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<2.イヌの気質に関する行動遺伝学的研究>

 私たちヒトはもとより動物にもさまざまな個性が見られます。イヌやネコ、ウマなどを例にとっても興奮しやすい個体、攻撃的な個体、温順な個体、不安傾向の強い個体など同種あるいは同じ品種においてもその性質は決して一様ではありません。こうした行動特性の情動的基盤は気質と呼ばれますが、気質およびその個体差の生物学的背景の理解は、脳神経科学の基礎的研究発展に貢献するだけでなく、ヒトと動物の適正な共存関係を模索していく上でも意義が大きいため、獣医学領域および応用動物科学領域における重要課題のひとつといえるでしょう。獣医動物行動学研究室では、犬を研究モデルとして、気質の遺伝的背景を解き明かすことを目標に研究を行っています。
 個性は遺伝によって決まるのか初期環境がより重要なのかは今なお不明であり、「三つ子の魂百まで」や「栴檀は双葉より芳し」といった慣用句上の対立的概念に代表されるように、古くから多くの論議を呼んできました。初期環境の影響については発達臨床心理学的研究が大きな成果をあげていますが、遺伝的背景については最近になって人間における気質関連遺伝子の存在が指摘され注目を集めてきました。しかし人間は個人をとりまく内的・外的環境要因があまりに複雑であるため、ヒトを対象とした研究では遺伝的要因についての明快な解釈は困難になります。視床下部・大脳辺縁系を中枢とする情動反応系は高等哺乳類の間でよく保存されていることから、個性の背景となる気質の本体を解明するためには動物を用いた研究モデルの作出が望ましいと考えられます。
 イヌは品種による行動特性の明瞭な違いが科学的見地から証明された唯一の動物種であり、行動学的見地からは複雑すぎる人間と逆に単純すぎる実験用齧歯類のいわば中間にあって、しかも遺伝的均一性の高い純血種が多数そろっていることから、こうした研究には好個のモデルと考えられます。獣医動物行動学研究室ではカリフォルニア州盲導犬協会やオーストラリア税関探知犬繁殖施設の協力を得られたことより、遺伝的背景と初期環境の斉一性が保証された研究環境を整えることが可能となりました。また、現在は日本盲導犬協会の協力も得て、実際に行動実験や気質評価アンケートを実施しながら研究を進めております。
 本研究の成果は、多大な人的・経費的投資を要する盲導犬育成の成功率の改善にも大きく役立つことが期待され、また、気質に関連する遺伝子群が同定されることとなれば、近年飼育数が増加しつつあるイヌに対して、気質に合わせた飼育環境を提供することも可能となるでしょう。

シバイヌに関する研究はこちらから

参考資料(PDF)


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