6. コアラレトロウイルスの生態学 (16:20-17:20) |
京都大学ウイルス研究所附属新興ウイルス感染症研究センター病態解明チーム 宮沢孝幸 |
ウイルス粒子成熟過程のリアルタイムイメージング東京大学医科学研究所感染症国際研究センター 川口 寧 ウイルスの定義の1つとして、「ウイルス粒子は極めて微小である。よって、光学顕微鏡で観察することができない」という記述がウイルス学の教科書にはあった。それゆえに、ウイルス粒子成熟過程の解析では、電子顕微鏡による解析が必須であった。周知のように、電子顕微鏡の解析では、感染細胞を固定する必要がある。しかし、ダイナミックな動態を示すウイルス粒子成熟過程の解析において、固定した細胞から得られる情報は限られていた。近年の光学顕微鏡の技術的進歩、また、様々な蛍光蛋白質および蛍光物質の開発は、生きた細胞内におけるウイルス粒子の様々な動態を光学顕微鏡で観察するリアルタイムイメージングを可能とした。リアルタイムイメージングでは、同一細胞内での感染現象を経時的に観察することが可能である。また、3次元立体構築を用いたイメージング解析は、標的としているウイルス感染現象の空間的な位置を解析することも可能である。これら感染細胞の時空間的な解析技術は、ウイルス粒子成熟過程の研究に大きなインパクトを与え、従来では得ることのできない新知見が報告され始めている。本講演では、これらウイルス粒子の可視化技術の実際を我々の研究グループの知見を中心に紹介する。ボルナ病ウイルス:静かに広がる人獣感染ウイルスとその分子生物学大阪大学微生物病研究所ウイルス免疫分野 朝長啓造 ボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)は、脳神経細胞に強い感染性を持つRNAウイルスである。BDVはドイツ南東部で発生するウマの風土病の原因ウイルスとして同定された。しかしながら、現在、その感染はヒトを含む多くの温血動物で確認されている。わが国では、ウマやウシなどの家畜、そしてイヌやネコなどのペットで、BDV感染と感染に起因すると思われる神経疾患が報告されている。また、野生のニホンザルやアライグマにも特異抗体が確認されており、わが国における感染の広がりが示唆されている。ヒトへの感染も証明されているが、健常者にも抗体陽性者が存在するなど、特定疾患との関連性は明らかにされてない。一方、BDVは動物由来RNAウイルスの中で、唯一、細胞核で持続感染するなど、RNAウイルスとして極めてユニークな性状を示すことが知られている。本講義では、BDV感染の現状に加えて、これまでに明らかとなった神経病原性の発現機序や細胞核を利用した複製機構について紹介したい。鳥インフルエンザ:感染の仕組みと制御東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野 堀本泰介 インフルエンザは毎年流行する急性の呼吸器疾患である。ウイルス抗原性の頻繁な連続変異があるものの、自然免疫力と過去の感染記憶やワクチン接種で誘導される交差反応性を含む防御免疫により通常は一過性の症状にとどまる。対して、全く異なる抗原性(不連続変異)のウイルスが出現すると免疫がナイーブであるため、世界的大流行(パンデミック)により多くの人が犠牲になる。1918年のスペイン風邪(H1N1ウイルス)、1957年のアジア風邪(H2N2)、1968年の香港風邪(H3N2)である。今、人類はH5N1高病原性鳥ウイルスによる未曾有のパンデミックの危機に面している。もともと家禽のみに全身性疾患を引き起こすこの鳥ウイルスが、人に感染し死者を出している(致死率60%)。次第に明らかになってきたその感染分子機構は、わずかな変異でこの鳥ウイルスが恐怖のパンデミックウイルスに変貌する可能性を強く示している。さらに、抗インフルエンザ薬(タミフル)に対する耐性ウイルスも分離されている。有効なワクチンの実用化ははたして間に合うのか?本講義では、H5N1ウイルスの感染機構とその制御法についてまとめてみたい。コアラレトロウイルスの生態学
京都大学ウイルス研究所附属新興ウイルス感染症研究センター
病態解明チーム
宮沢孝幸
レトロウイルスは、複製過程においてウイルスゲノムRNAをDNAに変換し、宿主のゲノムに入り込むという性質をもっている。もしレトロウイルスが生殖細胞に感染し個体として発生した場合、すべての細胞にウイルスゲノムが存在することになる。これを「内在性レトロウイルス」と呼び、親から子に「遺伝」する。哺乳類のゲノム中で遺伝子が占める割合は約2%であるが、内在性レトロウイルスは約1割をも占めている。そのほとんどはオープンリーディングフレームが破壊されており、意味をなさない配列と考えられているが、機能を残しているものもある。代表的なものは、ヒトで胎盤形成に必要なシンシチンという蛋白質である。この蛋白質は、約3000万年前に感染したレトロウイルスに由来している。哺乳類が胎盤をもつようになったのは約6000万年前であり、その後様々な形態の胎盤に進化していった。その胎盤の成立および進化には、古代のレトロウイルスが大きく関与している。ところでコアラは有袋類、すなわち胎盤をもたない哺乳類である。現在、コアラはレトロウイルスの感染を受け、白血病や免疫抑制に悩まされている。その一方で、コアラのレトロウイルスは生殖細胞にも容易に感染し、急速に内在化している。今後、コアラはこのレトロウイルスを生殖に利用するようになるのか?本講義では「個人的な妄想」をも含めて、コアラレトロウイルスの生態学について紹介したい。
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第16回 7月13日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
脳と生殖の関連を探る―性分化から男女共同参画まで―
担当:獣医生理学教室 |
講義内容
種の維持を担う生殖は、脳と性腺が車の両輪のように協調して機能することにより円滑に進行します。生殖における雌雄それぞれの性的役割を果たすために脳の機能も雌雄で異なりますが、このような脳の性は胎子期(あるいは新生子期)に性腺から分泌される性ステロイドによって不可逆的に決定されます。また、胎生という生殖戦略をとる哺乳類では、一定の個体サイズに達すると脳は性腺を刺激するシグナルを発信しはじめ、性成熟を迎えます。さらに、脳は外部、内部の環境因子を統合して性腺の活動を調節しますが、このような環境因子として特に重要なものに、栄養条件、ストレス、光周期、性ステロイドなどがあります。性ステロイドは脳の高次機能の維持にも大きな役割を果たしており、一生を通じて脳に対して様々な影響を及ぼしています。本講義では、このような生涯にわたる脳と生殖の関係に着目し、各ステージにおける両者の関係についての最新の知見を紹介します。また、人の脳の性差についても紹介し、社会における男女のよりよい在り方や男女共同参画についても考える材料を提供できればと思います。
講義内容 |
