現在進行中の研究プロジェクト


平成21年度〜25年度
厚生労働省
保健医療分野における基礎研究推進事業

脳機能改善を目的としたエピゲノム解析による創薬基盤

エピゲノム解析を基盤に新たな創薬戦略を描けるようになった。当研究室で開発したD-REAM法は、各種細胞・組織のエピゲノム情報を迅速・正確に解析できる。

本研究は、(1) 老齢マウス脳のエピゲノム解析を中心に、(2) 脳機能低下を改善する基本化合物(特許申請中)を基にした各種誘導体合成、(3) iPS由来神経細胞等の可視化・生化学実験、および (4) 老齢イヌをも含めた行動・神経生理学実験等を組み合わせ、老化に伴う睡眠障害・記憶低下・認知症治療薬を開発することを目的にしている。


平成21年度〜25年度
文部科学省基盤研究S

性差のエピゲノム解析

エピジェネティクス系は遺伝子機能の記憶装置である。エピジェネティクス制御の主役は、DNAメチル化であり、我々はこれまでに、細胞の種類や組織に依存して、DNAメチル化状態が異なる領域(Tissue-dependent differentially methylated regions, T-DMRs)が存在することを報告してきた。ほ乳類では、からだを構成する200種類以上の細胞が、各々細胞/組織特有の形質を有するのと同時に、性差も有している。ところがこれまで、“雌雄間で持っている性染色体が異なっていても、細胞は概ね同じである”と考えられてきており、生殖器・副生殖器以外の細胞の性差についての理解は進んでいない。

本研究では雌雄マウスのゲノム全域に渡るDNAメチル化解析を行う。雌雄で異なったエピジェネティクス状況にある遺伝子領域の情報を得ることで、『エピゲノムアトラス』の作成が可能である。ゲノム全域のT-DMRs DNAメチル化プロフィールを解析し、雌雄で異なる、あるいは、共通したエピジェネティクス制御を受ける遺伝子(群)の存在を示し、雌雄差を生むエピゲノムを明らかにする。

>研究の概要(PDF)


平成21年度〜25年度
NEDO
iPS細胞等幹細胞産業応用促進基盤技術開発

細胞質交換法を基盤とした新規iPS細胞作成法とその細胞標準化システムの研究開発

iPS細胞の作成技術としては、細胞融合法、核移植法、最近では山中らの確立した誘導法が使用されている。ヒト卵子を扱うという倫理上の問題と安定な卵子の供給の困難さの問題を一度にクリアーした誘導法は画期的な創成技術である。iPS誘導因子発現をレトロウイルスベクターに依存していること、細胞の形質転換に伴う癌化細胞の混在やiPS細胞化の基本メカニズムが解明されていないこと、形質転換効率の低さによる十分なiPS細胞数取得の困難さ、そして、その安全性と有用性の指標となる細胞評価法が無いことなどは、再生医療や遺伝子治療への応用を考える上では実質的な問題となっている。

本研究計画では、iPS誘導因子(特に、タンパク質及び低分子化合物)のスクリーニングとその作用機序を解析しながら、スクリーニングで得られた因子をもとにタンパク質誘導によるインテグレーションの無いゲノムを持ったiPS細胞の作成を目指す。我々が開発したD-REAM法を中心としたエピゲノム解析法を駆使し、得られたiPS細胞のエピゲノムプロファイルを指標とした、効率的でシステマティックな細胞評価系を構築し、上に挙げた現在のiPS細胞作成時の諸問題を改善し、品質が標準化されたiPS細胞の作成を目的とする。


平成21年度〜23年度
文部科学省基盤研究A

ES細胞から栄養膜幹細胞へのエピジェネティック制御

ほ乳類胚発生における最初の細胞分化により、内部細胞塊(ICM、inner cell mass)とそれを取り囲む栄養外胚葉(TE、trophectoderm)との、分化運命の互いに異なる2種類の細胞集団が出現し、胚盤胞が形成される。胚盤胞の子宮壁への着床後、ICMから胎仔の体を構成する三胚葉全ての細胞が作り出される一方、TEから派生する栄養膜細胞(TC、trophoblast cell)は胎盤を構築し、胎仔の子宮内における生存と発育を保証する。正常な胚発生では、ICMの細胞がTE細胞系譜に、逆に、TEの細胞がICM細胞系譜に分布することはない。そこには、転写因子による遺伝子発現制御に加え、DNAメチル化やヒストン修飾からなるエピゲノム情報による「細胞記憶」の関与が予測される。

