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卵巣は、卵子を生産し、さらに女性ホルモンの生産などを行う、動物のメスの生殖システムの中核を担う重要な臓器です。当研究室では、マウスとブタをモデルとして、哺乳類卵巣の発達や機能制御メカニズムを、遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの視点、初代培養細胞や細胞株を用いた細胞レベルの視点、さらにそれらをつなぐ卵巣組織の器官培養系を用いた組織レベルの視点から研究をしています。

卵子-顆粒膜細胞複合体(マウス)
卵-顆粒膜細胞間の双方向コミュニケーション
 動物の卵子は卵巣の「卵胞」と呼ばれる袋の中で発達します。
 この「卵胞」が発達する過程で、卵子とその周囲の体細胞「顆粒膜細胞」は密接に助け合いながら発達していきます。この「卵-顆粒膜細胞間の双方向コミュニケーション」は、卵胞が正常に発達して、機能的な卵子を生産するために不可欠なメカニズムです。
 当研究室では、この双方向コミュニケーションの観点から、卵巣の発達メカニズムを研究し、また、その破綻に起因する卵巣異常(疾患)の解明などを行っています。
 
新しい細胞間コミュニケーション:分泌小胞エクソソーム
 エクソソームとは、細胞が分泌する小胞です。このエクソソームは、多くの核酸やタンパク質を内包しながら細胞間を移動する、新たな細胞間コミュニケーションツールとして注目されています。
 我々はこれまでに、ブタの卵胞内にエクソソームが存在することを見出し、現在その機能解析とエクソソーム欠損に起因する卵巣異常の解明をブタとマウスをモデルとして行っています。

エクソソーム(緑)を取り込んだ顆粒膜細胞
J. Reprod. Dev. 2017; 63: 51-58.より改変)
 

体外で発達させたマウス卵胞組織
個体の加齢に伴ったメス繁殖能力低下メカニズムの解明
 動物のメスの繁殖能力が個体の加齢に伴って低下することは広く知られています。しかし意外なことに、そのメカニズムの詳細は未だ解明されていません。
 現在、動物の生殖システム全体の老化がどのように制御されているのか、またその制御により老齢個体の繁殖能力回復が可能かどうかの研究を行っています。
 
卵巣の「雌性」の維持メカニズムの解明
 卵巣や精巣を構成する細胞は「性」を持っており、最近の研究から、これらの細胞の「性」は、積極的なメカニズムで維持されていることが明らかとなりつつあります。
 当研究室では、特に卵巣の「雌性」がどのように確立・維持されているのかを、マウスの初代培養細胞モデルで追究しています。

遺伝子改変マウス