1. イントロダクション(13:00-13:10 ) |
東京大学大学院農学生命科学研究科 西原真杉
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2.脳の性分化(13:10-13:50) |
東京大学大学院農学生命科学研究科 西原真杉
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3.性成熟の中枢機構(13:50-14:30) |
横浜市立大学大学院医学研究科 美津島大
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4.栄養と生殖 (14:30-15:10) |
名古屋大学大学院生命農学研究科 大蔵 聡 |
休憩(15:10-15:20) |
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5.ストレスと生殖 (15:20-16:00) |
東京大学大学院農学生命科学研究科 松脇貴志
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6.脳の性差と男女共同参画 (16:00-16:40) |
名古屋大学大学院生命農学研究科 束村博子
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7. 質疑応答(16:40-17:00) |
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第15回 5月18日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
獣医学領域における生殖研究の基礎から応用
担当:
獣医解剖
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「獣医学領域における生殖研究の基礎から応用」
生殖研究は現在、広範な範囲に渡って行われているが、今回の講義では基礎研究2題、応用研究2題を取り上げた。まず基礎研究として、生殖細胞におけるp63の役割について、次いで精細胞分化過程におけるテロメアの動態について解説をお願いした。さらに、応用研究として、内分泌撹乱化学物質問題ならびに核移植クローン研究の現状について、それぞれ解説していただく。
講義内容 |
1.
マウスの生殖細胞における転写因子p63の発現と機能
(13:00-13:50 ) |
九州歯科大学 中牟田信明 |
2.
精細胞分化におけるテロメア動態解析
(13:50-14:40) |
国立医薬品食品衛生研究所 種村健太郎 |
休憩(14:40-15:10) |
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3.
ダイオキシンの精巣機能への影響~内分泌攪乱化学物質問題のその後~
(15:10-16:00) |
東京大学大学院医学系研究科 大迫誠一郎 |
4.
核移植クローン研究からわかること
(16:00-16:50) |
理研バイオリソースセンター 小倉淳郎 |
質疑応答(16:50-17:00) |
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1.マウスの生殖細胞における転写因子p63の発現と機能 九州歯科大学 健康促進科学専攻 頭頚部構造解析学分野 中牟田 信明 我々の研究しているp63という転写因子は、癌抑制遺伝子で有名なp53と良く似た構造を持ち、もう一つの仲間であるp73と合わせてp53ファミリーと呼ばれています。p63遺伝子からは6種類のタンパクがつくられ、それらはN末端に転写活性化ドメインをもつTAp63と、それを欠くDNp63とに大別されます。様々な上皮組織の基底細胞にはDNp63が多く発現し、ヒトではp63遺伝子変異と外胚葉異形成症候群との関連が示されています。今回の講義では始原生殖細胞に始まって、精巣と卵巣の生殖細胞におけるp63の発現パターンと、KOマウスの解析によって明らかになり始めた生殖細胞におけるp63の役割について紹介します。2.精細胞分化におけるテロメア動態解析 国立医薬品食品衛生研究所 毒性部 種村 健太郎 染色体立体配座は遺伝子の発現に大きな影響を与える。染色体末端構造はテロメアと呼ばれるTTAGGGの反復配列であり染色体の構造的安定性に寄与するとされ、継続的細胞分裂の結果生じるテロメア短縮は細胞周期停止・細胞機能不全などの細胞老化とともに個体寿命に影響を及ぼすとされている。しかし、減数分裂という特殊なイベントを経て半数体を形成する雄性配偶子形成過程においてテロメアはどのような動きをするのかについては明らかではない。そこでマウス精巣を用いて精細胞分化過程におけるテロメア動態を解析した。FISH法を用いた結果、精細胞分化過程にて、テロメアは分化段階特異的に核内での散在-集合を行うとともに、テロメア長も分化段階特異的に変化することが明らかとされた。その結果として成熟した精子はその前駆細胞に比し、長いテロメアを有する事が判明した。すなわち精細胞成熟に伴うテロメアの詳細な動態が明らかとなると同時に、半数体におけるDNA複製を伴わないテロメレース活性が、体細胞に比較して長いテロメアを持つ精子としての成熟に重要であることが示唆された。 3.ダイオキシンの精巣機能への影響 ~内分泌攪乱化学物質問題のその後~ 東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康・環境医工学部門 大迫誠一郎 1990年代初頭から我国でも内分泌攪乱化学物質問題がマスコミを騒がせ、ダイオキシン類を中心とする環境ホルモンの生体影響の行政対応研究が集約的に行われた。本講義では、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)高感受性ラットを用いた胎仔期曝露実験、TCDDの唯一の標的タンパクであるアリールハイドロカーボン受容体(AhR)遺伝子ノックアウトマウスを用いた研究等を総括し、果たして問題の低レベル環境ホルモン曝露によって次世代生殖に問題が生じうるのか可能な限り科学的に考察したい。 4.核移植クローン研究からわかること 理研バイオリソースセンター 遺伝工学基盤技術室 小倉淳郎
哺乳動物の核移植クローン技術の歴史は、1980年代の着床前期胚の核を用いたいわゆる受精卵クローン研究に始まり、1997年の最初の成体体細胞クローンであるドリーの報告に至る。現在10数種類の哺乳動物で体細胞クローン産子が得られているが、相変わらず低効率と高頻度の異常に悩まされている。しかし同じ哺乳類でも、家畜と実験動物ではやや様相が異なる。産子を得るまでに至るコストは家畜の方が圧倒的に高いが、経済的効果の期待から、着実に技術の改善が進んでいる。一方、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、サル)の体細胞クローンは、安定した成績を得られる研究室は極めて少ない。そのような困難な中で実験動物のクローンを行う目的の一つは、発生学や分子遺伝学研究、特にエピジェネティクス分野のモデルとしての利用(特にマウス)、ジーンターゲッティング動物の作出(ラットやウサギ)、あるいは再生医療用の核移植ES細胞作出のモデル実験(サル)である。核移植クローンは極めて高度な技術を必要とするが、目的が明確であれば、極めてユニークな研究手段となりうる。その意義、そしてこれまでの成果について解説する。