本研究では、新しく確立された分化誘導系を用いてマウスES細胞からのTC分化を誘導し、その過程におけるDNAメチル化状態の変化をゲノムワイドに解析する。また、ES細胞に由来するTS細胞(eTS細胞)の樹立も試み、得られたeTS細胞と既存のTS細胞とのDNAメチル化プロフィールの比較を行う。これらのDNAメチル化プロフィール情報を基に、マウス胚盤胞形成時におけるICM/TEの分化運命決定とその可塑性に対する新たな知見を得ることが目的である。


平成20年度〜24年度
文部科学省特定領域研究
生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク

マウス初期胚発生におけるエピゲノム形成と細胞分化

マウス胚の細胞は、胚盤胞形成時の最初の細胞分化により、内部細胞塊(ICM)と栄養芽層(TE)とに二分さる。マウス胚盤胞から樹立された2種類の幹細胞株であるES細胞およびTS細胞は、それぞれICMとTEの性質をよく反映し、キメラ胚において、ES細胞がTE由来の胎盤に寄与することはほとんど無く、逆に、TS細胞がICMに由来する胚体に寄与することもない。こうした分化能の制限には、転写因子による制御に加え、ゲノムDNAメチル化プロフィールを含むエピジェネティック情報(エピゲノム情報)の関与が期待される。

本研究計画では、ES、TS細胞間でDNAメチル化状態が異なる領域を複数同定してきた我々の知見を元に、胚盤胞期に加え、生殖細胞(精子、卵子)および受精後のマウス初期発生過程におけるこれら複数の領域のメチル化状態の変化を解析する。数種のマーカー遺伝子・タンパク質の発現を中心に論じられているマウス初期胚における細胞分化をエピゲノム情報の観点から見直すことで、初期胚における細胞の可塑性とエピゲノム情報との関係を明らかにすることを目的とする。


過去のプロジェクト


平成16年度〜20年度
生研機構

動物ゲノム情報の多面展開を目指したDNAメチル化プロフィール解析

以下の事項が発見された。
  • 幹細胞マスター転写因子Nanogがエピジェネティクス制御下にある
  • ヒストン修飾がDNAメチル化プロフィールに影響を与える
  • 数種類存在するDNAメチル基転位酵素は、遺伝子領域と非遺伝子領域で親和性が異なりDNAメチルプロフィール形成に関与する
  • DNAメチル転位酵素自身がDNAメチル化で制御されている
  • リンカーヒストンサブタイプがDNAメチル化とヒストン修飾によるエピジェネティクス制御下にある
  • アンチセンス非コードRNAが、相補的配列を有する領域のDNAメチル化に関わっている
  • 高精度・迅速なゲノム全域のDNAメチル化解析法D-REAMを確立した
  • 転写因子ネットワークがエピジェネティクス制御下にあり細胞・組織を規定している
  • 核移植胚から胎盤の栄養膜細胞の基になる幹細胞(栄養膜幹細胞)の樹立に成功、DNAメチル化プロフィール解析で細胞を評価できる

マウス全体の各組織、各種幹細胞、分化細胞のDNAメチル化プロフィール・データベースを作成し公開した。

  • D-REAM (データ蓄積中)

													


平成11年度〜15年度
生研機構

DNAメチル化情報の解析による動物ゲノムの高度利用

以下の事項が発見された。

  • 極端にCG配列の少ない遺伝子がDNAメチル化領域を有しておりエピジェネティクス制御下にある
  • 正常細胞でもCpG配列が豊富な、いわゆるCpGアイランドを有する遺伝子がメチル化制御下にある遺伝子が多数存在する
  • ゲノム上に細胞組織に依存したDNAメチル化領域(T-DMR)が多数存在し、メチル化・非メチル化模様(DNAメチル化プロフィール)は細胞の種類に特異的である
  • DNAメチル化プロフィールの変化が細胞分化と発生の基礎にある
  • クローンの発生異常はエピジェネティクス異常による
  • 細胞凍結に利用されている身近な化合物がDNAメチル化を変えうる
  • 性分化のマスター転写因子SryがDNAメチル化によるエピジェネティクス制御下にある
  • 胚性幹細胞のマスター遺伝子Oct4がエピジェネティクス制御下にある
  • 核移植胚から胚性幹細胞の樹立に成功し、DNAメチル化プロフィール解析で細胞を評価できる


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