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第14回 1月19日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
哺乳類卵の研究と発生工学のバイオメディカルへの応用
担当:
獣医学専攻 比較動物医科学大講座(動物育種繁殖学分野)
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講義内容 体外受精による受精卵や体細胞から産子を得ることが可能になると、これらに対する遺伝子操作が始まった。初期では受精卵に遺伝子を直接注入する方法がとられたが、目的通りに導入することや発現させることが難しく、また、後代に確実に伝えられないという問題があった。これを解決する方法として体細胞クローン技術が開発され、効率的に有用物質を生産する動物工場の登場となった。大西講師と徳永講師が現在の研究を紹介しながら、過去、現状そして未来への展望を述べる。
発生工学が可能となった背景に、卵や受精に関係する基礎的知見の蓄積があった。卵と精子は、通常の体細胞分裂と異なる減数分裂という特殊な分裂様式で作られ、融合(受精)すると卵は減数分裂を完了し、接合子となる(生命の誕生)。減数分裂のメカニズムは特殊であり、通常の体細胞分裂でみられない現象が多くみられる。また、分化した細胞である卵が受精後に全能性のある受精卵となりその後の発生を進めていくためには、遺伝子発現パターンの再プログラム化が必要と考えられている。それらに関して、内藤講師が減数分裂の調節機構について、青木講師が受精後の遺伝子発現調節機構について現在の研究を紹介しながら、その特徴を明らかにする。
講義内容 |
1.
イントロダクション(13:00-13:10
) |
酒井仙吉(東京大学大学院農学生命科学研究科) |
2.遺伝子組換え技術を用いたクローンブタの開発(13:10-14:00) |
大西 彰(独立行政法人 農業生物資源研究所 ) |
3.
発生・分化能の高いES細胞の濃縮技術の開発(14:00-14:50) |
徳永智之(独立行政法人 農業生物資源研究所) |
4.
(休息:14:50-15:10) |
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5.
哺乳類卵の減数分裂制御機構(15:10-16:00) |
内藤邦彦(東京大学大学院農学生命科学研究科) |
6.
初期胚の遺伝子発現調節(16:00-16:50) |
青木不学(東京大学大学院新領域創成科学研究科) |
7.
質疑応答(16:50から) |
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第13回 10月20日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
新興・再興感染症としての人獣共通感染症
担当: 医科学研究所 実験動物研究施設
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1.
イントロダクション
(13:00-13:10) 甲斐知恵子(東京大学医科学研究所)
2.
インフルエンザウィルスの生態
(13:10-14:10) 迫田義博(北海道大学大学院獣医学研究科)
3.
クリミアコンゴ出血病
(14:10-15:10) 森川 茂(国立感染症研究所)
休憩(15:10-15:25)
4.
西ナイルウィルスについて
(15:25-16:25) 倉根一郎(国立感染症研究所)
5.
ヘニパウィルス感染症
(16:25-17:00) 甲斐知恵子(東京大学医科学研究所)
講義の内容
近年新興・再興感染症が数多く出現し社会的問題となっている。そのほとんどは人獣共通感染症であり、もともと動物に由来する。これら感染症を理解し、対策を講じるためには、獣医学、医学、生物学、生態学、疫学など様々な領域の研究者による連携研究が必要である。なかでも獣医学からの研究の貢献度は大きい。本講義では、エマージングウイルス感染症の中で近年問題となった疾患であるインフルエンザ、ウエストナイルウイルス感染症、クリミアコンゴ出血熱、ヘニパウイルス感染症を中心に、それら感染症の流行の実態から研究の最先端を含めた講義をしていただく予定である。 |
第11回 5月19日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
哺乳類の卵胞・黄体・卵母細胞の発育・成熟と死滅の分子機構 担当:牧場
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日時:5月19日(金)午後1時から5時まで
場所:東京大学弥生講堂
講義の内容
哺乳類の雌性生殖腺と生殖子は他の脊椎動物と比較して特殊な点が多い。例えば、卵母細胞は胎児期に体細胞分裂を終えたあと減数分裂が途中まで進んで休眠している状態で出生し、性成熟後順次発育・成熟する。最近になって、この成熟を制御している分子機構も最初にカエルなどで調べられたものと異なることが分かってきている。卵母細胞が発育・成熟する過程で、これを包み込んで保育している卵胞の99%以上が選択的に死滅して健常なものだけが排卵にいたる。この選択を制御している分子機構も謎にみちている。排卵後卵胞の卵胞顆粒層細胞などは黄体細胞となって胚の着床を調節し、着床しなかった場合には消滅する。このようにひとつの細胞が2度分化過程を経験して、2回全く機能が異なる細胞として働く例は他に無く、きわめて興味深い現象である。今回はそれぞれの現象を解明する研究で世界的に高く評価されている3名の講師をお招きして、各位の研究も含めて研究の最先端の状況を講義していただく。
1:00-2:20 卵母細胞の発育・成熟の制御機構 宮野 隆 教授(神戸大学)
2:20-3:40 卵胞の発育・成熟と死滅の制御機構 服部 眞彰 教授(九州大学)
3:40-5:00 黄体の発育・成熟と死滅の制御機構 奥田 潔 教授(岡山大学) |
第10回 1月20日(金)13:00~17:30(弥生講堂) |
動物の遺伝病に関する研究、臨床の現状と展望 担当: 高度医療科学教室
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1. イントロダクション(13:00-13:20) 小川博之(東大)
2.
動物の遺伝病に関する研究、臨床の現状と展望
(13:20-14:20) 鈴木勝士(日獣大)Frontier and Perspectives of Research and Clinics in Animals Genetic Disorders Katsushi SUZUKI (Nippon Veterinary and AnimalScienceUniversity)
3.
疾患モデル動物により明らかにされた疾患と遺伝子の関係(14:20-15:20) 国枝哲夫(岡山大)Human Diseases and Mutations Identified in Experimental Model Animals. Tetsuo KUNIEDA (OkayamaUniversity)
休憩(15:20-15:30)
4.
動物の遺伝性膜疾患から見えてきたこと(15:30-16:30) 稲葉 睦(北大)Dysfunction in Membrane Proteins and Inherited Diseases. Mutsumi INABA (HokkaidoUniversity)
5.
伴侶動物の遺伝性疾患(16:30-17:30) 小川博之他(東大)Inherited Disorders in Companion Animals Hiroyuki OGAWA (TokyoUniversity)
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第9回 10月21日(金)13:00~17:00(弥生講堂) |
哺乳類におけるフェロモン研究の現状と展望 担当: 動物行動学研究室
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講義内容:
視覚や聴覚にくらべ嗅覚の世界は闇に包まれ研究は遙かに遅れていた。1991年の匂い受容体の発見以来(昨年度のノーベル賞はその発見者たちに授与された)、嗅覚研究は著しい進展を遂げつつある。とくに獣医学の領域ではフェロモンを行動制御やストレス緩和に役立てようとする臨床的・応用的研究にも関心が高まっている。本講義では哺乳類の嗅覚に関する基礎から応用までを幅広く取り上げ解説する予定である。
日時:10月21日(金)午後1時から5時まで場所:東京大学弥生講堂
1:00-1:20 森 裕司 “イントロダクション”
嗅覚研究の歴史を振り返り、また最近注目を集めているフェロモン研究のトピックをとりあげながら、講師陣を紹介する。
1:20-2:00 市川眞澄((財)東京都医学研究機構・神経科学総合研究所) “哺乳類の嗅覚システム”
哺乳類には主嗅覚系と鋤鼻系という二つの独立した嗅覚神経系が存在している。つまり多くの動物種ではデュアルシステムで外界の嗅覚情報を感知しているのである。両システムがそれぞれどのような生物学的意義を持つ情報を受け取り、脳のどこに情報を伝えて、どのような行動を引き起こすのか、これまで謎に包まれていたことが過去数年の間に急速に解明されつつある。
2:00-2:40 山岸公子((財)東京都医学研究機構・臨床医学研究所) “匂い受容体とフェロモン受容体”
匂い受容体の発見以降多くの研究者が嗅覚研究分野に流れ込み、匂い分子の認識や匂い情報の伝達機構などを分子レベルで明らかにしてきた。一方フェロモン受容体の同定をきっかけとしてフェロモン受容機構の研究も著しい発展を遂げつつある。また、主嗅覚系と鋤鼻系という2つの独立した嗅覚システムがお互いに協調してフェロモンを認識するという可能性も指摘されている。
2:40-3:20 岡村裕昭((独)農業生物資源研究所・生体機能研究グループ) “反芻家畜の雄効果フェロモン”
ヤギやヒツジでは、成熟した雄が発するフェロモンが非繁殖期の雌の性腺活動 を刺激する“雄効果”という現象が知られている。哺乳動物では唯一そのター ゲットとなる神経機構が明らかになっているフェロモン現象であり、その知見 をもとに、雄効果フェロモン分子の同定およびフェロモン産生と中枢内作用メ カニズムの解明が、神経生物学、分子生物学、有機化学的手法を統合しつつ進められている。
3:20-3:30 休憩 3:30-4:10 菊水健史 “げっ歯類の水溶性フェロモン”
上記の反芻家畜のフェロモンが匂い分子のように高揮発性であるのに対して、げっ歯類は水溶性のフェロモンも利用していることが分かってきた。ストレスを受けた動物の肛門周囲から放出され仲間に危険を伝える警報フェロモンもその一つであり、また涙の中にも重要なフェロモンが分泌されているらしい。これら水溶性フェロモンは、げっ歯類で発現しているフェロモン受容体との関連を考えると、生態学的にも非常に興味深い。 4:10-4:40武内ゆかり“行動治療におけるフェロモン活用”不安や恐怖が原因となる問題行動は数多く知られている。従来の抗不安薬などの処方に代わるあらたな取り組みとして、安寧(安心)フェロモンの臨床応用が始まった。イヌやネコといった伴侶動物だけでなく、ウマやブタといった産業動物にもフェロモンの応用が検討されつつあり、副作用の少ない自然な治療方法として期待が高まっている。
4:10-4:40 武内ゆかり “行動治療におけるフェロモン活用”
不安や恐怖が原因となる問題行動は数多く知られている。従来の抗不安薬などの処方に代わるあらたな取り組みとして、安寧(安心)フェロモンの臨床応用が始まった。イヌやネコといった伴侶動物だけでなく、ウマやブタといった産業動物にもフェロモンの応用が検討されつつあり、副作用の少ない自然な治療方法として期待が高まっている。
4:40-5:00 総合討論
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第8回 8月12日(金)13:00~18:00(1号館8番教室) |
神経疾患の最近の動向 担当: 臨床病理学教室
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1. 人医療における考え方(13:00-13:45)-アルツハイマー病を中心に-岩本俊彦(東京医科大)
2. 獣医療における考え方(13:45-14:15)-犬のてんかんを中心に-長谷川大輔(日獣大)
3. 診断法(14:15-15:20)a) 電気生理学的方法(14:15-14:40)宇塚雄次(岐阜大)b) MRI(14:40-15:05)松永 悟(東大)c) PET(15:05-15:20)島田雄平(開業)
休憩(15:20-15:30)
4. 病態(15:30-16:20)a) パグ脳炎(15:30-15:50)松木直章(東大)b) ガングリオシドーシス(15:50-16:20)大和 修(北大)
5. 再生療法(16:20-17:20)a) 末梢神経(16:20-17:05)遠山稿二郎(岩手医科大)b) 中枢神経(17:05-17:20)小野憲一郎(東大)
懇親会 (17:30 -)
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第7回 4月15日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
進化の隣人-チンパンジーの研究- 担当: 実験動物学教室 |
1.ヒトゲノムと類人猿ゲノムの比較解析
2003年に、ヒトゲノム配列解読完了が宣言された。ヒトゲノム計画の次のステップのひとつとして、種の比較解析の方向が挙げられる。ヒトのゲノム配列を他の生物種のそれと比較することによって、ヒトが遺伝子レベルでほかとどう違うのかをみることができる。ヒトにもっとも近縁な生物種はチンパンジーであり、ヒトとチンパンジーはおよそ500-600万年前に分岐したと考えられている。そのため、チンパンジーのゲノム配列解析を行なうことによって、ヒトの遺伝子レベルでの変化をみることができる。本講義では、最近活発に進められているチンパンジーやゴリラなどの類人猿を用いた、ゲノム配列解析に関する研究を紹介する。
2.社会関係と行動発達(フィールド研究も含めて)
人間の体が進化の産物であると同様に、その心も進化の産物である。系統発生的に近縁なチンパンジーとヒトを比較する研究について紹介する。チンパンジーの寿命は飼育下で約50年、野生では約45年と推定されている。在胎期間は約8か月、出生時の体重は約2kg弱だ。4歳くらいまで母乳を飲み、母親と一緒に眠る。平均出産間隔は約5年。つまり弟妹が生まれるまでの最初の5年間を母親と過ごし緊密なきずながある。哺乳類の多くが母系社会だがチンパンジーは父系社会だ。女性の多くは8-9歳で初潮を迎え、生まれた群れをでて近隣の群れに移籍し、13-14歳で最初の子どもをもつ。一方、男性は生まれた群れに留まる。血縁で結ばれた男性たちが広義の「父親」としてふるまう。こうしたチンパンジーの生活史を背景に、チンパンジーの子どもの心や行動がどのように発達していくかについて、アフリカの野外観察と日本の実験研究の双方から概説したい。
3.チンパンジー社会における協同と葛藤
野生のチンパンジーは複雄複雌の20~100頭からなる単位集団(コミュニティ)と呼ばれるグループで生活している。集団内のオスの結びつきは一般に強く、協同してなわばりとメスを他の集団から防衛している。と同時にオス同士には順位や発情メスへの接近をめぐる個体間の葛藤があり、そこには同盟関係や各種の取引がみられる。個体間の葛藤は、攻撃行動をとることが多いが、同時に、攻撃後の関係修復(仲直り)行動も良く見られる。また、オスとメスの間には、配偶機会をめぐるさまざまな駆け引きが見られ、個体の繁殖戦略にはさまざまなバリエーションが見られる。今回は、チンパンジーの個体間の相互作用の複雑さとそこに展開される社会的知性を紹介すると同時に、ヒトとチンパンジーの差異についても論じてみたい。
4.実験と飼育と福祉
チンパンジーは遺伝子レベルでヒトと98.5%あるいはそれ以上相同であると考えられており、最もヒトに近い動物である。野生のチンパンジーは著しく減少し、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」において最も厳しい分類に指定され保護されている。わが国には2003年現在355頭のチンパンジーがおり、そのうち99頭が研究機関(三和化学研究所80頭、京大14頭、林原生物化学研究所5頭)で飼育されている。チンパンジーを用いた研究として、行動・心理・認知学、ゲノム・遺伝子研究や種々の医科学研究などが行われている。チンパンジーを研究に用いる際には、他の動物に比較して格段に高い動物実験倫理が求められる。また、チンパンジーは、biological well-being、veterinary well-beingに加えて、psychological well-beingの福祉を考慮して飼育されている。
1.ヒトゲノムと類人猿ゲノムの比較解析
(13:00~14:00) |
国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門
斎藤成也
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2.社会関係と行動発達(フィールド研究も含めて)
(14:00~15:00) |
京都大学霊長類研究所行動神経研究部門思考言語分野
松沢哲郎
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3.チンパンジー社会における協同と葛藤
(15:15~16:15) |
東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系認知行動科学研究室
長谷川壽一
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4.実験と飼育と福祉
(16:15~17:15) |
三和化学研究所熊本霊長類パーク
早坂郁夫
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第6回 1月21日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
ディーゼル排気微粒子の生体影響
担当:比較病態生理学教室 |
1:ディーゼル排気微粒子から検出された内分泌撹乱物質発 一般に化学物質の感受性は成獣よりも胎仔期の方が高いと考えられている。本講義では妊娠期ディーゼル排ガス(DE)曝露の健康影響について、私たちが検討した出生仔の雄性生殖系及び脳神経系への影響を中心に紹介する。
2:ディーゼル排気微粒子の雌性生殖器に及ぼす影響 ディーゼル排気(Diesel Exhaust: DE)は、国内外で深刻な社会問題となっている大気汚染発生源の一つである。DEの健康影響に関する研究は、これまで喘息性疾患、肺癌あるいは気管支炎等の呼吸器に及ぼす影響を中心に行われてきた。しかしながら、近年は人の死亡率に関する疫学的研究の結果や次世代影響、環境ホルモン影響の面から、DEの生殖器系に対する影響が注目されるようになった。DE中には多くの多環芳香族炭化水素が含まれることに着目し、Aryl hydrocarbon receptor (AhR)の感受性が高いといわれているC57BL/6Nマウスを用いて、DEによる生体影響として重要視される次世代への影響あるいは繁殖機能に対する影響を明らかにするために、雌性生殖器および繁殖機能に及ぼす影響について検討した。一方、DEの妊娠期曝露実験により、雄胎子の生殖腺分化に関与するステロイド合成因子Steroidogenic factor-1 (Ad4BP/SF-1)およびミュラー管抑制因子Mullerian inhibitory substances(MIS)のmRNA発現量を減少させることが判明したので、雌胎子の生殖腺分化に関与する発現遺伝子の解析を行い、その影響を検討した。
3:デイーゼルエンジン排気微粒子(DEP)の気道粘膜に及ぼす影響: オキシダントの役割 大気中浮遊微粒子(particulate matter less than 2.5μ in diameter, PM2.5)、さらにその主要構成成分であるデイーゼルエンジン排気微粒子(DEP)は、疫学的研究などからヒトの呼吸・循環系の死亡率や有病率を上げるなどの健康被害に結びついている可能性が示唆され、注目されている。また直接的証拠はないもののアレルギー性疾患の発症や症状と道路沿道住環境との関連も示されている。しかし、PM2.5/DEPがいかなる機構で呼吸・循環系に影響を与えうるかは未解決な点が多い。気道粘膜上皮は呼吸にともない侵入する各種有害物質に対する第一線の防御細胞であり、単なるバリアでなく、種々の外的ストレスに反応して、サイトカイン・ケモカインなどを産生する。さらに近年の研究により気道あるいは肺胞上皮細胞の傷害が各種呼吸器疾患の発症の第一段階であると認識されるようになった。とくに気管支喘息の病態においては、気道粘膜上皮の剥離、傷害とそれに基づく気道の過敏性亢進が、最も基本的は特徴と信じられている。したがって、DEPの標的細胞として有力であり、これまでに多数の研究が行われてきた。本講では、これらの歴史的流れも概観しながら、DEPの気道粘膜への作用とその分子機構の究明の現状について述べる。
4:ディーゼル排気微粒子が心筋細胞に及ぼす細胞傷害作用
近年の疫学的研究報告によると、大気中のディーゼル排気微粒子(DEP)濃度と心疾患とくに不整脈による突然死を含む過剰死亡率との間に高い相関関係の存在することが明らかとなっている。DEPは肺の深部まで入り込み、長微細な粒子やDEPからの溶出成分の一部が血流にのり、心臓や血管において直接作用する可能性が考えられている。そこで、本講ではDEPが心筋細胞に与える影響に関してDEPの主要な傷害因子であるといわれている活性酸素種との関連性について、循環系に対する酸化ストレスによる病態を含め、最近の知見を概説する。
講義内容 |
1.ディーゼル排気微粒子から検出された内分泌撹乱物質 |
東京農工大学大学院共生科学技術研究部
動物生命科学部門
田谷 一善 |
2.ディーゼル排ガス胎仔期暴露の生殖系および脳神経系への影響 |
東京理科大学薬学部
武田 健 |
3.ディーゼル排気微粒子の雌性生殖器に対する影響 |
財団法人 日本自動車研究所
机 直美 |
4.ディーゼル排気微粒子の気道粘膜への作用 |
東京大学医学部呼吸器内科
滝澤 始 |
5.ディーゼル排気微粒子が心筋細胞に及ぼす細胞傷害作用
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東京大学大学院農学生命科学研究科
桑原 正貴 |
プログラム、シラバスはこちらからダウンロードできます ( 181KB)。 |
第5回 10月15日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
アレルギー性疾患の発症メカニズムと細胞病態
担当:獣医内科学教室 |
1:アレルギー発症機構とアレルギー治療用ワクチンの開発 現在、多くの人々がアレルギーを持っている。その多くはアレルゲンに対するIgE抗体が産生されることによって起きる、いわゆるI型アレルギーといわれるものである。体内で産生されたIgE抗体はマスト細胞表面の受容体を介して結合する。このIgE抗体にアレルゲンが結合するとマスト細胞内の顆粒が細胞外に放出される。この顆粒中にはヒスタミンやセロトニンなどの炎症を引き起こす生理活性物質が大量に含まれており、これらがアレルギーを引き起こす。
スギ花粉症は最も典型的なI型アレルギー疾患である。現在、アレルギーの唯一の根治的治療法として減感作療法がある。これはアレルゲンそのものを注射することからワクチン治療法と考えられている。しかし、この治療法は、長期間にわたり頻回のアレルゲンの注射が必要であること、投与後、全身性アレルギー等の副反応が起こることなどの短所があり、欧米に比べて、日本ではあまり普及していない。
近年、スギ花粉アレルゲンと生体との免疫学的反応性の研究が飛躍的に進んで新しいワクチン治療法の開発研究が行われてきた。さらに自然発症のスギ花粉症ニホンザルやイヌが発見され、治療および基礎研究の分野でのモデル動物として用いられ始めた。アレルギー治療において、ブレイクスルーとなる、簡単で有効な根治的な治療法の開発の条件が整ってきた。
上述の減感作療法を第1世代のワクチン療法とすると、第2世代のワクチン治療法として T細胞エピト?プを用いたペプチド・ワクチンが研究されている。また、第3世代のスギ花粉症に対する免疫療法としてTh1型T細胞反応(アレルギー抑制反応)を誘導するDNAワクチン療法も開発中である。
2:動物のアレルギー性疾患におけるケモカインの関与ヒト以外の生物において最初に報告されたアレルギー性疾患はイヌのアレルギー性鼻炎 (Witch, F.W., 1941 J. Allergy)であったという事実はアレルギー分野の研究者でさえ知る者は少ない。イヌがヒトに近い大型哺乳類であり、臨床症状がヒトに類似していたことがこの発見に結びついたことは容易に想像がつく。その後もアレルギー性炎症の関与が疑われる結膜炎 (Patterson, R., 1960 J. Allergy)や皮膚炎 (Halliwell, REW., 1973 J. Immunol.)などがイヌで報告されたものの、イヌの免疫学に関する基礎的データの欠如、研究ツールの不足、また動物の大きさや世代時間の長さなどの問題から、イヌがアレルギーの動物モデルとして受け入れられることはなく、病態解析も一向に進展しなかった経緯がある。そのため、獣医臨床における動物のアレルギーに対する診断・治療概念の多くはマウスおよびヒトで得られた基礎および臨床研究成果に基づいたものである。しかしながら、ヒトで有効性の認められている治療が必ずしも動物において有効でないことからも明らかなように、ヒトと動物のアレルギー病態に関しては類似点もあれば相違点もかなり多く存在するものと思われる。今思えば、我々がアレルギーと診断してきた動物が果たして本当にアレルギーであったのかというのも疑問である。そこで、臨床獣医学の発展に寄与することはもちろんのこと、これらイヌのアレルギー自然発症例の動物モデルとしての有用性を提言するのであれば、まずは動物のアレルギー病態の解明に向けた研究を立ち上げることが不可欠ではないかと考えた。今回のセミナーでは、私が大学院時代におこなった仕事を紹介しつつ、イヌのアレルギー性疾患の病態解析を通して、臨床獣医学から新知見を発信することは可能か?免疫学、アレルギー学に限らずライフサイエンスの進歩に臨床獣医学から貢献できることは何か?なども含めて、これからの獣医学研究を担う大学院生の方々と忌憚のない活発な議論を展開したいと考えている。
3:Development and Evaluation of Animal Models for Allergic Dermatitis花粉症,喘息,アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の発症率は増加の一途をたどり,世界規模,特に先進国では社会問題化している。我が国においても同様の問題を抱え,最近の調査は国民の約半数がアレルギー体質を獲得したと報告している。これは社会環境の劇的変化がもたらした負の遺産とも言われている。この様な状況からアレルギー疾患の予防・治療の開発は急務であるが,残念ながら未だ根治に迫る対策は見いだせないままである。これを実現するには疾患モデルの開発とこれを用いた病態解明が極めて重要である。最近,我々研究グループは世界に先駆け,環境に依存して,アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスを発見した。このマウスは国際アトピー性皮膚炎会議でも認知され,医薬品評価モデルとしてその需要が世界的に高まっている。本講演では,アトピー性皮膚炎自然発症マウスの病態解析の最新の結果を示しながら,その新知見に基づく新薬開発の可能性を論じたい。
4:細胞動態の新しい解析法-KKチェンバー法の応用
走化性は、炎症、リンパ球のホーミング、分化発生、再生といった生体現象に関わる、細胞が持つ重要な機能である。また走化性の異常が感染症、アレルギー、創傷治癒、癌の転移といった多くの疾患で報告されており、走化性制御による創薬が期待される。
ボイデンチャンバーなど従来の細胞の走化性測定法は、多くの細胞を必要とするなど改良の余地のあるものであった。そこでわれわれは、シリコンウエファーの微細構造の加工技術を利用して、遊走過程を直接CCD カメラで測定できる微量細胞走化性測定装置-KKチェンバーの開発を行った(JIM 282, 1-11, 2003、TAXIScanTM)。
本装置では、物質の拡散による長時間の濃度勾配の維持、水平状態での走化性の測定が可能である。また少数の細胞しか必要としないので、好酸球やDCといったマイナーポピュレーションの細胞動態の解析もできる。さらに遊走している細胞の様子が観察できることから、細胞遊走の速度、方向性、形態変化などの解析が可能である。この装置を用いた解析により、走化性因子による遊走パターンの違いや、細胞走化性の個人差などが明らかになった。
本装置では細胞の動きをモニタリングできるので、細胞走化性のみならずマスト細胞などの脱顆粒、NK細胞による細胞傷害性、食細胞による貪食能などの観察も可能となっている。アレルギー性疾患で中心的な役割をはたしているマスト細胞については、刺激による脱顆粒の違いなど興味深い知見が得られている。
われわれは、簡易型、集積型KKチェンバーシステムの開発にも成功し、創薬に必要な大量サンプルのスクリーニングも対応できるシステムを構築している。本装置は細胞走化性のみならすさまざまな細胞反応の研究に非常に有効な装置であると考えられる。
講義内容 |
1.アレルギー発症機構とアレルギー治療用ワクチンの開発(13:00~14:00) |
理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター
アレルギー制御研究チーム
阪口雅弘 |
2.動物のアレルギー性疾患におけるケモカインの関与(14:00~15:00) |
岐阜大学応用生物科学部獣医内科学分野
前田貞俊 |
3.15:00~15:15 |
休憩 |
4.Development and Evaluation of Animal Models for Allergic Dermatitis(15:15~16:15) |
東京農工大学大学院
共生科学技術研究部動物生命科学部門
松田浩珍 |
5.細胞動態の新しい解析法?KKチェンバー法の応用(16:15~17:15)
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東京大学先端科学技術研究センター
/㈱エフェクター細胞研究所
玉谷卓也 |
プログラム、シラバスはこちらからダウンロードできます ( 27KB)。 |
第4回 7月16日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
動物由来感染症(Animal-derived infectious diseases)
■ 講義後のレポート、感想文はこちら ■
担当:獣医病理学教室 |
動物由来の感染症が大きな社会問題になっています。巷には様々な情報が氾濫し、いったい何が正しいのか、迷うことがしばしばです。獣医師としてあるいは動物を研究する者として、友人、知人から質問を受ける機会も多いことでしょう。大学院での研究はこのような獣医学が直接関与する社会問題とは大分かけ離れているようです。いったい我々は、動物由来感染症について、どれくらいの知識を持っているのでしょうか。獣医学専攻に所属するからには、動物由来感染症についての正確な情報を発信できることも必要なのではありませんか。
本日の講義は動物由来感染症の研究でご活躍の先生方にお願いしました。基本的な事項から先端の知見まで、この機会に動物由来感染症についての知識を整理してください。
講義内容 |
1.動物由来感染症総論(13:10-14:00)
Introduction to animal-derived infectious diseases |
国立感染研
山田章雄
Akio YAMADA (National Institute of Infectious Diseases) |
2.動物のプリオン病(14:00-14:50)
Prion diseases in animals |
東大
小野寺節
Takashi ONODERA (The University of Tokyo) |
3.人獣共通寄生虫病(15:05-15:55)
Parasitic zoonoses |
日獣大
今井壮一
Souichi IMAI (Nippon Veterinary and Animal Science University) |
4.エキゾチックアニマルに由来する感染症(15:55-16:45)
Infectious diseases derived from exotic animals
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麻布大
宇根有美
Yumi UNE (Azabu University) |
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第3回 5月21日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
動物の疼痛ストレスとそれに対する生体反応
担当:獣医外科学教室 |
動物は物を言わないため、疼痛があっても言葉ではそれを訴えない。しかし、実際には手術、あるいは様々な処置、治療、飼育中の世話などの中で多くの痛みを感じているはずである。それらに対し、そこから逃げ出す、あるいは痛みのために動かない、食欲がない、寝ていることが多い、痛いことをするとおこる、攻撃する、などなど様々な行動上の変化を引き起こされる。人は、これらの行動上の変化を基に痛みの程度を判定してきたが、それは必ずしも正確とは言いがたい。一方、これらの疼痛に伴って様々な生体反応が誘起され、それらの指標の変化から、より客観的な疼痛評価をする試みがなされている。
犬や猫などの小動物では最近疼痛管理の重要性が認識されつつあり、本学動物医療センターにおいても、術中、術後の疼痛管理がかなり徹底的に実施されるようになった。一方、牛や豚などの産業動物分野でも少しずつその重要性が認識されつつあるが、野外では獣医師、農家のいずれの側もまだまだ認識不足の状況にある。
今回の大学院講義では、まず痛みに伴う中枢神経系の反応の基礎を星薬科大学、成田年先生にお話いただき、次いで、小動物の術中、術後の疼痛管理似ついて、外科学教室、西村亮平助教授に話していただく。最後に現在マッセイ大学から客員教授として来日されている、Dr. Kevin Stafford から、産業動物の日常管理上の疼痛とその対策について講演いただく予定である。
講義内容 |
1.慢性疼痛下およびモルヒネ耐性下におけるグリア-ニューロン回路網の変化: 痛みと脳の高次機能 |
星薬科大学
薬品毒性学教室
成田 年 |
2.血中コルチゾールおよびACTHを指標とした術中・術後の疼痛評価とその応用 |
東京大学大学院農学生命科学研究科
獣医外科学研究室
西村亮平 |
3.Alleviation of the pain caused by husbandry practices in cattle |
Kevin Stafford
Massey University,
New Zealand |
※講義資料(.pdfファイル)は以下から閲覧できます(当日冊子で配布予定)。
資料はこちら
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第2回 2月20日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
消化管研究の最前線:構造と機能そして病態
担当: 獣医薬理学教室
■ 講義後の総評、レポート、感想文はこちら ■
学生諸君の貴重な意見が収録されています。今後の講義企画の参考にもなります。 |
消化管は系統発生そして個体発生において最初に出現する臓器、つまり、動物が生存する上で最も基本的な臓器であると言えます。腔腸動物ヒドラは、口と消化管そして触覚しか持ちません。一方、消化管は「小さな脳」ともいわれ、脳に匹敵する神経細胞を有し、複雑なネットワークを形成しています。さらに、独自の免疫系や内分泌系を高度に発達させ、これらが相互に影響し合いながら機能を果たしている複雑系でもあるのです。しかし、私たちはそのいずれの系も十分に理解しているとは言えません。
ところが我が国では、消化管研究は3K(暗い、汚い、臭い)などと言われ、決して優遇されている研究領域とは言えません。下痢や嘔吐、食物アレルギー、過敏性・炎症性腸炎など、消化管の病気は常に身近に存在しており、研究の一層の発展が期待される領域との観点から、消化管研究の現状を分かり易く解説します。
講義内容 |
1.消化管粘膜の構造と機能(免疫系細胞を中心に) |
岩永敏彦
(北海道大学医学部) |
2.消化管筋層の構造と機能(ペースメーカーとしてのカハール介在細胞) |
鳥橋茂子
(名古屋大学医学部) |
3.消化管運動と免疫系(常在型マクロファージと平滑筋のクロストーク) |
尾崎博
(東大) |
4.ストレスと消化管機能(脳腸相関) |
福土審
(東北大学医学部) |
5.大動物の消化器疾患(ヨーネ病を中心に) |
百渓英一
(動物衛生研究所) |
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第1回 10月24日(金)13:00~18:00(弥生講堂) |
病気と健康に関するゲノムのエピジェネティックス制御
担当: 獣医生化学教室 |
哺乳類の体は約200種類の様々な細胞から構成されています。それらの形態・機能・寿命は細胞ごとに異なり、遺伝子発現はこれらに決定的な役割を果たしています。近年、ヒトを含む様々な生物の全ゲノム塩基配列解読が完了しました。しかし、なぜ細胞の種類により発現される遺伝子セットに差があるのか、解明されていません。遺伝子発現はDNAメチル化やクロマチン構造と密接に関連しており、遺伝子発現・安定性などゲノム基本機能の制御系として重要です。DNAメチル化・クロマチンによるエピジェネティック制御系は、生殖医療、クローン動物、再生医療、老化、生活習慣病および発ガンとの関連など、従来考えられていた以上に多岐にわたる生命現象の基礎として注目されています。エピジェネティック制御系の破綻は様々な異常[病気]の原因となるのです。
本講義では、エピジェネティックスの正常と異常について、DNAメチル化・クロマチン修飾に関する情報を分かり易く整理して紹介します。
講義内容 |
1.ポリコムおよびクロマチン修飾タンパクおよびエピジェネティックスの概念 |
東中川徹
(早稲田大学教育学部) |
2.DNAメチル化プロフィール |
塩田邦郎
(東大) |
3.胚性幹細胞のエピジェネティックスを中心に |
田中智
(東大) |
4.正常メチル化・クロマチン構造の破綻とガン |
牛島俊和
(国立がんセンター・発癌研究部) |
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